谷 好通コラム

2006年04月21日(金曜日)

1382.グッド リカバリー

日本では、「ナイス リカバリー!」と言うが、
どうも本当は「グッド リカバリー」と言うらしい?

 

 

ダイヤモンドKeePreVP33の量産品がとうとう出来上がった。
テストを始めてからかなりの時間がかかったが、
それだけにかなり自信を持てる物になった。

 

この製品は、ガラス質の皮膜をボディーにコーティングするもので、
この手のコーティングは、今、トレンドになりつつある。
ガラス質という無機物を使うので、
紫外線とか大気汚染に非常に無反応であり、
耐久力が強い。
しかもかなりの硬度を持つので、こすり傷にも強い。
また非常に強い艶を出すので、好き好きではあるが、
特に濃色車に合うコーティングとして
このところマーケットにも大きな関心を持たれている。

 

ただ、この手のコーティングはかなり昔から存在はしていたのだが、
一部のマニアックな磨き屋さんにおいてのみ存在しているに留まっていた。
施工が非常に難しいという欠点をもっているからだ。
この手のコーティングは、
かなりの厚みを持った被膜が、
塗装面に乗った瞬間から硬化を始めみるみる固まってしまうので、
塗りムラがあったり拭き残しがあったりすると、
出来上がった時に艶のムラになって残る。
イヤ、そんなはっきりした原因がなくて、きっちり塗ったつもりでも、
いつの間にかムラが出たりしていることが多い。
そして、
そのムラがそう簡単には取れないのだ。
たいていの場合、ムラになった部分を含めたパネル1枚分のコーティングを、
ポリッシャーとコンパウンドで削り取って、はじめからやり直す事になる。
これが大変な作業なのだ。

 

また、コーティング作業中に、
折り返しの部分などに隠れていた水がツーっと垂れて来たりすると、
水とコーティング剤が強く反応し、その部分がいびつな被膜になってしまったりする。
この場合も前例のように大変な作業でリカバリーしなくてはならない。

 

非常にデリケートで難しい作業を必要とし、
ガソリンスタンドでの作業はほぼ非現実的なコーティングであった。

 

また、コーティング自体も、
その時の温度や湿度、作業の力入れ具合などで、
撥水がうまく出なかったり、まったく弾かなかったりで、不安定な部分を持っている。

 

ダイヤモンドKeePreはこれらの欠点を克服し、
ガソリンスタンドなどのように特殊な設備環境を持っていない店舗でも、
容易にコーティング作業が出来るようになっている。
滅多なことでムラが出来たりしないのだ。

 

また、ひょっとして塗り忘れや拭き漏れなどでムラが出来たりしても、
簡単にリカバリーが出来るようになっている。
ムラになった部分にダイヤモンドKeePreを塗り足せば簡単に消えてしまうのだ。
作業途中で水タレがあったりしても、同様に簡単にリカバリー出来る。
これは実に革命的なことなのだ。
なぜそれが出来るのかは、秘密中の秘密。

 

もう一つ大きな特徴は、ガラス質の被膜(SiO2)の表面に、
フッ素を分子的に結合した状態で並べ、張り巡らす事に成功していること。
そのため、非常に強力な撥水力を長期間にわたって維持することが出来る。
どのような状態でフッ素を固定しているかも秘密なのであるが、
従来のフッ素系のコーティングのように、
テフロンの粒子をバインダーを使って挟み込み固定している構造ではない。
フッ素そのものが、ある状態で分子的結合をもって固定されているのであって、
その撥水効果の持続性は、従来のフッ素系コーティングの比ではない。

 

ダイヤモンドKeePreの威力はちょっと半端ではないのだ。

 

このように画期的な技術を内包したダイヤモンドKeePreは、
ドイツSONAXとアイ・タック技研?の共同開発の賜物である。
堂々と胸を張ってそう言うことが出来る。

 

何十種類ものテスト品の性能比較が、
多分百台を越える施工の繰り返しで行なわれ、
何をどちらの方向に持って行ったらいいのか、
ドクターピッチとの激しい議論の中で劇的に改善され、
長い時間を経てVP33の形で完成した。

 

開発の途中で何度もあきらめかけたこともあったが、
最終的には、
日本に存在しているあらゆるガラス系のコーティングに対して
凌駕していると言い切れる製品になった。

 

?快洗隊直営店では、
すでにラボ(研究室)で生産されたVP33で施工を開始しているが、
いよいよ今月中旬、
量産されたVP33が「DIAMOND KeePre」として、
とりあえず一万本入荷されるはずであった。

 

