谷 好通コラム

2004年12月30日(木曜日)

1086.学習能力と限界点

「うちの洗車は、97%、快洗隊のパクリです。」とは、
熊本のアイビー石油さん
馬場社長の言葉である。
大勢の方々を前にしての講演で、こう言ってしまう。

 

今は福岡の那珂川SS、空港前SSで快洗隊のFCに入会していただいているが、
それまでの白藤SSと松橋SSは、
店長はじめ何人かのスタッフが刈谷快洗隊に泊りがけで勉強に来られ
快洗隊のエキスを、ご自分たちの中に吸収され
SSの中に展開されている。

 

「97%パクリです。」とは、馬場社長独特の言い回しであるが、
手洗い洗車の技術、キーパー、室内清掃などの洗車メニュー、
それを提供するための技術、道具、ケミカル、
すべて快洗隊と同じようにして、
アイビー石油独特の接客とCSを加味し、
快洗隊のような洗車販売をしている。

 

メニュー表も、快洗隊のものそっくりである。
アイビーさんのスタッフが、
快洗隊と同じように洗車などを作業して写真に写っている。
私はこれを見て、うれしかった。
「馬場社長が、快洗隊をあり方を認めてくれている。しかも、こりゃ相当に好きだ。」

 

アイビー石油さんの店で、
私がこの“快洗隊もどきメニュー”を見ているのを見て、
馬場さんは、
「ありゃ~見つかっちゃった。
見られるんじゃないかと、ドキドキしていましたよ。」
とおっしゃっていたが、
これは、そう言っているだけである。
むしろ、私が嬉しがることを直感的にご存知であったはずだ。

 

馬場さんは、独特の価値観を持っていて、
ガソリンスタンドの運営について独自の世界を造り上げ、
多分、日本一のCSと、接客と、日本一の高収益店舗を実現しており、
その実績は信じがたいほど高い。

 

何年か前の二軒だけのスタンドであった時ですら、
実質的に億を越す経常利益を出す。そんな会社がどこにあっただろうか。
その奇跡のような店舗運営は全国的に有名となり、
絶妙な、かつ熱い馬場さんの語り口もあって、
今では、多方面から講演依頼で日本国中引っ張りだこである。

 

そんな大勢を前にした講演の中で、馬場さんは
「うちの洗車は、97%快洗隊のパクリです。」と平気で言ってしまうのだ。

 

アイビー石油さんが、まだ、白藤SSと松橋SSの2軒だったころの事。
馬場さんは、洗車に関しては、快洗隊の考え方と方法論が正しいと思った。
だから、素直に取り入れようとした。
そして、自分が何故そう判断したのか、私にしっかりと話した上で、
自分も快洗隊に来て、所長さんたちも、スタッフも
愛知までやってきて、集中して吸収して行った。
その真剣さは見事なものであった。
そして、
「今の店、白藤SSも、松橋SSも。
快洗隊をやる前提で造ってないので、
快洗隊をそのままやることは無理だと思うのです。
だから、“もどき”で行くことにしました。“パクラせてもらって”いいですか。」
そう真剣に言われれば、断る理由は無い。

そんなことで、白藤SSと松橋SSは快洗隊のパクリとなり
それ以後の新SS、那珂川SSと空港通りSSは、快洗隊のFC店として活躍している。

 

彼の凄いところは、
確かな価値観と、
既成概念にとらわれない柔軟さと、
正しい事を正しいと言える勇気と、
圧倒的な実行力。
そして、学習能力である。

 

学習能力とは、
“受け入れる力”に他ならない。
馬場さん独特の言い回しで言えば「パクル」こと。

 

つまり、
自分以外の人が造ったものを見て、
あるいは、自分以外の人の言うことを聞いて、
“自分の為のプライド”というフィルターを通さずに、
ストレートに自分の価値観の中に落とし込み、
白いスクリーンに映し出した上で、
いい物とそうでない物を判断して、
いいと思った物を、何のためらいも無く、自分の中に受け入れてしまう力である。

 

しかし、その学習能力とは、
その本人の理解力とか、判断力とか持っている元々の能力によって
限界があるものだが、
それとは別にもう一つ、
落とし穴的な限界点がある。

 

それは、
「解ってしまった時」
それが落とし穴的な限界点。
学習すべき事柄についてある程度の知識と経験を積むと、
ある時点で突然「全部解ってしまう」のである。

 

たとえば、
[☆]という一つの物事について、87項目の要素があったとする。
その要素について一つ一つ理解していくわけだが、
最初はバラバラであり、その一つ一つに納得し学習していく。
たとえば、
[A S D F G H J K L ; ] と、
ところが、10の要素まで学習し理解した時、
今までバラバラに思えていた10の要素が突然リンクして、
[☆]の全体像が、その人の頭の中に見えてしまうのだ。

 

「あ、これはキーボードの下から三段目の配列だ、
な~んだ解った。[☆]って、パソコンのキーボードのことなんだ。
パソコンだったら自分も知っている。ああ、解った解った。」

