谷 好通コラム

2010年12月23日(木曜日)

2685.四つの一番:その3「ボーナス一番」「財務体質一番」

この会社の実績を大きく上げたのは、
一人一人のスタッフ全員だ。

 

人にトコトン投資する。
多数のスタッフが自動車整備士資格、コーティング技術資格など技術力を取得し、
もともと優れた人間力を持った人たちに、
よりコミュニケーション能力を学習することで接客力を高める。
店舗はきわめてよく掃除が行き届いていて、すごい。
看板やPOP、メニューなどお客様に対するアピールもスマートで充実している。

 

特大の車検工場を造り、
洗車コーティングなどの機器、設備も必要条件で揃える。
その上で、着実に経験を積んで、それぞれが自信を蓄える。

 

これで受け入れ体制万全になったところで、
打った手段がテレビコマーシャル。

 

5つのバージョンがあり、
どのバージョンにもいっぱいスタッフが出ていて、
みんな本当にいい顔して出演している。

 

テレビコマーシャルをあえて選択したのには納得の理由があった。

 

この会社のある県は人口140万人強の小さな県であり、
その中で三十数店舗のナンバーワンのドミナントを形成している。

 

この三十数店舗の店舗が「新聞折込チラシ」などで宣伝広告をするとなると、
1店舗あたり3万枚のチラシで最低15万円から20万円かかる。
とすると1回の折り込みチラシで、500万円から700万円は必要となる。
しかも一回の折込チラシでは効果は知れているので、
何回も投下することになるだろう。
下手をすれば億の単位の投資が必要だろう。これは膨大な費用だ。

 

私達は2年前に、
東海三県に対してテレビコマーシャルを実験的に行ったことがある。
(人口: 計約1,110万人。三重県約180万人、愛知県約720万人、岐阜県210万人)
CM投下量は1000GRP(視聴率約1000%分)で、
商品名などの認知が確実に上がる最低限のCM投下量だ。
今だから言えるが、その時かかったCM放映料が約1,800万円。
あれから2年、
リーマンショックがあって今ではCM放映料も想像以上に下がっている。
しかも、人口1,100万人対象と人口140万人強対象のCM放映料ではかなり差がある。
そんなことで計算すると、
少なくとも1,000GRP分のテレビ放映料が、
三十数店舗3万枚ずつの新聞折込チラシの費用と比べて
かなり低いことは容易に想像できる。

 

しかも、
テレビは一般家庭と社会にもっとも信用されているメディアであり、
桁違いの信用を伴った宣伝広告の効果がある。
これは大きい。

 

しかも、
コマーシャルに出演しているのは、
この会社自慢の各店舗の所長さん達。
狭い地域でのテレビのCM出演は、何度も放映されるので、
親戚、友人、知人、そしてなんといっても圧倒的に多くの店舗のお客様が、
「おっ、あんたテレビ出てたね、」と声をかけてくれる。
スタッフの皆さんのモチベーションは上がりっぱなしだ。
そんなスタッフさん達の言葉の信用も上がっている。

 

店舗と、技術つまり品質と、人を宣伝するこのCMは、
あらゆる点において、
人口が少ない県にナンバーワンのドミナントを形成している会社の利点を、
100%活かした最高のマーケティング戦略であろう。

 

しかし、
肝心なことは、
一般に広く信用を伴う宣伝広告を展開する場合、
もっとも大切なことは「万全の受け入れ体制」かあることである。

 

どんなに効果的な広告を展開しても、
その広告を見て来店されたお客様に、
いい加減な接客と、低い品質の商品、サービスしか提供できなければ、
お客様の期待が大きければ大きい分だけ逆効果となる。
「何だ、全然たいしたことないじゃないか、もう行くのはやめだ。」
こんな言葉をお客様に言わせたのでは、
取り返しの付かない再起不能の大失敗になる。

 

