谷 好通コラム

2007年07月30日(月曜日)

1689.思う壺にはまるか

政治については、ここでは書かないことにしているが、
ふと気が着いた事があったので、少しだけ書くことにした。

 

今回の参議院議員選挙では自民党の惨敗であった。
これはあくまでも自民党が負けた選挙であって、
民主党が勝ったわけではないと思う。

 

自民党が負けた要因は色々あろう。

 

高級官僚が税金を湯水のように使う特殊法人などに天下りして
無駄な金が垂れ流しになっていたり、
公共工事の談合などで、明らかに割高な工事費がまかり通っていたり、
使う者などいるわけがない無駄な箱物が無数に廃墟になっていたり、
世界でも稀に見るほどの巨大な借金を国が背負い込んでいたり、
今の政治と行政の仕組みが、
明らかに理不尽であって、狂っていることはみんな知っている。

 

しかし、それでも、
一人一人の人たちは
政治は悪いと思っていながらも
自分が所属している組織が支持した候補に投票したり、
地元にお金を持ってくるという代議士に投票したりで、
政治と生活は別だと思っていた。
それが大人だとも、

 

それが、今回の社会保険庁の無能力とデタラメな運営によって、
払わされた年金、つまり老後のための貯金であるはずの年金が、
どっかへ行っちゃった。となって、
みんなものすごく不安になった。
もう、地元へ国の金を持ってくる人とか、どこの組織の人とか関係ない。

 

 

自分で汗水たらし働いて稼いだ金を、
「この分は、国が預かって置いてあげるからね。」
と、否応なしに半端じゃない金をピンハネしておいて、
「あんたが年とったら、年金という名前で、毎月返してあげるね。」
と、言ったくせに、
「あれ? あんたの預り証がどっかへ行っちゃった。
預ったデータを失くしちゃったんで、
あんたが証拠持ってこなけりゃ払えなくなっちゃった。」

 

というわけで、
無理やり貯金させられた金が、どっかへ行っちゃった。
という前代未聞の不祥事があったのに、
阿部総理や政府の人たちは、
お役所の無責任役人がよく使う「建て前の話」ばかりを言っていた。
「責任を持って全部お支払いします。」って言ったって、
預けた金、
つまり、貸した金を返すのは当たり前であって、
誰だって、借金返せって言われれば
「必ず返します。」と口では言うに決まっている。

 

貸した金を、借りた奴が
「誰から、いつ、いくら借りたのか分かんなくなっちゃった。」
なんて言ったと思ったら、
「お金は全額返します。私を信じて下さい。」
などと言ったって、誰が信じるものか。

 

それが何千万人分もの金だ。
これが銀行ならば、
とりあえず、これから先に金を預ける銀行は変えるでしょ。
「いくら預かったのか分かんなくなっちゃった。」
「分かんないけど、でも、絶対全部返します。」
なんて当たり前の建前ばかり言っている銀行に、これからもお金を預け続けますか?

 

その上、その銀行員が、
訳の分からない暴言を吐いたり、
申告をちょろまかしたりした行員がぞろぞろ発覚したら、
その銀行に預け続けますか?

 

とりあえず、これからお金を預ける銀行は、誰でも変えるでしょ。

 

それで、「生活と政治は別物とするのが大人だ」と思っていた人も、
今まで預けた金が
「誰から、いつ、いくら借りたのか分かんなくなっちゃった。」で、
無くなってしまうかもしれない事態になったら、
政治は、実は生活そのものだったということに気が着いて、
「○○銀行を別の銀行に変えよう。」と同じ感覚で、
「自民党は、やめとこっ」と、
主に民主党に投票したのではないかと想像するのです。

 

阿部さんや自民党の人たちが「絶対に支払うのが私の責任です。」なんて言っても、
そんなことは当たり前の事であって、
建て前だけの言葉と一つも変わらない。

 

自民党は惨敗したわけだが、
敗北がはっきりしたあとの記者会見で、
阿部さんが
「国民の皆さんのご判断を厳粛に受け止めた上で、国づくりをより進めて行きたい。」
というような言葉を、
くり返し、くり返し、インタビュアーの質問に対して喋っていた。

 

どこまでも、建て前しか言えない人のようだ。
上っ面の建て前の言葉そのものが、
バカな役人のようで、信頼を失った元凶であることに気が着かないらしい。

 

深刻な不安を持っている時に、
一番腹が立つのが、建て前しか言わない奴だ。
何を言っても建て前の言葉しか返ってこない時、絶望的な怒りを感じる事がある。

 

最初、民主党の「生活が一番」とは何とも政治っぽくないスローガンだと思ったが、
国民の不安がどこにあって、今どのような状態であるのかを
見事に射抜いたスローガンであった。
そういう意味では民主党は勝ったとも言える。

 

阿部さんは小沢一郎の思う壺にはまった。
しかも、それに輪をかけて、
敗北後の発言にまで阿部さんは「建て前」だけを繰り返すとは、
ますます、小沢一郎の思う壷どころか、ど壷にハマったような気がする。

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    代表取締役会長兼CEO

    谷 好通

    キーパーのルーツであり、父であり 男であり、少年でもある谷好通の大作、名作、迷作コラム。
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