谷 好通コラム

2011年12月08日(木曜日)

2931.すべてを果たし終えた一匹のサケ

札幌でのスーパー達成会は、
スタッフの高いモチベーションとともにあっという間の1時間を終えた。
私はこの手の店がものすごく苦手であったが、
一生懸命に話しをしてくれている人と、
若い子達のすごく楽しそうな表情を見ていると幸せな気持ちになって、
これはこれでいいなぁとしみじみと思ったのでした。
しかし、これからのスーパー達成会は
賀来常務と鈴置常務に任せたほうがいいとも思ったのは、
自分の子供と孫の間くらいの歳の女性に、
自分の中の男の心がうずくのが、やっぱり照れるからなのだろう。

 

今日は札幌市内で大切な仕事をして、千歳空港に向かったのは午後1時。
中部空港行きの飛行機は午後3時10分発。
いつも時間が余ったら行くサーモンパークの「サケのふるさと館」に、
送ってくれた結城所長を誘って、寄った。

 

空港に2kmあまりのこの施設には、
千歳川の中をガラス窓越しに見られる場所があって、
初めて北海道に通い始めた頃から、つまりかなり昔から大好きな場所であった。

 

 

千歳川の中は、春夏秋冬によって
集まっている生き物の種類と様子がまるで変わり、
何十回見ても、全く飽きない。

 

今回はまた
感動的なものを見てしまった。
サケの遡上の大群の時期にはちょっと遅れてしまったが、
産卵を終えたメスのサケが、
一匹だけ、
水中の窓、つまり川の流れのよどみに、
ゆっくりと口を開け、尾びれをユラーっとくねらせながら、静かにたたずんでいた。

 

この千歳川に生まれ、
外洋に出て行って、仲間たちと太平洋を何周回ったのか、
何年かかったのか、すっかり大人に成長して、
子孫を残すべく故郷の千歳川に戻ってきた。

 

千歳川の河口で、塩水から真水に変わるはざまで激しく皮膚を痛めながら、
真水の域に入るほどに全身やけどのごとき苦しみを、
本能の導きによって忘れ、
ボロボロになりながら産卵し、受精を受け、
壮絶に自らの命のすべてを果たし終えて、静かに死を待つ姿だ。
無表情に、ほとんど見えなくなっているだろう目で、
窓の外の私の姿をわずかに感じ、鈍く逃げようとするが、
窓から離れれば千歳川の早い流れがあって、すぐに戻ってくる。
その無表情な目には、
すべてを果たし終えた悟りのような空虚が映るようだ。

 

私もこんな死の迎え方が出来たら、どんなに幸せだろうか。
自分が果たすべき我が命の役割のすべてを果たし終えて、たどりつく空虚。

 

わずかに一匹だけ残ったメスのサケに、
「よく帰ってきたね。 卵産めてよかったね。 もう死ぬんだね。 よかったね。」
そう話しかけたら、
「・・・・・・・」と返事をされたような気がした。

 

きっと彼女の気持ちは、
10,000m上空で感じる宇宙の蒼さのように澄んでいるのだろう。

 

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    代表取締役会長兼CEO

    谷 好通

    キーパーのルーツであり、父であり 男であり、少年でもある谷好通の大作、名作、迷作コラム。
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