谷 好通コラム

2009年06月10日(水曜日)

2226.寝床から起きて来れない人

自分自身に厳しいのか、甘いのかは、紙一重の差でしかないと思う。

 

前夜に遅くまで酒を飲んだ朝など、
睡眠不足に二日酔いが重なって、
もう少しだけでもいいから寝ていたい、布団から出たくない、と心底から思うが、
そこを頑張って起きるか、
嘘でもついてサボってしまうか、
そんな程度の差でしかないと思うのだ。

 

あるいは、
風呂に入っている時、特にぬる~い湯に入っていると、
頭がトロ~っとしてきて、風呂から上がりたくなくなる。
そのまま入り続けているときっと体に良くないな~と思っても、
つい、もうちょっと、もうちょっと、なかなか上がれない、
そんな時に「よいしょっ」と掛け声でもかけて、立ち上がるかどうか、
自分に対する厳しさなんて、そんな程度の差しかないと思うのです。

 

とても大切な事をやるか、やらないか。
溺れている人を助けるか、ほおっておくか、
暴力を受けている人を助けるか、見て見ぬ振りをするか、
するべき仕事を今するのか、今度にするのか、
やれば実現できるだろうが、出来ない場合の懸念もある時、思い切ってやってみるか、
懸念を理由に、やらない事を正当化するか。
そんな重大な決断を、
自分に厳しく行うのか、甘く逃げるのか、どう吹っ切るのか。

 

朝、眠さを断ち切って起きる。
そんな種類、そんな程度の「吹っ切り」と大して変わらないと思う。

 

朝、なぜ、みんな起きるのか。
起きないと学校に行けないし、仕事にいけないから、
仕方なしに起きるのだろうか。

 

その行動をしないと、ひどい目に会うから、行動するのか。
痛い目に会うから行動するのか。
あるいは損をするから行動するのか。

 

ほんのちょっとした行動でも、
その行動を起こすための動機は必ず必要だ。
その動機が「ひどい目とか痛い目にあいたくない」とか「損をするから」とか、
「マイナス要素がこうむるのがイヤだから」というマイナスの動機は、
行動に対して非常に弱い。

 

「このまま寝ていて仕事に行かないと、クビになっちゃうから」という動機では、
「無理して起きる事の不幸」と、
「クビになっちゃう不幸」とを天秤にかけた時、
ひょっとしたら
「仕事をクビになっても死ぬわけじゃないし、このまま寝ている方が幸せだ。」なんて、
布団の中で眠り続ける幸せが、
仕事を失う不幸に勝ってしまうこともある。

 

今日、東京で新人の面接を賀来部長が行っていたが、
今日もまた、朝一番の面接の人は現れなかったと言っていた。
これで六回連続、その日の最初の面接の人が現れないという妙な現象が続いている。
東京、愛知、札幌で、私と賀来部長で、六回連続である。

 

まさか「起きれなかった」というのが
大切な面接を黙ってすっぽかす原因であるとは思えないが、
六回連続のスッポカシの内、連絡が来たのはゼロ、
こちらから電話をしても、すべての人が電話に出なかった。
留守電に入れても、返事がかかってきたことは一度もない。
こんな無責任ぶりを見ると、
こんな人達には「起きれなかった」が「面接に行かない」理由になり得るのだろう。
信じられない事だが、そうだと思う。
自分にあまりにも甘いとしか言いようがない。

 

しかし、これが遊びに行く日だったらどうだろうか。
「眠たいけど、起きれば、楽しい遊びが出来る。」と、誰でも躊躇なく起きるだろう。
「起きると楽しいから」というプラスの動機は、実に強いのだ。

 

仕事においても同じようなことが言えて
「この仕事をやると、キチンとやるとお客様が喜ぶから」とか、
「仕事を一生懸命やって結果を出すと、誉められるから」とか、
「目標を達成すると給料がぐんと上がるから」とか、
プラスの動機で行う仕事は、
頑張れるし仕事も楽しくなる。

 

しかし、このプラスの動機も表裏一体の面があって、
プラスの動機の裏返しに、
「この仕事をキチンとやらないとお客様に叱られるから」とか、
「仕事をサボって結果が出ないと、叱られるから」とか、
「目標を達成しないと給料がガクンと下がってしまうから」とか、
プラスの要素とほとんど同じようなマイナスの動機も同居している。

 

要はプラスの動機を持って仕事をするには、
その結果において誉められ、
喜ばれ、褒賞される確証がその人にあればいいのだ。
あるいはそういう会社であり、誉め上手の経営者であればいいのだ。
逆に、いつも叱かられ、疎まれ、罰を受けてばかりいると、
仕事にマイナスの動機しか持てなくなってしまう。

 

信賞必罰と言うが、
「信賞」があれば、それが大きな動機になるので、
小さな動機にしかならない「必罰」はむしろ無用であるとなるのだろう。
要するに誉めろということだ。

 

このことはよく書かれているし、論理的にも非常によく解るが、
果たしてそうばかりであろうかと思っている。
自分に甘い、
つまり、容易な事では寝床から起きて来ないような人には、
誉め言葉も有効なのかなと思うことがある。

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    代表取締役会長兼CEO

    谷 好通

    キーパーのルーツであり、父であり 男であり、少年でもある谷好通の大作、名作、迷作コラム。
    読めば読むほど元気になること間違いなし。・・・の、はず。

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