2006年06月24日(土曜日)
1419.シミュレーション
物事を決定するに当たって、
議論をすることも必要であるし、自分の中での熟考も大切である。
しかし、考え、議論をしているだけでは良い結論を出すことは出来ない。
一つのことを成すために、
いくつかの方法がある時、
それぞれの方法をとった場合に具体的にどうなるのか、
実際の数字を当てはめて、シミュレーションをすることが大切である。
頭で考えていた方法で、何となく思い浮かべていた結果と、
具体的な数字から出した結論と大きく違う場合が往々にしてあるからだ。
今回、会社として大きな決定をしなければならないことがあって、
多くの議論を経て、自分なりに結論を出し、
実行に移しつつあったのだが、
何か引っかかる物が自分の頭の中にあって、
「これで良かったのだろうか、
何かやらなくてはならない事をやっていなくて、
やってはいけない事をやっているような気がする。」
そうブツブツ呟きながら、倉庫の前の喫煙場所で考え込んでいた。
そんな時、同じタバコ好きの池本部長が、
私のタバコ(1mg)よりも数十倍も強いタバコであるショートピースを吸いながら、
「社長は、最後にひらめきがあって、
その通りにやると、たいていの場合、大変良い結果を出してきました。
社長の強運というか、
そんなものでこの会社はここまで伸びてきたんだと思いますよ。」と、
濃い煙をたなびかせながら、言ってくれ、
背中を押されたように、
具体的な数字を出してシミュレーションしてみる事にした。
すぐにMさんに電話をする。
Mさんはアイ・タックの前身である?タニの頃からのお付き合いで、
かれこれもう20年近く会社の経理の顧問をやってくれている人。
私がもっとも信頼しているブレーンの一人だ。
突然の電話に、Mさんは予定を空けて一緒に検討することを快く引き受けてくれた。
夕方、彼の事務所に行き、さっそく計算を始める。
まず、今実行しつつある方法をシミュレートしてみる。
大変面倒な計算だが、
これまでたくさんの考察を重ねて来たのでスムーズに計算は進む。
Mさんの力も大したものである。
大体頭の中で想定していた通りの数字が出た。
しかし、この中に、
すべての立場の人が100%納得してもらうには無理があるであろう事実が判明した。
ある一つの想定に決定的な矛盾があることが解ったのだ。
実際に数字で組み立ててみて初めてわかった事で、思わず冷や汗が出る思いだ。
次に、もう一つの大胆な方法をシミュレートしてみる。
ちょっとビビルような数字が最初に設定されて、
それが複雑な過程で処理されていくと、最後にきれいな数字が表れた。
しかも、その過程の一つ一つのどこにも矛盾も破綻もない。
素晴らしい本来あるべき姿が現れたのだ。
この方法は最初の設定があまりにも大胆だったので、
イメージとして、「こりゃむりだろうな」と思っていたのだが、
実際に数字を繊細に当てはめていくと、実に整然とした結果が出てきたのだ。
一方、実行しつつあった方法は、
一見単純で、言葉に出すと誰もが納得するような方法であったが、
あるべき結論に持っていくためには、
立場が違う人からは違う見解が出るかもしれない想定が一つ入っていて、
それが決定的なリスクとなっている。
一見単純そうで、実は大きな矛盾を中に持っていたのだ。
急遽、方針を大きく変えて
その大胆な方法で進めていく事に決定する。
管理部長を呼んで、その手はずを進めるために関係機関に行き、
説明をして、週明けにすぐ手続きを開始することを決めた。
みんなが納得である。
実は、私は今日からアメリカに行く事になっている。
少し仕事は混じっているが、ほとんどが休暇である。
大切な決算の直前に旅行に行ってしまうなんて不謹慎極まりないのだが、
一年中、どの日も何らかの大切なことがあって、
いくら予定を変えても、まったく問題のない日程など組むことは出来ない。
そう思って、二度の予定変更を経て、
今日からアメリカに行くスケジュールを組んでしまったのだ。
だから、今回の決定にしても、
このアメリカ行きがなければもう少しだけ余裕があったのだが、
現実には今日から私はもういないので、
昨日がタイムリミットだったのだ。
これが結果として良かったのだと思う。
「まだ時間がある。」と思っていたら、今回の決定は出来なかったかもしれない。
実行しつつあった無難な方法は、
シミュレーションするまでもない明確な結果が見えていたので、
そのまま実行を続けていてもおかしくなかった。
しかし、「もう時間がない。」。しかも、遊びのための日程のために
時間がないという切迫感と罪悪感が、
もう一度きちんとシミュレーションをしてみよう。と自分を突き動かしたのだろう。
結果として、無難な方法の中に矛盾を見つけ、
ためらってしまうような大胆な方法の中に整然とした結果が隠されていることを
見つけることができた。
アメリカに誘ってくれたトニーに感謝。
私の背中を押してくれた池本部長に感謝。
そして、真剣に会社のためを思ったスタンスで、
突然の申し入れにもかかわらず、難しいシミュレーションに付き合ってくれ、
素晴らしい結論を導き出してくれたMさんに感謝。
ものごと、頭の中で考えただけではダメです。
具体的な数字を使っての綿密なシミュレーションが、
意外かつ正しい結論を導き出してくれることがあるのですね。
一昨日の夜、
新しい洗車機のメンテナンスのための新人研修生達と飲んだ。
また、新しい仲間が五人も増えたのだ。
彼らのためにも、
たくさんの仲間達のためにも、
世の中の私たちに期待してくれてくださる多くの人々のためにも、
私は、正しい判断と決断を、いくつもいくつも重ねていかねばならないのです。
私一人ではなく、支えてくれる信頼すべき人たちと共に。
毎度ながら、個性たっぷりの新人達です。
(ユウキとヤマサコとマコトは、飲み会と聞いて勝手についてきた)