谷 好通コラム

2011年03月07日(月曜日)

2735.プロにしか解らない仕事こそアマチュア仕事

金土日の三日間かけた撮影が、昨日の夜終わった。
一つ一つのシーンをたっぷりと時間をかけながら
コツコツと辛抱強くこなしていって、
私は途中でいなくなったが、
一日目は深夜までかかり、二日目も深夜1時までかかったそうだ。
本当に最後まで行き着けるのかと不安を感じながらも、
スタッフの誰一人も焦ったりはしていなかった。
少なくとも、撮影を依頼した照明と撮影のプロフェッショナルたちは、
焦るそぶりなどまったく見せず、淡々と一つ一つにものすごい手間をかける。

 

すごいなと思いながらも、
こちらがくたびれてくると、
そこまでしなくてもいいのにと思ったりして、
せっかく妥協なく仕事をしてくれているのに、
つい憎まれ口を頭の中に思い浮かべたりする。
しかし撮影について素人である私達がそんな風に思ったりするのは、
彼らプロたちには織り込み済みであるようで、
テレパシーで感じているだろう私達の憎まれ口を無視して仕事は進められる。
さすが、プロがプロであるが故なのだろう。

 

最後の三日目は、夜9時で終わった。

 

最後のシーンを撮っている時は、
それが淡々と進められた撮影の一シーンであって、
最後のシーンを撮っているという緊張感はまったくなかった。

 

終わりというものはいつも唐突にやってくるものだ。
最後のシーンを撮り終わって「次はなかったっけ? これで最後? いいのかな?」
最後のシーンにOKを出して、それが最後であることに不意に気が付く。

 

人の死ぬ時も不意にやってくることを思い出した。
親父がなくなった時も、
ふと親父が息をしなくなって、
不意に、親父の75年の一生が終わったことに気が付いた。
その境目は「ボレロ」みたいにドラマティックなクライマックスのようには来ない。
「あれっ? これで終わり?」って感じでやってくる。

 

三日間の撮影に親父が亡くなった時のことを引き合いに出すことはないが、
私が感じた唐突な終わり方に、ふとそんなことを思い出した。

 

今回の撮影は、良かった。
欲しかったものが、ほぼそのまま実現できた。
今回の撮影、照明のプロの皆さんは、
自らのプロの誇りを
「クライアントの欲しいものをキチンと実現する。」の一点に集中して表現した。

 

私の尊敬する経営者の言葉に
「アマチュアは、自分の好きなことを
好きな時に好きな場所で我流でやればよい。
プロは、他人の好きなことを
他人が決めた時間や場所で決められた方法でやる。
その代わりプロには報酬があり、アマチュアにはない。」とある。

 

プロは、プロだから解ることを表現したくなるものだが、
プロだから解ることを表現するということは、
その世界のプロにしか解らないことでもある。
プロにしか解らないことを表現したとしても、
それはその世界の中以外の人には誰の役にも立たない自己満足でしかないだろう。
自己満足とは、その人個人のためのことであって、実は誰の役にも立たず、
プロにしか解らないことを表現したい人こそ、実はアマチュアそのものだと思う。

 

プロとは、素人に解ってもらえる仕事を、
素人には実現できないようなクォリティで、
広く一般の素人の感動させる仕事を実現する。
だから、報酬をいただけるのだ。

 

そういう意味において、今回の撮影のプロたちは、
私達が欲しいもの、
欲しい表現を、
プロの技術で実現しようと、
一生懸命、私達の話を聞いて、
理解した上で、プロの仕事を実現してくれた。

 

だから、満足している。

 

私達もプロだ。
だから、プロにしか解らないような仕事をしても意味がないことを知っている。

 

私の一生が、唐突に終わるまでに、
プロとしてやりたいことがいっぱい残っているから、生きていることが楽しい。

 

朝、名古屋から新幹線で東京に向かう新幹線の中で。
新横浜駅周辺では雪が降っていた。
まだ冬だ。

 

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    代表取締役会長兼CEO

    谷 好通

    キーパーのルーツであり、父であり 男であり、少年でもある谷好通の大作、名作、迷作コラム。
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