2009年07月15日(水曜日)
2257.あぶないところだった
東海道新幹線にはわざわざN700系を避けて乗る。
喫煙車両がないからだ。
N700系にも「喫煙コーナー」はあるが、
立って吸わなくてはならないので、膝の調子が良くない今はちょっとツライ。
今朝も東京に向かって新幹線に乗ったが、
もちろん「N700系」ではなく「700系」の喫煙車両である。
しかし、過去に何度かあったが、
わざわざ喫煙車両のある列車に乗って、タバコが切れてしまった時ほど惨めなことはない。
今の新幹線はタバコをまったく売っていないので、
本人がタバコを吸いたいのに、
他人が吸ったタバコの煙を吸って煙い(けむい)思いをするだけで
よけい惨めになる。
だから新幹線に乗る時は、よほどタバコの在庫に気をつけるが、
なのに、今日は、不覚にもライターを買うのを忘れてしまったのだ。
会社から駅まで送ってもらう時、
ガスが無くなったライターを持ってきたことに気が付き、
駅の売店で買わなくてはと思ったのに、うっかり買うのを忘れてしまった。
だから、今日は、
喫煙車に座って、
タバコを持っているのに、
ライターが無くて、タバコが吸えない。
ワゴンサービスでも、タバコを売っていないのだから、ライターを売っている訳が無い。
他の乗客にライターを借りる手もあるが・・・
とりあえず、我慢する。
タバコ吸いは、火を借りる行為が実に恥ずかしい。
「タバコ吸いが、ライター持っていないなんて、アホか」って感じなのだ。
こんな時、禁煙セラピーの言う「“タバコを吸わない人”になった方がいいかな。」
と、うっかり思ってしまう瞬間だ。
あぶない、あぶない。
こんなことでくじけてしまうようでは、
これから先、タバコ吸い続けられる訳がない。
意志を強く持たなければならないところだ。あぶないところであった。
なんちゃって、こんなことはどうでもいい事。
タバコなんて吸ったって吸わなくたって「それがどうした。」という程度のこと。
しかし、
FC本部の田中次長が一年か二年前にタバコをやめて15kg太った。
それでこれはイカンとまたタバコを吸い始めて5kg痩せ、そのまま維持しているそうだ。
私は体重を第一優先で落とさなくてはならない現状なので、
こういう話を聞くと、タバコやめたら怖いなとも思う。
禁煙車両に乗って、
タバコを持っているのに、ライターが無くて
他人の煙の中で、タバコを我慢しながら、しょうもないことを書いたのでした。
・・・・・・
と、ここから東京からの帰りの新幹線。
東京での仕事はいい方向に向かったのだが、
実は、仕事外で、東京で一つの夢が叶った。
飛行機雑誌などに時折、広告が載っている「WING CLUB」という模型屋に行ったのだ。
私は小学校の頃からずっとプラモデルが好きで、
所帯を持ってからもいっぱいプラモデルを作り、
特に飛行機が好きで、出来上がったものを天井から糸でいっぱいぶら下げていた。
しかし、素人が作ったプラモデルはそれなりにしかならず、
素人なりに凝って一つ一つの部品にペイントを施しても、やはりいかにもプラモデル。
とても本物らしく見えない。迫力もない。
ところが、飛行機雑誌などに今にも飛び上がりそうな模型の完成写真が載っている。
凝った人が、何ヶ月もかかって作っているもので、
一つ一つの部品の型を作ってFRPで成型した超リアルな模型だ。
雑誌に載っているカラー写真ですら、いくら見ていても飽きない。
F8Fセイバー、P38ライトニング、P51ムスタング、F14トムキャット、
ゼロ戦、飛燕、雷電、などなど、
いい年のおっさんが、「すっげえ、欲しいなぁ~」と涎を垂らさんばかりに見とれていた。
そんな精密模型が陳列してある「WING CLUB」という店のショールームに行ったのだ。
場所は東京の南青山。
仕事の一つがキャンセルになって時間がぽっかりと空いたので、
同じく時間が空いてしまった増田君に無理を言って連れて行ってもらった。
野次馬として谷課長まで同行。
いつか行って見たいと思いながら、
結局、時間が空かず何年も行けなかった「WING CLUB」
土地が日本で最も高い場所の一つである青山なので当たり前ではあるが、
店は想像していたよりもうんと小さかった。
それでも、展示は充実している。
ワクワク、ルンルンで小一時間、
何十種類かの飛行機と船の精密模型に見入る。
どれも素晴らしい出来で、
思わず自分がコックピットに座っているような気分だ。
私はどちらかと言うと第二次大戦中のアメリカの飛行機が、
模型として好きだったが、
この精密模型を実際に目の前にすると、日本の戦闘機に気持ちが入ってしまう。
店に入ったとたんに目に止まったのは、
ショーケースにあった「紫電改」。
小学校の頃、「少年倶楽部」とか何とか言う月刊の漫画雑誌に
「紫電改の鷹」という連載漫画があって、それに夢中になっていたことがある。
今でも、その漫画の主人公と紫電改の絵をうっすらと覚えているくらいだ。
昭和三十年代、漫画雑誌には必ず戦争漫画が載っていて、
今の子供が怪獣に夢中になっているのと同じように、みんな戦争漫画に夢中だった。
「WING CLUB」、
他に展示してあった超精密模型
「メッサーシュミット」「ホーカータイフーン/ハリケーン」
「紫電改」の元の型である「紫電」、「隼」、「ムスタング」「P38ライトニング」
とりわけ「コルセア」、なども素晴らしく良かったが、
最初に目に留まった「紫電改」がいい。
おまけに「サマーセール」として7月20日まで20%OFFと札に書いてあるではないか。
迷う。
店のご主人に聞くと、カードでもいいと言う。
・・・迷う。
唇を噛み締めて、買ってしまった。
値段は、ちょっと書けない。
10万円では買えなかった、とだけ書く。
しかしこれを4ヶ月もかかって造ったものだとしたら、
作った人はきっと本業を他に持っていて、副業としてこれを作ったのであろう。
創作をする人は、それが何であろうと
どんなに優れたものでも、
ごく一部の人を除いて決して金銭的に恵まれてはいないことが多い。
テレビの「何でも鑑定団」に出てくるような茶碗一つで何十万円もするような物は、
そうそう無いのかもしれない。
長年の夢であった精密模型、
しかも小さい時から憧れであった「紫電改」を
とうとう手に入れてしまった。(手元に届くのは2週間後)
名古屋を出てくる時は、
喫煙車両でタバコを吸えずにイライラしていたのに、
東京からの帰りは、ライターも買って、盛大に煙を吐きながら、
ニヤニヤしているのは、だらしない限りである。
さぁ、帰ってからこの無駄遣いをどうやって、説明しようか。
道に落ちていたからとも言えないし。
帰りの新幹線、富士山近くに来たのに雲が厚くさえぎって富士山は見えない。
ところが、富士山の南側をぐるっと回って西側に来たら、
そこには雪が溶けて山頂まで真っ黒になった夏の富士山がにょっきりと立って見えた。
東側から見てまったく見えなかったので諦めていたら、
西側からはっきり見えたのだ。
諦めて外を見ていなかったら、今年初めての夏の富士山を見損ねるところであった。
あぶないところだった。