2010年09月04日(土曜日)
2603.閉じた引き出しからワープする
特許、実用新案、意匠登録、商標権など、
それを使用するに当たっての占有的な権利が発生するものは、
(ここではそれのものを一括して特許とする)
会社を経営、発展させるのに不可欠なものといっていいだろう。
特許と実用新案などになるような技術は、独自性を持ったアイディアが元になる。
(商標権だけは少し意味が違うが)
昨日のブログに、この独自性を持ったアイディアを、
私の場合、主にお酒を飲んでいる時に得ると書いたが、
これには理由がある。
「必要は発明の母」という言葉があるが、
解決すべき問題、あるいは必要性が先にあって、
それを実現するために研究を重ねて結果を出していくのが一つの発明パターン。
先に課題があって、それを実現する製品を作り上げる。
もう一つのパターンは、素材開発会社によくあるように、
基礎化学に基づいた研究から今までにない性質の素材が造り出して、
その素材の特性を活かせるような課題を見つけて、製品を作り上げていく方向だ。
先に素材があって、その素材が解決できる課題を探し、製品化していく。
私の場合はどちらかといえば前者で、
現場から「こんなことが出来たらいいな。」「こんなことを解決できたら便利だな。」
というような課題を普段からいくつも持っていて、
何かの拍子に、それを解決する方法を突然思いつく。
もちろん少しは化学知識があるが、
化学方程式を組み立てていって何か新しいものを作り出すような類の知識ではない。
色々な材料に対して性質のイメージをアナログ的に持っていて、
ある物とある物を一緒にしてバランスを取ると、
実際にある製品が出来る事を経験的に知っている。
譜面を読めないミュージシャンみたいなもので、
譜面は読めないが、音の組み合わせに対するイメージを持っていて、
自分のメロディーを作ることは出来、それを後から楽譜を書ける人に書いてもらう。
そんなことに似ている。
だから化学の専門家にとっては、
ある物とある物は、はっきりと別のものであり、
それぞれに出来ることの領域と出来ない領域がはっきり分かれているが、
私の場合はその領域の境目がない。
理解できていないといったほうが正確か。
それでもある程度は別の「引き出し」には入っている。
そんな状態で化学の多識をアナログチックに持っている者が、
現場で得た課題を考えた時、
ふと、それぞれの別の引き出しに入っている別の知識がワープして、
化学の常識的には出来ない事や、してはいけない事を、
平気でくっつけてしまい、
その結果に出てきたことを、別の解決すべき課題として、
音楽で言えば「楽譜を書ける人」に当たる「化学の専門知識を持つ化学者」にぶつけ、
それを解決することによって、
本来の元の課題を解決することにつなげる。
デジタルではしてはいけないことを、
アナログだからこその仮想の中でやってしまい、
そこから発生する問題を、別の課題として、改めてデジタルで解決することで、
デジタルだけでは解決できないことを、解決する。
この過程の中で
「ふと、それぞれ別の引き出しに入っている別の知識がワープして、
化学の常識的には出来ない事や、してはいけない事を、
平気でくっつけてしまい、・・・」の非常識な部分が、
お酒を飲んでいる時に行われるのだ。
シラフではする訳がないこと、
つまり別の引き出しに入っている物をワープさせて一緒にしてしまうことを、
少しお酒が入っているとやれてしまうこともあるということ。
普段は閉ざされている「引き出し」が開けられ、
別々の引き出しの中身をワープさせてくっつけるのが酒の役割なのだ。
これは一人の頭の中で行われるのではなく、
楽譜を書ける人、つまり化学の専門家との議論の中で行われることが多い。
専門家もシラフでは一笑に付してしまうことでも、お酒が入っていると、
面白がって付き合ってくれるし、実際にそれが解決すれば面白いと話が盛り上がる。
こんな感じで、誰も思いつかなかった独自の技術が発明される。
これはあるケミカル製品のアイディアが作り上げられた過程の一つの例だが、
このパターンは意外と多い。
だから「私の特許はお酒を飲んだ時に思いつく。」と言ってしまうが、
ただ、酔った勢いで思いついたという訳ではない。
もちろんぜんぜん違う過程で作り上げられる場合もある。
地味なテストの繰り返しから生み出されたものもある。
そして、それがどんなパターンで出来上がったものでも、
それを特許などの申請文章にまで立ち上げるのは
並大抵のことではなく、なかなか大変なんです。