2006年03月10日(金曜日)
1359.梅畑、梅の花満開
今年の冬は記録的に寒かったらしく、
しかも、このところ一挙に暖かくなったので、
梅の花がいっぺんに咲いてしまったが、開花期間が短いと聞いた。
梅の花が散って、今度は桜の花が咲けば
いよいよ本格的な春の到来である。
春の主役、桜も華やかで素晴らしいが、その前座の梅の花も美しい。
この梅の木は、梅の実を取るための梅畑の木だ。
しかし、梅の実の収穫時期になっても決して収穫されることはない。
この住宅地の真ん中にある梅畑は、税金対策のための畑なのだ。
宅地にしておくと固定資産税が高くなるので、
税金が安い畑という名目にしてある。
しかし、名目にしてあるだけでは税務署が認めないので、
実際に梅の木を植え、梅の実を収穫するための畑なのだという形にしてあるのだ。
税金対策のための梅畑なので、
目的であるはずの梅の実は収穫されることなく、
実が付いてもそのまま熟し、熟しきって、やがて腐っていく。
たまにムクドリやヒヨドリあるいはカラスが実をつついて食べていることもあるが、
ほとんどの梅の実は大地に落ちて、腐り、土に戻っていく。
税金対策での収穫なき畑があることは、
誰でも知っていることであり、世の中の暗黙の了解だが、
一軒家が欲しいサラリーマンには
「こんな不正がまかり通っているから宅地が足らなくて、土地の値段が高いのだ。」
と、怒りの対象になる。
しかし、土地を持っている元お百姓さんにとって見れば、
息子たちは皆サラリーマンとなり後継者もいず、
自分も年老いて農業を続けるわけには行かない。
土地を手放せばお金は入り、
銀行にでも預けておけば、わずかであっても金利が付き、
少しは生活の足しにはなるが、
土地を売った
余分なお金は、
お金の形をしているからには、やっぱり使いたくなる欲望を刺激する。
自分は農業をやってきたので、質素な生活に慣れており、
別に贅沢をしたいわけでもないので、
そんな欲望など気にすることでもないが、
苦労知らずで育ってきた子供たちには、
せっかくお金があるのだから贅沢をしたいと、多いにその欲望に掻きたてられる。
労せずして得たお金は、罪作りな物で、
苦労して働く意欲を削ぎ、意味のない浪費を重ねることが多いものだ。
余分な金は、自分の子供達をダメにする。
自分の仲間たちの家族を見てきて、そんなことを、いやというほど知っている。
労せずして得た莫大なお金は、子供達をダメにする。
畑を土地のままで持っていれば、そんな不幸もない。
かといって、農業を完全にやめれば、その畑は“宅地”と見なされ、
高い固定資産税がかかる。
金は預けていれば少なくとも金利が付くが、
土地は、固定資産税というコストがかかるのだ。
資産を土地の形で持っていることは、決して得なことではないのだ。
しかし、家族をダメにするような、余分なお金を得ることもしたくない。
だから、出来るだけコストの低い、つまり固定資産税の安い農地としておく。
でも体がいうことを聞かないので、
一番手間のかからない「梅」を植える事にした。
梅の実を収穫する梅農家となるわけだが、梅の実などたいした収入にはならない。
だから収穫しないのか、
それだけではないような気がする。
せっかく収穫しても、捨てるような値段でしか売れないならば、
ムクドリやヒヨドリが少しでも食べてくれれば、
その方が嬉しいし、
やがて梅の実が地に落ちて土に戻っていく方が納得できるような気がする。
そんな感じの人もいるのではないだろうか。
その証拠に、下草がきれい刈られ、
美しい梅の花が咲いた実にきれいな梅畑になっている。
近所の美しい梅畑の花を見て、そんなことを空想した。