が、問題が起こった。

 

DIAMOND KeePreは、50mlの小さいエアゾール缶に詰められている。
普通車で1台分のケミカルが1本の缶に入っているのだ。
このケミカルは水分に触れると硬化する。
だから、1本1台分としてとても小さなエアゾール缶に詰められているのだ。
もちろん使いかけの缶でも、
2ヶ月間ほどなら充分に使用できる安定性の高いもので、
施工に使用する分においては、使いかけの缶でもまったく問題ない。
この小さなエアゾール缶は、完璧な安定性にこだわる
「DIAMOND KeePre」の生みの親であるドクターピッチのこだわりである。

 

それはとても小さなエアゾール缶であり、
中のケミカルが大変高価なものであるのために、
慎重にドイツ・ノイブルグの工場で、アイ・タック技研?のために製造されたのだが、
ちょっとしたミスがあって、日本への納期が大幅に遅れる恐れが出てきた。
とんでもない話である。
日本では、すでにすべてのパッケージ、販促品などの準備が整いつつあり、
4月下旬の発売に向けてスタンバイ状態であったし、
キーパータイムスなどで発売の予告をしていた。

 

私もその知らせを聞いて、かなり真剣に抗議をしたのだが、
そのあと、
ちょうど日本に到着していたドクターピッチが烈火のごとく怒ったのだそうだ。

 

ドイツ本国の工場長に国際電話を何度もかけて、
最後には、
「とにかく何でもいいから、お前がVP33を抱えて今すぐ日本に来い!
俺は、こっち(日本)で、お前の“ハラキリ”の用意をして待っていてやるから。」
と、大声で怒鳴ったのだそうだ。

 

ハラキリとは物騒な話だが、
ドクターピッチはかなり頭に来ていたらしい。

 

そのドクターピッチが愛妻のクラウディアさんを伴って昨日名古屋を来た。
彼はいつになくしおらしく「申し訳ない」と言いながら、
「何とかドイツの工場に遠隔指示をして、
全工場の最優先としてVP33を製造させて、
千本だけだが今週末に航空便で日本に到着するように手配が出来た。」と告げた。
今週末に日本到着ならば、通関の時間を考えても、
来週前半には、アイ・タックの倉庫に入る。

 

日本語のパッケージの手間を考えても、
連休前には出せる体制に入れるはずだ。
その知らせに、もう在庫が残り少なく心細くなっていた快洗隊も大喜びであった。

 

ドクターピッチ、ナイスリカバリー!である。

 

ミスは誰にでもある。
それを「どうしてくれるんだ。」と強面で迫ってもしょうがない。
私たちはヤクザではないのだ。
そのミスを、如何にリカバリーするかに最大限の努力をすべきであって、
お互いに最大限の協力をするべきなのである。

 

ドクターピッチとクラウディア夫妻を、
彼らが宿泊の名古屋マリオットホテル最上階の「ミクニ」というフレンチに招待した。
最上の料理とワイン、最高の会話、そして最高の料金。(ドキドキであった)
ドクターピッチは「大変御迷惑をおかけしました。」と恐縮して、
支払いを申し出てくれたが、
「ピッチのナイスリカバリーに感謝します。」とそれを断った。
それをドイツ語に通訳した吉村さんが、
「グッド リカバリー・・・・」と話している。

 

どうも、
日本では、「ナイス リカバリー!」と言うが、
本当はドイツでは「グッド リカバリー」と言うらしい?

 

とってもお似合いのドクターピッチとクラウディア夫妻、そして吉村さん。

 

 

名古屋ツインタワーの最上階、
52階にあるマリオットホテルのフレンチ「名古屋ミクニ」からの夜景。
雨の後の空気が透き通っていた。

 

 

今日は、午後10時過ぎに、
事務所でドタバタといくつもの仕事を片付けてから大宮に向かった。
新幹線からの富士山はバッチリで素晴らしかったが、
隣の席の女性がぐっすりと寝込んでいたので、
棚の上のカバンからカメラを出しそびれてしまった。それで写真は無し。

 

しかし、大宮の会場の一階下、先方の事務所である25階から、
はるか遠く、透き通った空気越しに富士山が見えた。

 

 

てっぺんに少し雲がかかっている。

 

 

90゜左の視界には、東京の街があって、新宿の超高層ビルの林が見える。

 

 

私の講演は、相変わらずホワイトボードをグチャグチャにしてやっています。

 

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    代表取締役会長兼CEO

    谷 好通

    キーパーのルーツであり、父であり 男であり、少年でもある谷好通の大作、名作、迷作コラム。
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