2009年05月15日(金曜日)
2206.ナスとピーマンの煮物
新横浜駅で買う駅弁は、崎陽軒の「シウマイ弁当」と決まっている。
特別に美味いと思っているわけではないが、
食べて後悔することはないし、いつも安いし、
いつもそれなりには満足をする。
リピートとはこんなものかもしれない。
函館がふるさとの結城君(結城グループのリーダー)が、
函館への帰省から愛知に帰ってきて、残念な事を聞いた。
函館の「道南食堂」が、朝、開いていなかったそうなのだ。
「道南食堂」とは私が函館に行った時には必ず朝ごはんを食べる所で、
芸能人らのサイン入り色紙が壁一面に張られている観光客好みの食堂だが、
もちろん私はそんなものが目的ではない。
その食堂の「ナスとピーマンの煮物」と「ハラス」、小さくちぎった「スズコ」が、
朝ごはんにぴったりでものすごく美味しい。
全部頼んでごはんと味噌汁を食べても1,000円までにはならない。
観光客は「ウニ丼」とか「いくら丼」「海鮮丼」などを食べるが、
店を知っている人は必ず「ナスとピーマンの煮物」と、
ここ独特の味の「ハラス」などの「おかず」を目当てに食べにきていて、
それらが本当に美味しいのだ。
食堂の主人公はオバチャン達、
ほとんどオバアチャンに近いオバチャン達が三人ぐらいでテキパキと食堂を切り回す。
この人達が間違いなく「主人公」なのだが、みんなパートさんのようだ。
「ご主人」は別にいて、
先代か何かの息子さんなのであろう中年になりかけのオニイチャン。
壁に貼られた有名人の色紙には写真も必ず添えられていて、
その写真には必ずその「ご主人であるオニイチャン」が一緒に写っている。
だから、結果的に壁にはそのオニイチャンの写真が何十枚(何百?)も存在している。
しかし、オニイチャンは店の仕事は一向に手伝う様子も無く、
自分がおもむろに店に登場して、
「きゃー、あの写真の人よ。」と、
ミーハーなオネェちゃんから声が上がるのを楽しんでいるようだった。
彼は、完全に「自分はスターなのだ。」である。
常連のリピート客は、(私は常連ではないがリピート客ではある)
パートのオバチャン達が造った「ハラス」「ナスとピーマン」
「スズコ」「卵焼き」「たらこの煮付け」「みそ汁」「カレイの煮付け」が目的であって、
主人のオニイチャンが、自分に降り注がれるだろう視線を期待しながら店に入ってきても、
そんなのはどっでもよく、
オネエチャンが変にキャーキャー言えば、うるさいだけであった。
その朝飯が美味い「道南食堂」が閉まっていたと言うのだ。
しかし、建物もちゃんとあったそうなので、
「ひょっとしたら夜の営業になったのかもしれない」と結城君は言う。
朝食を食べに来ていた常連さんは一人せいぜい1,000円。
それも、ひっきりなしに観光客は来るので、
ひょっとしてオニイチャンは常連のリピート客が邪魔だと思ったのかもしれない。
観光客向けの「ウニ丼」などは2,000円以上もする。(私は食べた事がない)
それに、なんと言っても、自分をスター扱いしてくれる観光客は嬉しい。
それに対して「ナスとピーマンの煮物」とか「ハラス」とか安いものばかり食べ、
せっかくの「キャーキャー」をうるさそうにする常連客は、
自分をバカにしていることを隠そうともしないので、
オニイチャンは、面白くなく、憎たらしいと思っていたかもしれない。
だから、朝の営業はやめて、
観光客や芸能人などだけを相手に夜の商売の店にした。
その方がスターにふさわしく、客単価も上がると考えた?のかもしれない。
あるいは、この店に通っている人が好む安いメニューを無くしたか、
思いっきり値上げして、
リピート客が少なくなったところへこの不景気が来て、
オニイチャンの大好きな観光客までが来なくなって、
経営難になって店を閉めてしまったのか?
はたまた、「主人公」であるオバチャンたちが何かの理由で辞めてしまって、
リピート客が好むあの「ナスとピーマンの煮物」などが何も造れなくなってしまったか?
だから、主人であるオニイチャンは、
朝、店を開く事ができなくなってしまったか?
以上は私の勝手な妄想であって、
私はオニイチャンと話をした事もなく、
オニイチャンを悪者扱いしてしまっているのは全く根拠の無いことで、
全く間違っているかもしれないし、
本当はものすごくいい人なのかもしれない。
あくまでも私の勝手な想像であって、何の根拠も無い。
しかし函館名物の朝市の隅っこに存在しているこの道南食堂は、
地元の人達にも大人気でいつも賑わっていたのに、
よほどの事がなければ、朝、店を開けなくなるなんてことはないはずだ。
私も大好きなあの道南食堂は、
「主人公」であるオバチャンたちの造る「おかず」が美味しくて、
地元の人達も、観光客も、芸能人たちもやってきた。
すべての人の目的は「オバチャンが造った美味しいおかず」だ。
しかし、そのおかげで評判になり、
芸能人たちもいっぱい来たので、写真に一緒に写ったオニイチャンは、
つい、「自分はスターになってしまった」と思い込んだのか、
店のお客さんと写真に写ったり、お話をする事が仕事になっているように見えた。
(あくまでも、私的な印象であって、勘違いかもしれない)
(ひょっとしたら、結城君がこの店を見た日が定休日だったのかもしれない。)
それにしても、
私は、またあの「ナスとピーマン」「卵焼き」
「スズコ」「ハラス」「たらこの煮付け」「みそ汁」「カレイの煮付け」が食べたい。
あの店の良さは、ウニ丼なんかではないし、いくら丼でもない、
ましてや、あのオニイチャンでもない。
オバチャンたちが造ったあの「安いおかず」達なのだ。
リピート客はそれが目的でリピートしている。
それであの店は賑わっているのだ。
あの「キャーッ写真の人だ。」と騒ぐミーハーな観光客は、
多分、ほとんど二度とは来ない一度だけのお客さんだ。
何を大切にしなければならないのか。
店の良さを本当に分かってリピートしていただいているお客様達を
大切にしなければならない。
そして新しく来られたお客様にも本当に店の良さを知ってもらい
また来ていただくことを大切にすべきだろう。
決して、軽薄な勘違いだけはしてはいけない事だけは間違いない。
どうか、結城君が見た「朝閉まっている道南食堂」がたまたま定休日であって、
本当はまだ、あのオバチャンたちが造る「ナスとピーマンの煮物」があることを祈る。
今日は神奈川県の「快洗隊・相模原店」と「快洗隊・上溝店」に行ってきた。
快洗隊での主人公は間違いなくきれいな車を造り出す彼らであり、
お客様の目的は「キレイになった自分の車」である。
だから彼らが主人公である。