谷 好通コラム

2008年07月31日(木曜日)

1983.タバコ吸い最後の牙城

東京・虎ノ門に面白いビルがあった。
ロビーまで含めて全館、全フロアが喫煙OKで、
昼ごはんを食べた1Fのイタリアンレストランなど禁煙席がない。
古いビルではなく、
御影石の床で、壁から柱まで真っ白の最新・豪華・巨大ビル。
素晴らしくきれいなビルなのである。

 

 

今、タバコは悪の象徴のような存在になっている。
あらゆる乗り物はほとんどすべて禁煙になって、
レストラン、映画館、スーパー、デパート、野球場とか
いわゆる複数の人間が集まる場所は基本的にすべて禁煙で、
街を歩いていても吸えない。
タクシーに乗っても吸えず、もうタバコ吸いにとって現代は八方ふさがりである。

 

タバコが健康に有害だからだそうだが、
タバコの煙は、直接、いくら吸ってもその場で死ぬことは”ない”が、
自動車の排気ガスは、閉鎖された場所で吸えば確実に死ぬ。
「排気ガス自殺」なんてものがあるぐらいだ。工場から出る排煙も同じ。
まともに吸えば死ぬ排気ガスは、町中に大量に出されながら、
その何千分の一、何万分の一にも満たないしょぼい量の煙、
しかも直接吸っても決して死ねないタバコの煙を
なぜ、そんなにまで敵視するのか。

 

タバコを吸い続けると
ガンになる確率が高くなるとか、
呼吸器の病気になる確率が高くなるとか、
色々と言われるが、体の中に取り入れるもので完全に害の無い物ってあるだろうか。
どんな食べ物でも食べ過ぎれば太るし、
太ればメタボリックシンドロームとかいう万病の元のような状態になる。
酒だって飲めば、飲まない人に比べれば何らかの傾向は出て、
有害といえる部分もあるだろう。

 

私は38年間、毎日三箱ずつタバコを吸い続けてきたが、
ここ十年以上風邪も引いたことがない。
引きそうになっても、次の日になると元気になっている。
なのに、周りの人はいっぱい風邪を引いている。

 

タバコを吸わない人も、当たり前のように風邪を引いている。
私は、それらの人からうつされないように注意するだけで、
いつも不規則極まりない生活で、
しょっちゅう外泊して、年中ほとんど休みは取らず、
休暇があってもたいてい激しく遊ぶ。
夜遅くまで仕事をして、酒も飲んで、慢性的睡眠不足で、
でも必ず毎日タバコ三箱を吸いながら
私は十何年か、あるいは二十年以上か、風邪を引いたことがない。
下痢も便秘もしたことがない。ピロリ菌がいたくらいだ。(関係ないか)

 

車の排気ガスが臭いと思うことはあるが、
香水をプンプンさせている人を臭いとは思うが、
自分が吸っているタバコは、吸い過ぎなければやっぱり「うまい」と思う。

 

工場の排ガスと自動車の排気ガスで空全体がけむっている街の中で、
吸うタバコの煙とは、
大海原に向かって立小便をしているようなものではないか。

 

ちょっと言い過ぎであることは分かっている。
タバコが嫌いな人にとっては、最も憎むべきものがタバコであろう。
だからと言って、タバコを犯罪的に扱うのは絶対におかしいと思うのだ。

 

タバコが大嫌いな娘に言うとするならば、
「お前は小さい時からお父さんの吸うタバコの煙を、
しかも今のタバコの十倍以上も濃い煙を、隣で吸って大きくなってきたんだ。
今のお前に、その影響がなんかあるか?」

 

でも、きっと彼女は言うだろう。
「お父さんのタバコが無ければ、私はもっと背が大きくなっていたかもしれない。
ひょっとしたら、寿命がもっと延びていたかもしれない。
影響は判らないところに出るから、タバコは怖いんだよ。
お父さんも、いい加減にタバコやめたら?」

 

ああ言えばこう言うである。たぶん。

 

先ほどの全館喫煙OKのビル。
「JTビル」という。
「日本たばこ」のビルなのだ。
虎ノ門にある「タバコ吸い最後の牙城」のようなビルであった。

 

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    代表取締役会長兼CEO

    谷 好通

    キーパーのルーツであり、父であり 男であり、少年でもある谷好通の大作、名作、迷作コラム。
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