谷 好通コラム

2007年12月24日(月曜日)

1805.遊んで老いるのはいやだ

一昨日の夜、(日付が変わっているので、もう一日前)
「宇宙、最後の3分間」という本をやっと読み終えた。
一ヶ月以上もかかって読んでいたのだ。

 

この本は大変難解で、
宇宙の過去と未来を物理学の方程式なしで語っている。
しかも、相対性理論の解説書などにありがちな、
その珍奇な現象を並べるだけで、
ちっとも本質に触れようとしない漫画チックな本とは違って、
真面目に、出来るだけ短い言葉で語り、読者に本気で解ってもらおうとしている。
だから読んでいて面白かったし、難しくもあった。
毎晩この本を夢中になって読んでいたのだが、
いよいよ難しい部分になり何度も読み返したりしていると、
とたんに眠くなってきてあっという間に撃沈。深い眠りに入る。
そんなことが続いて、毎日よく寝れた。
本自体が超強力即効性睡眠薬(今は眠剤というそうだが)のようなものだった。
しかし、何かの拍子にハマッて、集中し、頭が冴え不思議なほど内容が理解できて、
朝まで読んだことも1度あった。
その時に読んだのが全体の半分で、
あと半分を一ヶ月以上かかって読んだことになる。
久しぶりに面白い本であった

 

だからしばらくの間、私の頭は”宇宙”に染まっていて、
「量子的に考えると・・」とか「ビックバンが・・」とか
そんな言葉が出てきたら、
「ああ、こいつはあの本の影響だ。」と思っていただければ間違いない。
私の頭は単純で影響されやすい。

 

 

 

長い間、夜のお供は難しい本だったので、
昨晩の夜は雑誌にした。
1年以上前に買った(もらった?)「駱駝」という雑誌で、
「黄昏からの終(つい)の棲家」という特集で、
仕事を引退したあと北海道や沖縄に移住し、
楽しく移住生活をしている人を特集、紹介されていた。
北海道では中標津、当別、白老。
沖縄は那覇近くと何とかいった島で、別荘のような家を建てて住む人や、
マンションを買って棲んでいる人。
もちろん、皆さんリッチである。
大自然の中を毎日、犬と散歩したり、
広々とした草地でキャンピング、ジンギスカン、カヌー。
模型飛行機三昧、
沖縄ではダイビング三昧。しゃれた居酒屋。トラスト運動
みなさん、ものすごく幸せな人生を送っているように見えた。
そのように書いてあったし、みなさんの笑顔は嘘ではなく、最高の笑顔であった。

 

読んだはじめは
「いいなあ、こんな生き方もあるなあ。俺も早く引退するか。
俺だったら北海道は網走がいいな。霧多布もいいかな。でも沖縄も捨てがたいよな。
沖縄だったら断然、西表島だな。」
などと考え、感心したりしていた。

 

「でも、毎日何やるんだ。
散歩はほとんどしたことないし、
わざわざキャンプして屋外で飯を食いたいとは思わないし、
・・・・・・・・
ベランダで日向ぼっこか?
本でも山ほど読むか? 美術館は地方には少ないし、コンサートもないし、
まさかサーキットもないし、
・・・・
こりゃ、1ヶ月で飽きちゃいそうだな。」
いゃ、1週間で飽きるか? ・・・たぶん、三日で飽きるな。」

 

リゾートの類は、私は苦手だ。
長期滞在型リゾートが最もリッチな遊びらしいが、私はダメだ。
というよりいやだ。
遊びはすぐに飽きてしまうので、我慢して遊んでいたって楽しくない。

 

ヨーロッパの人たちは一ヶ月単位でバランスを楽しむそうだ。
SONAXのMr.クリーガーはクリスマス休暇で一ヶ月の休暇を、
今、バリ島で過ごしているらしい。
美しい奥さんと子供を連れてリゾートホテルに泊まり、
連日、ゴルフとか美しい海でのダイビングなどで遊んでいるのだろう。
しかし、
ちっともうらやましいと思わないのは私が変なのだろうか。
たぶん変だ。私の方がたぶん変だ。
誰だって、
素晴らしい自然の中で好きなことで思う存分に遊んで、
夜は贅沢な食事、ショー。
そんな生活をして見たいと思うのが自然だ。
しかし、Mr.クリーガーが超人的スケジュールをこなし、
世界中を駆け巡って大きなビジネスを、次から次へと組み立て、
一人できっちりエンディングまで持っていくスーパービジネスマンであって、
その激しい時差とストレスは、出張を人一倍やっている私ですら感服するほどだ。
そのタフさは、私にはとても真似できない。
強烈なストレスをものともせずに、びっしりと仕事を詰め込んで、
驚異的な仕事量をこなしている。
それは、研究所の責任者Dr.ピッチでも同じことだ。
彼等のずば抜けた体力と精神力、意志の力は考えられないような仕事量をこなし、
年に一度、一ヶ月の休暇を取る。
それはそれで、納得がいくのだが、
私はそんな超人的な働きが出来るわけではないし、
仕事が大好きでボツボツやっているので、別に休暇が必要とも思わないし、
欲しいとも思わない。
仕事をしていた方が楽しいのだから仕方がない。
私の方が変だとしても仕方がない。

 

黄昏の終(つい)の棲家で、遊びながら老いるのはいやだ。
楽しくもない遊びを我慢し続けて、その末に老いて死ぬのはいやだ。

 

ならば、どうするのか。
・・・・
わからない。
わからないが、遊んで老いていくのはいやだ。

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    代表取締役会長兼CEO

    谷 好通

    キーパーのルーツであり、父であり 男であり、少年でもある谷好通の大作、名作、迷作コラム。
    読めば読むほど元気になること間違いなし。・・・の、はず。

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