2005年12月29日(木曜日)
1316.『メイヨウ チャン』
北京からの帰りの飛行機の中。
今回の中国出張は、それほどハードなスケジュールではなかったが、
北京の寒さが体に沁みたのだろうか、
なぜか、体の芯が疲れたような気がする。
同行の酒部部長も「今回初めて帰りたいと思いました。」と言っている。
もっとも彼の場合は、一日目の深酒が応えているからと言っていたが。
中国への出張の回数が重なるほど、
日本の文化と、中国の文化の違いの深さを感じるようになった。
中国人であるが、日本の生活が長く、日本の会社に所属する“王(ワン)さん”が言う。
「中国人は、本当に信用できない。
とにかくお金を払わないんですよ。
三日前に『お金をすぐ振り込むから急いで商品を送ってくれ。』と言うので、
急いで商品を送ると、ちっともお金を振り込んでこない。
仕方なく早く払ってくれるように電話をすると
必ず『メイヨウ チァン(お金がない)』とくる。
もうこれの繰り返しです。
相手がどんなにしっかりした会社だと思っても、信用できる人だと思っても、
お金を払う段になると必ず『メイヨウ チァン(お金がない)』となるんです。
中国でのビジネスはこの『メイヨウ チァン』との闘いで、
中国人である私でさえ、こんなに苦労しているですから、
日本の人や会社がすごく苦労しているのをよく知っていますが、本当に同情します。」
中国では、
お金を払わないことが利口な事と言うか、
金を払ってもいないのに、商品を渡す方が悪いと言うか、
とにかく「払わないこと=悪いこと」ではないことは間違いないようだ。
続けて、王さんが言う。
「中国は膨大な人口と購買力を持っているのだから、
これで、安心してビジネスが出来る“信用”があったら、
もっともっとものすごいスピードで発展しているはずです。
中国では、みんなが自分勝手なことをやって、平気で裏切ることをやっているから、
誰もが、誰をも信用していない。
だから、ちっともビジネスが進まなくて、
こんな程度の発展しか出来ないでいるのですが、
これが、日本みたいに信用できる相手ばかりだったら
今の中国のGDPより何倍かの大きさになっているはずなんです。
でも、逆に中国はこんなことをやっているから日本は助かっているんですよ。
日本の経済が今もいいのは、
中国人が、外国からも、中国人同士でも信用できないからなんですよ。」
なるほどなあ、と思った。
そんな見方もあったのだ。
日本の立派な会社に所属し、
“信用”ということについて、日本人以上に大切にしている信頼すべき“王さん”
飛行機の中で、後ろの席の日本人のおじさんが、
「もう十何年かも家族ぐるみで付き合っていて信頼していた中国人に、
お金を貸していたのだが、私の会社の景気が悪くなったら、
そっぽを向いてしまった。
私が無一文になったのに(から?)『メイヨウ チァン』で、お金を返してくれない。
中国はもう何もかも信用できない。」
と、大きな声で話していた。
中国でのビジネスが『メイヨウ チァン(お金がない)』を基本に回っているとしたら、
国際的に見れば文化的レベルが低いということであって、
そう簡単に是正できることではない。
しかし、少なくとも
中国人の一人一人は愛すべき人たちであり、
一人一人が信用できないわけでもなく、
中国には大好きな人が何百人もいる。
特に我が上海事務所の二人の中国人女性スタッフ達は仕事熱心であり、かわいい。
では嫌いな人は、と思い浮かべてみても、
一人も思いつかないのが不思議なくらいだが、
これが一旦外に出ると、
道路での自分勝手で乱暴な運転であり、
癇に障るクラクションであり、
金持ち風の格好をした中国人の威張り散らした態度であり、
道路につばを吐きまくるオッサンであり、
甲高い声で相手をののしる中国語であり、
イミグレーションの列に平気で割り込むクソバカヤロウであり、
ビジネスでのうさんくさい矛盾だらけの話がいっぱいであり、
少なくとも、
この国が、自分のことを思い遣ってくれるような国ではない事に、
異文化を持った外国人である私は、芯から疲れるのだろう。
そういう事を解った上で、
これからもっともっと深く中国に関わっていかねばならないし、
関わっていく限り、そんなことに
いちいちストレスを感じなくてもいい精神構造を持つ事にもなるのだろうと思った。
北京の大会社と、日本の大会社との
大切な共同作業に大きな貢献をしたアイ・タック技研上海の“リリアン”ことチョウさん。
彼女の仕事に対する一生懸命さは、評判である。
同じく、ユイさん。
リリアンが研修生に対して優しくする立場なら、
このユイさんは、非常に厳しいトレーニングをする事で仕事を分担しているらしい。
普段はとっても可愛いが、
研修生にとってはとっても怖いユイさん。
そして、彼女たちの日本のボス、酒部。
帰りの飛行機の中、疲れたのかぐっすり眠っている。
これで今年の出張が終わった。
後は、日本の年末を頑張る仲間たちの活躍を見に行かなくては。