2019年02月16日(土曜日)
2.16.事業承継をする意味
どんな事業であっても
いずれは事業承継をしなければならない第一の意味は、
その事業を創った社長がいずれは死ぬので。
しかも、死んでからでは何かと遅いので、
死にそうになる前に、
まだ当分死にそうにない若い者に事業のかじ取りを任せることになる。
単純に言えばそれだけのことだ。
だから、創業者が”不死身”ならば、
事業承継することなく
本人がミイラのごとく朽ちてもなお社長にしがみついていればいい。
それはそれでいいのかもしれないが、
時代は刻々と変化して行くので、
ミイラの干乾びた脳みそでは世の中の価値の変化に着いていくことは難しく、
その事業が世の中に提供する「価値」が陳腐化して、
それに従って得られる報酬も減って、採算が合わず、
事業として成り立たなくなり、
事業承継するまでもなくその事業は自滅して行く。
社長がいかに元気であろうと
適時に事業承継する意味はある。
社内的に言えば、
現状の社長が、社内の人達の一人一人に対して下した評価は、
そうなかなか変わるものではなく、
運の悪いある人にとっては、
たまたま悪いタイミングで悪い印象を植え付けてしまった場合、
本人が知らない理由で、ずっと悪い待遇が続くのかもしれないが、
それが、
事業承継によって社長が変わると
不当に悪い印象に縛られていた人にとってはラッキーで、
改めて正当な評価と印象を築けるいい機会になる。
それは社内に関わらず、社外の業者にとっても同様なチャンスになる。
逆に、
今の社長に対して、長年にわたって築いた信頼が、
社長が変わったことによって、
長年の歴史が一度オールクリアとなって
すべての人と同じスタートラインに並んでしまうこともある。
しかし、そのことによって無かった緊張が発生して
それはそれで意味はあるのかもしれない。
いずれにしても、
いい事についても、悪いことについても、
社長の意識の中に出来上がっている印象と評価を、
社長が変わることによって、みんなが同じスタートラインに付けることは、
全ての事が時間によって変化して行く事実において、
ある意味において『公平』なのかもしれない。
しかし、よく事業継承の失敗例として言われる大塚家具の場合、
新しい社長が、前の社長の造り上げてきた価値観を全否定して、
自分の持っている前社長への反感を前提にした新しい価値観で、
会社を造り変えようとすると、
組織が困惑するばかりでなく、肝心なお客様が感情的に困惑して、
反発して、買わないという選択で
売上げが落ち、業績が著しく低迷しても、
なお新しい社長は自分の価値観を信じて、さらに変革の道を突き進めば、
その価値観にすり寄ってくる勢力が「味方」としてへばりつき、
いずれはその勢力に吸い取られることになるのではないか。
大塚家具が中国系のファンドなどから間接的に資本を受け入れたと言い、
中国の富裕層を新たなマーケットとして開拓するという。
そんな事をテレビの取材番組が言っていて、
背筋が寒くなる思いをした。
娘の男親に対する反発は、
「お父さん、汚いっ。」から一歩も出ていないのではないか。
そんな単純な嫌悪感から、大きな会社が揺らぐ大事に至る様子は、
見るに忍びないものがある。
私の偏見かもしれず、間違っているのかもしれないが、
感情的にそんなことを思いました。
“反発”を原点とした価値観は、歪みやすいし、付け込まれやすい。
価値観は、
お客様の喜びと仲間達の喜びを原点とすれば簡単で、
決して揺らぐことなく、付け込まれようもない。
そこがぐらつかなければ、
適時に行われる事業継承は、良いことが圧倒的に多い。
と、思います。