谷 好通コラム

2006年03月12日(日曜日)

1360.春のごとく結婚式

私は四級の身体障害者手帳を持っている。
小さいころに脊髄性小児麻痺(ポリオ)に罹患し、
両親の懸命の努力で、わずかな後遺症を残しているまでに直ったが、
今でも左足の膝下からの筋肉がほとんどない。

 

それでも、慣れというか、物心ついてからずっとこの状態なので、
そのことを意識したことはほとんどなく、
何も不便を感じたことはない。

 

逆に「身体障害者手帳」というものは、実に強力な存在で、
たくさんのメリットがある。
・高速道路の通行料金が半額に免除される。
・JRで100km以上の乗車券が半額に免除される。
・国内の航空券が30%OFFになる。時間変更もキャンセルも自由だ。
・所得税の基礎控除が増額される。
・自動車取得税(5%)が免除される。
・毎年の自動車税が免除される。
・申請すれば、駐車禁止区域での駐車が許される。

 

おまけに県と市から毎月4,000円(?)くらいのお手当てまでもらえるのだ。
私は、このお手当てを別口座に振り込んでもらって、
何十年か放置し、
毎月のお手当てが貯まって、
まとまった金額になるのを楽しみにしていたことがあった。
たとえば、
4,000円×12ヶ月×30年=1,440,000円

 

ひと月たった4,000円でも、
そのことをアテにせずに、30年貯めっぱなしにすれば百四十四万円にもなる。
30年間忘れていればいいだけなのである。

 

しかし、この企みはもろくも崩れた。
私の連れ合いがこの秘密の口座を最初から知っていて、
勝手にこの口座を「水道料金の引き落とし口座」に指定してしまっていたのだ。
十年程してからこの通帳を書き込んで見た時、残高は何千円しかない。

 

私はこの事実を知った時、ショックであった。

 

「あのさぁー、これは、俺の歳とってからの楽しみにしとったんだぞーっ。」

 

「あれま~、金額が水道料にちょうど良かったもんだから。いかんかった?」

 

「・・・・・・、くそったれ~。」

 

なにはともあれ、身体障害者はそれなりに社会から保護されていて、
特に車とか電車での移動手段の利用について優遇されている。
私のように出張が多く、車、電車、飛行機をひんぱんに利用する物には、
実利を伴う強力な味方となっている。

 

足に障害があっても、本人はそれが全く気にならず、
それどころか、出張の経費節減にすごく役に立っている。

 

しかし、いいことばかりではない。
この2週間、足のことで大変困っている。
先々週の日曜日に富士スピードウェーで痛めた足がちっとも治らないのだ。
膝にたまった水が、その存在感を失わない。
明日からロス アンジェルス行きだというのに、膝の痛みが全く解決しない。
こんな時、自分の足の弱みが恨めしくなる。

 

この話の中に教訓が2つある。

 

同じ一つの事でも、自分にとってプラスの良い事もマイナスの悪い事もある。
たとえば、私のように足に障害があって、
その事は本人にとってマイナスでしかないように見えても、
そのおかげでプラスのこともいっぱいある。
でも、調子に乗ると、ひょんなことでしっぺ返しを食う。

 

物事、一見マイナスでしかないようなことでも、
見方によっては大きなプラスになる。
ポジティブシンキングが大切なのだ。
しかし、油断すると大きなマイナスを突きつけられることもある。
世の中、調子に乗ってはいけないのだ。

 

もう一つの教訓は、
何事も、秘密は、すぐばれるものであって、
特に相方には、何でも、言っておいてしまった方が、うまく行くもののようだ。
ということ。

 

情報公開は、会社にとって最も大切な要素であるように、
夫婦の間でもそうだ。
その方が絶対にうまく行く。

 

 

私は、こんな話を昨日の大野君の結婚式で話そうと思っていた。
ところが、秘密の口座がばれていて、水道料金の引き落とし口座にされていた
という話になったところで、
「女房にはどんな秘密でも、絶対にばれるから、何でも話した方が良い。」
「ホントにおかぁちゃんへの秘密はばれるからねっ、ねっ、酒部部長?」などと、
秘密はばれる、ばれると、そればかり強調する話になってしまった。
私は後ろめたいことは何もないのだが、
そんな話で終わってしまった。

 

深層心理の中に、何か心当たりがあるのだろうか、私は。

 

昨日は、
快洗隊FC本部の大野裕貴君と明日香さんの結婚式。
私にとって初めての「人前結婚式」であった。
なんと明るくさわやかな結婚式であろう。

 

神様などの何の権威にすがらず、
二人だけの決意と、集まった親族と大勢の仲間たちの祝福だけで、
これからの先の人生の決意をする結婚式。
どんな結婚式も、意義があり、神聖な物だが、
彼らの結婚式は、吹き始めた春風のように、
さわやかな、明るい、感動的な結婚式であった。

 

実に感動的な結婚式であった。

 

へんな祝辞でごめんな。大野君、明日香さん。

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    代表取締役会長兼CEO

    谷 好通

    キーパーのルーツであり、父であり 男であり、少年でもある谷好通の大作、名作、迷作コラム。
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