谷 好通コラム

2005年07月13日(水曜日)

1210.忘れ物病重症なり

今は、新幹線で神戸に向かっている。
酒部君と一緒だ。

 

今回は神戸に一件の用件があるだけで、
用件そのものは重要なものであるが、
往復を入れても6時間で済む出張であり、
少し歩く事になるので、
いつもの出張セットが入っている大き目のカバンを持っていくと負担であり、
その必要は無いと思った。
だから、小さなセカンドバック一つに最低限必要なものを入れ、
いつもの大きなカバンは車の中に残して、
駅の待ち合わせ場所に行った。

 

※私は出張の長さによってカバンを変えることをしない。
カバンの荷物を入れ替える事によって忘れ物が発生するのがいやだからだ。
いつも2泊3日ぐらいの出張が出来る用意をカバンの中に入れて、
出張がなくても、常時、同じカバンを持ち歩いている。

 

ところが、5分前に構内の待ち合わせ場所に着いて、
落ち着いて考えたら、忘れ物が3つぐらい思い出したのだ。
それで慌てて、駐車場まで戻り、
結局、いつものセットが入っている大きなカバンを取って、待ち合わせ場所に戻った。

 

10分弱の遅刻になる。
毎度のことながら自分の忘れ物の多さには嫌になる。

 

私の忘れ物は、ますますエスカレートしている。
携帯電話、カバン、時計、手帳、
これらのいずれか、あるいは複数を、毎日必ずどこかに置き忘れて、
「あれ~~っ手帳がないよ」とか、「携帯、どっかいっちゃった」と、騒いでいる。
みんなも慣れたもので、
私が携帯を失くしたと言って騒ぎ出すと、
さっさと私の携帯の番号をダイヤルして、どこかでベルが鳴る音に耳を澄ます。
あるいは手帳とか場合は、
「え~っと会議室で手帳を一回出してたのを見たから、そのあとだな~」と、
みんなが記憶をたどって私の手帳の捜索が始まる。

 

私は忘れ物の超常習犯、みんなにとっては迷惑千万なものであり、
また、日時用茶飯事の“いつものこと”になっている。

 

なぜ、私はこんなに忘れ物が多いのであろう。
もちろん私の不注意でしかないのだろうが、
とにかく私の頭はいつも何か仕事のことを考えていて、
考え始めるとそれに没頭する。
だから意識が持ち物から外れてしまって、
そのまま置いた所へ忘れてきてしまうのだ。
いつも同じパターンである。

 

本当はそんな風に仕事の事に意識が没頭しても、
身の回りの持ち物のことにも注意が残っているのが普通なのであろうが、
そこが、私の能力の限界に違いない。

 

私の頭と集中力はその程度なのだ。

 

少しぐらい余計に仕事が出来たとしても、
一つの事に対する集中力と、発想の柔軟性が少々あったにしても、
それを発揮すると、
決まって忘れ物が発生するということは、
私の能力がそのレベルであるという事に他ならない。

 

人の能力には限界がある。
一つ一つの仕事について言えば、自分が誰にも負けないつもりがあっても、
その全部を一人でやってしまうことは不可能であって、
やったとしても、効率が悪いだろうし、みんな中途半端で終わってしまうに違いない。
仕事の対象がそれなりに大きくなってくると、
一人では何も出来ないということなのだろう。
自分以外の複数の人に仕事を分担してもらって、みんなでやっていくしかない。
ビジネスの言葉で言えば、
権限委譲を速やかに行なわねばならないという事になるわけだ。

 

自分がビジネス全体を総体的に考え、組み立て、
みんながそれを分担して考え、実行していく。

 

何週間か前にスケジュールを書いた手帳をタクシーの中に忘れてきてしまい、
そのまま出てこなかったことがある。
幸いにも手帳に書いてあったはずの予定に、
穴を開けてしまう事故は発生してこなかったが、とうとう今日、事故が発生した。
今日、7月13日にアポイントを取ってあったのに、
それを私は解らないまま神戸に来ていて、
会社に訪問された相手を、すっぽかしてしまった。
申し訳ないと同時に、
自分の物理的な限界をまた痛感させられた失敗であった。

 

ここ何年か、自分が抱え込んでいた仕事を人に委ねるようになって来た。
みんなの力を借りるようになってきた、と言ったほうがいいのかもしれない。
そうする事によって、
必ずしも自分の思い通りに物事が進むわけではないが、
自分が直接携わるよりも何十倍もの力で推し進められるようになっている。
ペースも速い。

 

一から十まで自分の思い通りにならないと気が済まないなら、
自分一人でのんびりとやって行けばいいのかもしれないが、
しかし、“自分の思い通り”というものに大した意味がない事に気がついた時、
あるいは、ふっ切ることが出来た時、
仕事を人に委ねることが出来
みんなの力を借り、知恵を借りることが出来るようになってきたと思う。

 

 

人からもらった意見を、自分の中にストレートに落とすことが出来、
それを消化することが出来る事が必要なのだ。
そうする事によって自分の力が何倍にもなる。
それは信じられないほどの効果があるものだ。

 

問題は、物事を自分の思い通りにしたいという誰にもある自分の中の欲求を、
どうふっ切ることが出来るかということ。

 

そこが難しいところだ。

 

たくさんの事を一度に同時進行で進め、
しかも、一つ一つの事に最大限の集中力を持って進めている時、
身の回りに神経が行かなくなって、
重症の忘れ物グセが連発して、
自分が情けないほどに
自分の頭の処理能力の限界を思う時、
何も自分の思い通りには行かないことを、何度も何度も繰り返し思い知る。

 

※昨日は製品開発会議。
この写真の意味分りますか?

 

 

蓮の花には、不思議な美しさがあります。
先日の京都にて

 

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    代表取締役会長兼CEO

    谷 好通

    キーパーのルーツであり、父であり 男であり、少年でもある谷好通の大作、名作、迷作コラム。
    読めば読むほど元気になること間違いなし。・・・の、はず。

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