2010年08月09日(月曜日)
2573.キーパー エピソード(2)普通の人は、車を離れて見る
ガソリンスタンドが始まるまでは、
その店に来るお客様は、
雑誌広告などを見て、わざわざ来てくれた少数の「マニアックな人」だけだった。
しかし、ガソリンスタンドを始めてからは、
ガソリンを入れに「普通の人」がいっぱい来て、
そんな普通の人にも、私たちは特殊な技術とコーティングを熱心に説明して、
ずいぶんたくさんの人に買っていただいた。
そこでびっくりしたのは、
普通の人は、マニアックな人とはまったく違う反応をしたことだ。
何時間もの手間をかけて仕上げた「鏡面研磨とコーティング」は、
それこそ新車以上に表面が平らであり鏡のようなツヤになっている。
だから、仕上がったお車を引き渡す時、
マニアックな人は、
その表面に、顔を30cmくらいにまで近づけて、目を見開き、
斜めに見たり、上から見たり、横から見たり、
惚れ惚れと鏡面になった我が車を、文字通り舐めるように見て、
「おーっ、スッゲー、傷ひとつないじゃん、ビカビカじゃん・・・」と、
感動してくれるのが普通だった。
しかし、「普通の人」は、
鏡面状態に仕上がったお車を引き渡す時、
「仕上がり具合はいかがですか、・・」と、誇らしげにお見せすると、
1mくらい離れたところから、
「オー、きれいになったね。自分の車じゃないみたいだ。」
と喜んでくれるのだが、マニアックな人のように舐めるようには見ない。
「この鏡のようになった塗装の表面をご確認ください。」と誘うのだが、
マニアックな人のように顔を塗装に近づけようとはしない。
むしろ、もっと離れていって、車全体を見ようとする。
2m以上離れて、車全体を見て「なるほど鏡みたいな艶だね。いいねー。」と言う。
それこそ涙ぐましい努力で磨き上げた鏡面の塗装は、
顔を思いっきり近づけて、いろいろな角度で見て、初めてその真価が分かる。
なのに、普通の人は顔を近づけるどころか、むしろ離れて車全体を見ようとする。
最初は「素人」にはわからないだろうな。などと思ったが、
考えてみればお客様とはまさしく素人であって、プロではない。
だからお客様なのだ。
プロ、あるいは玄人はだしのマニアックな人にしか分からないような商品を、
自慢げに作っている自分たちは、自己満足の世界にはまり込んでいるのではないか。
ほんの一部の人達にしか分かっていただけない商品を、
ほんの一部の人に販売していくことが私たちの望んでいたことか。
車に乗っているほぼすべての人は「素人」「普通の人」。
その多くの人達に喜んでいただき、分かっていただける物でなければ、
私たちも、お客様も楽しくない。
だから事業も広がらないし、続かないと思った。
一部のマニアックな人達だけに理解いただいて満足しているのは、
それは趣味の世界のことであり、一般のビジネスではないと思った。
きれいになった車を離れて見る人、
つまり普通の人達のために、
いままでの技術と、知識を活かして、私たちは何が出来るか、
それがキーパーのテーマとなった。