 

たしかに[A S D F G H J K L ; ]とは、
パソコンのキーボードの下から三段目の左二つ目のキーから、
右に10個分のキーの英数文字の配列である。
しかし、だからといって[☆]がパソコンのキーボードであるとは限らない。

 

[☆]は全部で87個の要素があるのであって、
その中のたまたま10の要素がパソコンのキーボードの配列の一部であるわけで、
ひょっとしたらパソコンをテーマにした宣伝広告のことかもしれないし、
パソコン教室がテーマかもしれない。
あるいは、「ワープロ」かもしれない。
全部で87の要素から形成されている[☆]が、
10の要素においてパソコンのキーボードのキー配列の一部であったとしても、
それがパソコンのキーボードそのものであるのかどうかは、
まったく判らないのである。

 

しかし、たまたま10の要素がパソコンのキーボードの配列である事に気がついて、
それまでの経験と照らし合わせ、
「[☆]とは、パソコンのキーボードである。」とすれば、
その人にとってのつじつまが合うので、
「[☆]とは、パソコンのキーボードである。」と結論を早々に出し、
その後に何が来るのかを“見なくなり”、“聞かなく”なってしまう。

 

これが、学習能力の落とし穴的限界点だ。
私は、これを「早解りの浅憶え」と呼んでいる。

 

そのキーボードに新しい工夫があったり、
10個のキー以外に、思いもよらぬ工夫の要素があったとしても、
この人は、
[☆]については、10個の要素を見ただけで、
全部解ったような気になってしまったので、
“その先”を、「見ない」「聞かない」「知ろうとしない」。
だから、新しいことを知ることは出来なくなってしまっている。

 

知るべきことが、11個目の要素から出てきたとしても、
それを学ぶことは決してないのだ。
この人の限界点は、10個目までの要素を知るところまでである。

 

 

新入社員の研修などでも、
色々なことを学習していく中で、一生懸命教えようとしても、
「あ-、そのことでしたらもう習いました。分かっていますから大丈夫です。」と、
そのことについてもっと深く学ぶことをしない人がいる。

 

あるいは、
大切な事柄をしっかりとインプットしようと繰り返し言ったり、やらせようとすると、
「それは、もう出来ますから大丈夫です。」と、
繰り返すことを嫌う人がいる。

 

あるいは、もっと深刻な場合、
途中まで知って、解ってしまった人は、
学習するどころか、
それまでの自分の経験から
「それよりも、私の知っているように、こうした方がいい」と、
自分でバイアスを掛け、とんでもない方向に結論を持って行ってしまう場合がある。

 

学習の限界点とは、
より多くの経験を積んだ人ほど、
早く解ってしまって、かえって低くなってくる傾向がある。

 

学習とは、
学ぶべきと思ったことを、とりあえず一度自分の中に取り込んでしまうこと、
あるいは受け入れてしまうことを指すと思う。
つまり、馬場さん流に言えば、
「パクル」ことなのかもしれない。

 

本来ならば、
人は、知れば知るほど、知らないことの多さを知ることにつながるものだ。
そして、実行力があればあるほど、
自分が出来ないことの多さを知ることになるものだ。
知れば知るほど、やればやるほど、自分の無力、無知を知ることになるものだ。

 

解るはずのない時点で、解ってしまう人は、
いや、解ってしまったような気になってしまう人は、
実は、何も解っていない人とほとんど変わりない。

 

学習能力とは、
少ない要素で、解ってしまう能力と思いがちであるが
実は正反対のものであり、
学習能力とは、
実は、知れば知るほど、自分の無知に気が付き、
やればやるほど、自分の無力さを知ることが出来る能力とも言える。

 

だから
我が身の無知、無力を知れば知るほど、
学習能力が高くなっているということも出来る。

 

学習能力の高い人とは、
平気で「知らない」と言える人であり、
自分が成し得た成果についても、「パクリなんですよ」と、平然と言い放ち
笑い飛ばしてしまえる人のことを言うのかもしれない。
こんな人が、これから先も、まだ何でも吸収しきることが出来る人、
つまり、学習能力の高い人なのだろう。

 

自省せねばならない。
我が身を省みて、早解りの驕りがないか、
私自身、真剣に省みなければならない。

 

これは昨日の写真
新横浜駅から新幹線で静岡へ、ホームは帰省客でごった返していた。

 

 

雪が激しく降っていた。

 

 

静岡は、藤枝に行く。
藤枝で、十数年のお付き合いになるアイタックコーポレーションの鈴木さんに会う。
本当に楽しいひとときであった。

 

 

3日ぶりに名古屋に帰ってきた。
名古屋は朝から雨であったそうだが、
すっかり上がって、洗車日和になっているが・・・大晦日の雨の予報が気になる。

 

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    谷 好通

    キーパーのルーツであり、父であり 男であり、少年でもある谷好通の大作、名作、迷作コラム。
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