谷 好通コラム

2005年11月10日(木曜日)

1283.う~ん、なるほど

ある経済研究所から送られてくるメールマガジンに、
面白い記事があった。

 

「今年2月に開港した中部国際空港「セントレア」は、
空港建物内で結婚式を挙げられるようにしたり、
展望風呂やエステサロンも併設したりして、
年間売上高見通し500億円の実に半分を非航空部門で得るよう計画していま
す。
その背景には、航空会社に請求する空港使用料を引き下げられるようにして、
発着便を増やしたいという思惑もあります。」

 

中部国際空港、通商「セントレア」は、いつも人がいっぱいで、
それも、旗を持った団体さんが、たくさん空港内を闊歩している。
みんな荷物はほとんど持っていない。
「空港見物」の団体さんなのだ。

 

空港内に結婚式を挙げられる施設があるとか、
エステサロンがあることまでは、私は知らなかったが、
地元で有名な食べ物屋さんが
テナントとして入っている「ちょうちん横丁」という施設が空港ビルの4階にあって、
いつも行列が出来るほどの賑わいを示している。
団体さんは、そこに食事をしに来たり、
それこそ「風呂」に入りに来ているようだ。

 

だから、私たち旅客が空港で食事をすることは、時間の制限があることで、
見物に来ている人たちと同じように食堂に行列を作ることは出来ず、
事実上不可能となっている。
私たちにとっては迷惑なことであり、いつも腹立たしく思っていた。

 

しかし、先にあげた記事を読むと、
な~るほど、と思ってしまったのだ。

 

?展望台からの飛行機の発着の見物に加えて、
名物の食堂での食事とか、風呂に入って飛行機見物というアトラクションを作り、
飛行機の旅客とは関係のない観光客を集めて、
飛行場の全収入の半分までを賄ってしまう。

 

?それによって空港の着陸料を低くし、飛行機の発着便を誘致する。

 

?発着便が多くなればなるほど、便利な空港になり、
国際線と国内線を連絡するハブ空港的な役割を担う事になる。
主要国内便とローカル国内便とのハブの役割もある。

 

?ハブ的空港の役割を果たすようになると、
国際便も国内便も、ますます発着便が多くなる。

 

?便数が増えると、着陸料の収入が増える。

 

?便数が増えると、旅客が増えることにもなり、
空港の観光客目当ての施設の利用客までが増える。

 

?空港内施設の利用客が増えれば、テナント料も増える。

 

空港収入の半分までを、空港内施設で稼ごうという奇想天外な発想は、
うまく行けば、日本の各地で雨後の竹の子のように出来てきた多くの空港の中で、
勝ち残る空港となり得る成功戦略となるのだ。
なるほどである。

 

この空港は、世界のトヨタが深く関わって出来た空港だ。
トヨタ商法がこの戦略を作り上げた立役者であることは疑いのないことだ。

 

ただ、中部国際空港も、やはり本来的には空港でしかない。
そこに名物食堂を揃え、
風呂に入りながら、発着する飛行機見物ができるといったアトラクションが、
旅客とは無縁の見物客を、いつまでつなぎとめることが出来るのであろうか。
見物客は物珍しさに集まるものだ。
私のように飛行機を飽きずに見ている人間などそんなにいるものではない。
物珍しさは、リピート客を作るものではない。
見物客が何度も何度も飛行機を見に来るとは思えない。
たとえ、それが風呂に入りながらというアトラクション付きでもだ。
空港はディズニーランドではない。

 

いずれにしても、この中部国際空港の戦略は面白い。実に面白い。
飛行場に当たり前のようにある飛行機の発着をアトラクション代わりに使って、
飛行場本来の着陸料に競争力を持たせようという発想は、
実に面白い。

 

 

ある地域のカーディーラーが、
土日に、一生懸命、洗車を店頭でやっていると聞いた。
ディーラーにやってきたお客の車を無料で洗っているのだという。
目的は、車を洗っている間、そのお客と車の商談をじっくり出来るからだという。
と同時に、客の滞在時間を長くする事によって、
店内の繁盛感を出し、
客が客を呼ぶ式で、来場客を増やしているのだそうだ。
ディーラーにおける集客の成功例として注目をされていると聞いた。
中部国際空港の戦略に、部分的にだが、似ている。
しかし、思う。
このディーラーの洗車の目的は、車を売るための商談である。
お客様の車をキレイにすることが目的ではない。
車を売るための一つの手段である。
だから、お客を満足させるような洗車は出来ていないだろうと想像する。
商談が目的だから、出来るだけゆっくりと洗うようにしているとも聞いた。

 

この企画は成功するだろうか、続くのだろうか。
私には否定的にしか思えない。
ここで車を洗って欲しいために、
毎回一時間も新車購入の商談をしたくはないし、
ディーラーの方も車を洗ってもらいたいが為だけに、
しょっちゅう来られてもディーラーも困るであろう。
あるいは、商談で新車を買ってしまったら、
そのあとは、このディーラーに洗車のために新車で来店されても、
何も商談することがないだろう。

 

 

また、あるドライブショップで、
来店を促すために、連続洗車機を設置して、
男性客には格安で、女性客には無料で開放したそうだ。
洗車したさに、ドライブショップに来場して、
洗車のついでに、何か一つでも商品を買ってくれれば儲け物というわけだ。

 

結果、この洗車機は、ほとんど使われなかったそうで、
早々に撤去された。

 

ここの洗車は、ショップの中の商品を売ることが目的であった。
利用客の車をキレイにすることが目的ではない。
だから、タダであり、
ドライブショップによく来る車好きの人を満足させるような洗車ではなかった。
だから、誰もそれを目的には来なかったのらしい。

 

 

今、快洗隊・相模原店が急激に売り上げを上昇させている。
なんと、この11月、
常勝の刈谷店を上回る洗車売り上げを実現しつつあるというのだ。
一位、相模原店
二位、刈谷店
三位、北神戸店

 

北神戸店が、知立店、安城店、鳴海店、岡崎店をぶち抜いて、
三位にいるのも驚きだが、
今まで一度も二位に下がったことのない刈谷店を、
相模原店が上回っていることは、びっくり仰天のことである。

 

ドライブショップに出入りする車好きたちが、
快洗隊の洗車を、自分の車をキレイにする目的で利用している。
車好きたちが支持する「キレイ」が快洗隊に存在したから、快洗隊を利用している。
快洗隊の洗車は、お客様の車をキレイにすることが目的だから。
ここに来て、快洗隊を支持する人が急激に増えてきたのだろう。
これはすごいことである。

 

サービスは、そのサービスを受ける人のためを目的にしていなければ、
価値のないもののようだ。
そのサービスを別の目的のために設定した手段とした時、
サービスの意味を失って、顧客からそっぽを向かれる。
そういうもののようだ。

 

やるなら、本格的にやらなければ、
誰からも相手にされない。

 

SSでの洗車も、やるなら本気でやらなければ。

 

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    代表取締役会長兼CEO

    谷 好通

    キーパーのルーツであり、父であり 男であり、少年でもある谷好通の大作、名作、迷作コラム。
    読めば読むほど元気になること間違いなし。・・・の、はず。

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