「人口が少ない県にナンバーワンのドミナントを形成している会社の利点を、
100%効果的に活かした最高の戦略」は、
「たしかな技術に裏付けられた最高の商品品質を、常時、造り得る体制」と、
「お客様の期待に応えられる大歓迎の接客力。」
「お客様の好感に応えられる清潔な店舗環境。」
これが構築できなければ絶対にやってはいけない。

 

お客様はCMで最初から好感と期待を持って来店されるのだから、
「この店はいいなぁ、感じいいなぁ、勧められた商品(サービス)も大満足だ。」
こう言ってもらえれば最高だが、
期待を裏切ると、完全に逆効果になりかねない「両刃の刃」の戦略なのだ。
よほどの自信がなければやれない「特効薬」的なマーケティング戦略なのだろう。

 

結果は大成功である。
どの店舗も活性化され、
たくさんのお客様に喜ばれて支持され、素晴らしい実績を上げている。

 

さらに、これが社員全員に公平に反映されているところがすごい。
私はボーナスの計算根拠になる表を見せてもらった。
つまり、この会社のボーナスの計算根拠はすべて公開されていて、
誰でも自分のボーナスを計算できるのだ。
基礎になる金額が何種類かあって、
それに加えて、色々な販売実績による社内順位に従って報償が決まっている。
もちろんプラスもあればマイナスもあるが、
誰でも自分のボーナスが、
どういう理由で、どんな金額になるのか、知っているのだ。
公平とはチャンスが公平であることであり、
やればやっただけ、その結果を公平に評価されて還元されることを知っている。
だから、みんな全力でがんばれる。

 

だから「ボーナスが日本一」と公言できる。
その金額も本当に日本一だろうなと思った。

 

結果的に、会社としての利益がしっかりと計上され、
無借金の最高の財務体質「財務体質が日本一」を創り上げた。

 

 

整理すると。

 

人にトコトン投資して、
たしかな技術と必要な設備による高い商品品質と、
お客様を大歓迎できる接客力と知識を身に付けて、「日本一の接客」を作り出し、
万全な受け入れ体制を構築した上で、
「人」と「商品品質」を
テレビコマーシャルという社会的に信頼されているメディアを通じて
効果的に社会に紹介する。

 

人口が少ない県にナンバーワンのドミナントを形成している会社の利点を、
100%効果的に活かした最高の戦略で、
「日本一の洗車UP率、(もちろん他の収益UPもすごい)」で、大きな実績を得た。
その上で、
すべての社員が公平に持っているチャンスを、公開された計算根拠表で、
「日本一のボーナス」で評価し、還元する。
その結果「日本一の財務体質」を創り出し、
今後も、みんなが安心して全力を出して働ける環境を整備した。

 

その最初にあったのが、
経営者自らが、みんなと飲んで、
腹を割ったコミュニケーションを通じて、
社員一人一人の心をつかみ、自分の意思を本音としてみんなに伝えた。
意思の疎通、そこから始まった。
「交際費日本一」である。

 

破綻寸前の事業を、
短期間で、見事に収益性抜群の無借金会社に立て直した
すさまじいまでの戦略であり、ストーリーである。

 

「まず、みんなと酒を飲むことから始まった。」
これは、この経営者の方だけのお力だけではなく、
それを支える会社幹部の方たちの大きな力があってこそであり、
本当の始まりは、
まず、この経営者の方が、
腹心となるべき会社幹部の方たちとの共通意思作りに、
かなり「飲んだ」ことは間違いないのだろう。

 

私も、三日前、少しだけ一緒に飲ませていただいた。
とてもあったかい人であった。

 

 

この話を含めて、「四つの一番」三話は、
私がほんの二時間あまりでお聞きしたお話と、
店舗を拝見した感想、知っている範囲の実績に基づいていますが、
それに加えて、私の想像力がかなり入っているので、
書いた内容が事実と違っていることも多々あるかもしれません。
その点を、ご承知置きいただきたくお願いいたします。

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    代表取締役会長兼CEO

    谷 好通

    キーパーのルーツであり、父であり 男であり、少年でもある谷好通の大作、名作、迷作コラム。
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