2006年03月07日(火曜日)
1356.マネージャー次第
アイ・タック技研の所長会議、全体会議など大人数が集まる会議では、
刈谷市産業振興センターというJR刈谷駅の隣にある設備を使っている。
公の設備は堅苦しいところもあるが、設備が新しいし、何よりも安い。
30~40人入れる会議場で、一日4,400円くらい。
もう何年もこの施設を利用している。
会議は朝9時から午後6時くらいまで開かれるのが通常なので、
当然、途中で昼食を食べる事になるのだが、困ったことがあった。
この施設の周辺には食事をする所が少ない。
10分から15分ほど歩けば何軒かあるが、往復で20分以上使ったのでは、
ゆっくり昼食が取れなくなってしまう。
そこで、施設内の食堂で食べることが多くなるのだが、
この食堂が、注文の食事を出すのが実に遅かったのだ。
わずか40席程度の食堂なのだが、
ウェイトレスさんが注文を取りに来るまで10分以上、
注文してから出てくるまでに、運が悪いと30分以上かかることもあった。
これはオーバーな話ではなく、
本当に40分以上待ったあげくに大急ぎで15分で食べてしまう。
なんて事がよくあったのだ。
ウェイトレスさんも、厨房の中の調理の人も、
役場の職員の人なのか、いかにも素人っぽくて、
見ていても、いかにも要領が悪いのが手に取るように分かる。
午後の会議の開始時間が迫ってくると、
「あの~、時間がないんですけど、さっき頼んだやつまだ時間かかりますか?」
と、聞けば、
ウェイトレスの女性は、コソコソっと厨房の中の人に話しかけ、
二人でこちらを見て、
いかにも、一生懸命やっているのに文句を言われたというような表情をする。
彼女たちが被害者で、私たちが加害者の役回りである。
腹は減って、待たされて、時間はなくなってきて、
挙句の果てに加害者扱いされるのは、
“情けない”を通り越して、悲しくなってきてしまったものだ。
しかし、ここで怒れば、ますます加害者らしくなってしまう。
あきらめるか、しばらく歩き外に出て食事をするか、
選択を迫られるところであるが、
足が痛いときなど、やはり外に出たくなくて、じっと耐えるしかなかった。
午前の会議での緊張感のあと、
昼食の忍耐をしのいで、午後の会議に臨むのは苦痛であった。(多少オーバー)
それが、
半年ほど前、
この食堂が劇的に変わった。
食堂の運営が、民間の地元レストランに委託されたのだ。
そのマネージャーがすごい。
客席の間を滑るように回り、笑顔と共に注文を取り、配膳をし、
楽しそうにお客に話しかけていく。
席に座ればたちまち水が運ばれ、
笑顔で注文が取られ、
一緒に座ったスタッフと一つの話題が終わるか終わらぬうちに、
出来たての料理が運ばれる。
まさに、あっという間だ。
そのすべてを、このマネージャー一人でやりこなしてしまうのだ。
お見事って感じ。
耳にはインカムをつけているが、
インカムで厨房と話をしている様子はない。
きっとこのインカムは、厨房から「○▲◎できました~。」と報告を受けているだけで、
厨房への指示は、厨房のカウンターを覗いたときにしているのだろう。
お客様と接している時は、お客様と話をする。
耳のインカムは報告を聞くだけ。
そして厨房への指示は、スタッフの顔を見て直接する。
実に合理的だ。
自分からの意思は、お客様へもスタッフへも直接顔を見て伝え、
厨房の状況は耳のインカムで把握する。
お客様への気配りと、厨房への気配りが両立されている。
厨房のスタッフの動きもいい。
受注の指示を受けてから2分以内に料理が出てくる。
と言っても、これはプロとして当たり前のことかもしれないのであって、
ランチは3種類のセットしかないのだ。
準備さえきちんとしておけば、温かい料理を速やかに出せるのだろう。
運営者が変わってから、今までが嘘のように明るい食堂になった。
今まではテーブルに着いているほとんどの人が、
なかなか出てこない料理に、イライラしていたのが、
今ではどのテーブルでも、みんながおいしい料理を食べていて、
明るい会話が聞こえてくる。
本当に今までが信じられないほど明るい食堂になったのだ。
プロのマネージャーが、
当たり前のことを当たり前のように、
かつ素晴らしく滑らかに食堂を仕切り始めたら、
あっという間にお客さんがいっぱい入って、いつも満席。
暗くイライラした空気であったのが、明るい楽しい空間になった。
このマネージャー、本当の意味のプロである。
自分の会社に欲しいと、本気で思った。