とてもニコニコして感じよくハキハキ返事をする好青年です。
しかし、
「転勤はしません。
今の住んでいる所が奥さんの実家に近いのでそこに住んでいてあげたいから。」
「土日は休みます。奥さんの休みが土日なので一緒にいてあげたいから。」
すべてをニコニコ、ハキハキ。しかも堂々とおっしゃる。
私は異次元の空間にいたような気がしました。

でも今はこういう人が多いのだそうです。
奥さんのため=すべて善なること=男として誇るべきこと
この図式がどういう意味を持っているのか、正直言って私には分かりません。
男が家庭、とりわけ奥さんにすべての価値観を持つことが、
どういう発想と意味であるのか、私が古いのかもしれませんが、理解が出来ないのです。

もうかなり昔のことですが、
ある会社に評判のいい営業マンがいて、
その会社が彼に全国に出張する役職を与えたら、
しばらくの間は嬉々として北は北海道、
南は九州まで日本国中を飛び回って活躍していたのですが、
ある時から、
北海道に行っても、四国に行っても、関東に行っても、
必ず、日帰りをするようになったそうです。

朝、飛行機や新幹線で出て行って、夜にはもう帰ってきているのです。
こんなことをしていれば、出張経費、特に交通費はバカみたいにかかりますし、
出張先に滞在する時間も極端に短くなって、まともな仕事なんかとても出来ません。
だから、見かねた上司に
「たとえば北海道に行けば航空運賃はバカ高いし、
向こうには何軒かの行き先があるのだから、
何泊かしてじっくりと仕事をしてくるように」と強く言われました。

そうしたら、しばらくして、
その人の奥さんが会社に押しかけてきたのだそうです。
たまたまいた役員さんに、
「うちの人は、家庭でくつろぐのが一番の幸せな時間なのです。
だから遠くに出張に行っても、一生懸命、家に帰ってくるのに、
宿泊して仕事をして来いと命令されたと言っています。
こんなひどい会社には、うちの人を働かせるわけには行きません。辞めさせますっ!」
そして、
その彼はその後、
一度も会社に顔を出さずに辞めてしまいました。
奥さんに「行かなくていい。」と言われたのでしょうか。

しかし彼は、
仲間たちの飲むとすごくはしゃぐほうで、明るい男だったそうです。
しかし、遠い所への出張中に現地のスタッフと、
猥褻な店が入っているビルに一緒に入っている居酒屋で飲んでいた時に
奥さんから持たされていたGPS付き携帯で場所を調べられ、
猥褻な店の方にいると誤解されて、
奥さんからこっぴどく叱られていたことがあったそうです。
その事件から、彼はぴたりと外泊をやめたのです。
そしてそれから究極の日帰り⇒会社からの叱責⇒奥さんの怒鳴り込み

昔のなんとも難解なこの事件を
今日、久しぶりに思い出しました。