2019年11月22日(金曜日)
11.22.もうただ古いだけなのか。そんなことは無い。
私は今年の2月12日に社長職を辞して会長職に成った時、
もちろんCEOとして会社の経営最高責任者の任を持ちつつ
私の実務的な仕事を
「企画」と「製品開発」に絞って持つことで、
非常にうまく行っている事と、そうでもないことがある。
仕事の量は間違いなく減った。
出張もほとんどしなくなって、
いつも大府にいる。
それは自分の体力と特に足の都合にとって、
それが必要だったのだから、そうなって良いのだが、
足の都合に限って言えば、
足が変形してきて歩くことが難しくなってきたので、
思い切って車イスを軸とした生活に割り切っても、
精神的には思ったより大丈夫だったが、筋肉が余計に弱くなって、
足の事情はむしろ悪い方向になって、どうしようかと悩む。
車イスではなくて、松葉杖の方がいいのかもしれない。
一度、試してみようと思う。
企画と製品開発の仕事は遥かにはかどるようになった。
これは間違いない。
私の部屋を、デザイナーと開発スタッフがいるスタジオに持って行ったのも、
ステレオをガンガン鳴らしながら仕事をしていると、私はご機嫌だし、
誰も文句を言わないし、効率も上がるようになった。
しかし、アイデアの質がどうかというと、
それほど変わらないような気もするし、
今までの枠を抜けられたような気もするし、それは人の評価を待つしかない。
しかし少なくとも製品開発については、
新しい有能なスタッフを迎えている事もあって、
相当に質が上がった製品開発が出来るようになっているのか、
まだ、質が上がる可能性が出てきた程度の段階なのか、よく判らないが、
いずれにしてもいい方向にある事は間違いなさそうだ。
しかし、気になる点があるとするならば、
昔は製品開発と言えば、
責任者と私もこちらから工場に行って、
工場の人と一緒に一つ一つの製品を造り上げて行った記憶があるが、
今は、商社の人がわたし達の事務所に来て、
営業マンがこちらの担当者に製品を売り込んでいく場面を見るようになった。
製品開発そのものは、
相変わらず地味な実際の作業の繰り返しで成されているが、
開発された製品も現場で鍛えられたもので、もちろん変わっていないが、
今までは無かった、商社の営業マンがニコニコと愛想よく、
こちらの担当者にご機嫌をとりながら、
自社の製品を売り込む姿も見るようになった。
こちらの担当者もニコニコして、注文を付けている風景は、
昔には無かった光景である。
それでより良いものが手に入って、
より良い物を提供できればそれはそれで良いのだが。
昔は、この会社も小さくて、
社会的な信用がある訳ではなく、
どの工場にも「お願いして造っていただく」というスタンスであったが、
いつの間にか会社も大きく成長して、株式も上場して信用も上がって、
今ではこちらの担当者が「お願いされる側」に立っている。
こちらの担当者はそれが当然のようになっている。
何かが大きく変わっているような気がした。
どこかで初心を取り戻すことが必要になっているのか。
あるいは、この方が、優秀な人が入ってきたりしていい事なのか。
売り込まれるのが苦手な私は、居心地が悪い時がある。
しかしもっと怖いのは要らぬ自信だろう。
無用な自信は、いいものを造りだせない
解かってしまう愚かさがはびこるのは開発にとっと害毒でしかない。
それは間違いない。
どこかで大きな失敗が来る。
昔、昔、上海のタオル工場で、
自分自身が汗まみれになって、真剣に交渉して、
怒こったり、ホメたり、感謝したり、ホテルでこそっと泣いたり、
何回も工場に足を運んで”快洗Taoる”を造ったあの時代は、
もう誰も望みはしないのか。
もうただ古いだけなのか。
しかし、
私は今、開発の最高責任者になったのだから、
とりあえず、初心に戻って、絶対にいい製品を造り出そうと思う。
覚悟した。