谷 好通コラム

2011年03月24日(木曜日)

2749. あれも要らない。これも要らない。

今、広島に向かっている。仕事だ。
今回の災害で、予定のほとんどがすっ飛んだが、
西日本は影響を受けていないので、ありがたいことに予定がキャンセルになっていない。

 

しかし、ある自動車メーカーに近い人のおっしゃるには、
自動車製造工場が東北や関東の地域に無くても、
NAVIの部品であったり、エコカーの電池であったり、
何らかの部分の製造拠点が東北にあるとそれが止まって、
一台の車にならないので、自動車の製造に深刻な障害になっていると言う。

 

それは自動車だけでなく、あらゆる物に言えることで、
東日本大地震で日本経済の13%が失われると何かに書いてあったが、
実際には、もっと大きな影響が出るのだろうと想像する。
最少で見積もって13%としても、
現存する会社で、現在の売り上げが13%ダウンし、
つまり付加価値も13%ダウンして、
しかも経費を下げずに黒字を計上できる会社がどれほどあるだろうか。
ただでさえリーマンショック後の日本経済は低迷しているのに、
日本国中一斉に付加価値が13%ダウンしたら、これはかなり大変だ。
経費で最も大きな要素が人件費であることはどんな会社でも共通である。

 

おりしも4月の新入社員の入社を控えて、
内定取り消しの動きが大きくなることは目に見えている。
ここまで直前になって内定取り消しは、
雇用に対して社会的な責任を持つ会社にとっては犯罪行為に近いが、
今いる社員の生活を守るためは、社会的非難に目をつぶってやる会社もあるだろう。

 

「寄らば大樹の陰」はもう通用しない。
「大船に乗った」つもりで大会社にいる人も多いが、
その大船も底に穴が開けば、いずれは沈む。
穴から入ってくる水が船を沈めるまでの時間が小船よりちょっと長くかかるだけ。

 

阪神大震災のあとには、
何ヶ月か後に公共事業を軸とした復興需要があって、
特に建設業界が潤ったという話を聞いたが、
あの時とは日本の経済状態が全く違う。

 

日本に金が無くなっているのだ。
つまり国民全部が預けている貯金で買っている国債は、国の借金そのものであり、
国の財政赤字は国民一人一人の借金に他ならず、
その借金は国民一人一人の貯金で間接的に国債を買う形で賄っているだけ。
その借金がついに国民の貯金の総額に近づいている。
つまり本当にもうお金が無いのだ。

 

これは、本当に国民全体が自覚せねばならないことで、
国民が銀行や郵便局に預けているお金は、もう国債に変わっていて、
みんなが持っている貯金は自分のお金ではなく、
国債を持っていることと何も変わらない。
大災害を受け、国の信用が落ちて、国債が暴落する可能性はゼロではない。
世界中のお金のかなりの部分を持っている一部の投資家たちは、
利ざやを生むためには一切の感情を捨て、あらゆる相場を無情に操作するからだ。

 

国債が暴落すればハイパーインフレが自動的に始まる。
たとえば100万円額面の5年ものの国債が60万円に暴落すれば、
60万円が5年後に100万円になるということなので、
それはつまり、大雑把に100/60-1≒66.6%、
つまり年利換算約13.3%の超高金利になる。
銀行の貸出金利が上がれば資金調達が高コストになるので、
その分ストレートに物価に反映し、
金利に見合った年間物価上昇率13.3%くらいの超インフレになると言うことだ。

 

国債が暴落するならば、
貯金を現金化すればいいと単純に思われて、
銀行に個人預金の引き出しが集中する、いわゆる取り付け騒ぎが起こりやすくなるが、
損をしないでおこうと思うなら、実際は正反対で、
預金を現金にしてしまうと物価の上昇にまともに巻き込まれ
現金の価値が年13.3%ずつ下がっていくことになる。
しかし、貸出金利が上がれば、預金金利も上がるので銀行に預けておけば、
そのリスクが大幅に減る。
しかし、国債暴落が始まると心理的に不安になって、
みんなが預金を引き出したくなる取り付け騒ぎが起きても、
それに耐えうるだけの銀行かどうかが問題だ。

 

こんな破局的な経済になったら、
つまり、未曾有の大災害に見舞われた何十万人。何百万人の復興までが、
大混乱になってしまう。それによって復興が遅れることは必須だ。
日本の経済破綻は絶対に防がなければならない。

 

復興には何十兆円もの莫大な費用が必要なのだから、
その予算を作り出すために、不急の予算をばっさりと切り捨てるべきだと思う。
子供手当ては要らない。高速道路無料化も要らない。
文化施設のような不急の公共施設も要らない。
これ以上の道路も要らない。
大災害の結果、明日をも知れぬ悲惨を背負っている人たちを救うためなら、
あれも要らない。これも要らない。

 

国民のご機嫌取りを実行し、
無理して国家財政を破綻させたら、
国民すべての財産を一瞬にして収縮させてしまうのだから、
国民のご機嫌取りなんてあっちに置いておいて、
日本国中の隅々にまではびこっている利権も、全部捨てて、
今すぐにも必要な大災害を受けた地域の救援と復興に当てるべきだと思う。

 

あれも要らない。これも要らない。
要らないものだらけの国家予算を一度全部捨てるだけの覚悟が無いと、
健全な国家財政のまま、つまり国民の財産を守ったまま、
困っている人たちを助けられないのではないだろうか。

 

公共事業がなくなれば、多くの建設土木の人が困るだろうが、
公共事業は被災地の東北に集中するのだから、
みんなで東北に行こう。
日本国中の公共事業をほっぽらかしといて、みんなで東北に行こう。

 

被災地の復興以上に優先順位の高い公共事業なんて絶対ないから、
みんなで東北に行って、バリバリ仕事をして、
内需を東北発で活発にして、日本を生き返らせたらいいなと思う。

 

家族を失い、家を失い、仕事を失っている人に優先するような
公共事業なんてあるわけが無い。
道路がある訳が無い。補助金がある訳が無い。
家族を失い、家を失い、仕事を失っている人から、
子供手当てとして10,000円分の予算を奪い、欲しい人はいないだろう。

 

あれも要らない。これも要らない。
家族がいて、住む家があって、仕事がある人は、それだけで十分に幸せなのだから、
家族を失い、家を失い、仕事を失っている人を差し置いて、
国からもらうべき物なんて、金なんて、もらう便利さなんて、ある訳が無い。

 

今の幸せ以上に、
困って苦しんでいる人を差し置いてもらうべきものがある訳が無い。

 

あれも要らない。これも要らない。

 

暴論かな。
でも東北に持っていくべき「水」を、
途中で自分がちょっとのどが渇いたからといって、飲んでしまう人はいないはずだ。

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    代表取締役会長兼CEO

    谷 好通

    キーパーのルーツであり、父であり 男であり、少年でもある谷好通の大作、名作、迷作コラム。
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