2004年11月18日(木曜日)
1061.仕組みで売る商売
私にはインターネットについての知識は、あまりない。
ネット上で物を買ったこともほとんどないし、
その便利さを享受しているわけでもない。
そのことをお断りした上で、
インターネット上での商売について、私の感じたことを書いて見る。
「楽天」がプロ野球の新規参入に成功した。
その楽天と競り合ったのもIT関連企業の「ライブドア」
「Yahoo」もダイエーホークスを買収にかかっている。
インターネット関連の会社が立て続けにプロ野球に参入しようとしていて、
その高収益性ぶりがうかがわれる。
今日のテレビで言っていたが、
プロ野球のオーナーとは、
その時代の花形業界が顔を揃えており、
その時代、時代によって、
最も収益性の高い業種がプロ野球のオーナーとして生まれる。
昭和初期ならば映画業界であり、高度成長の時代ならば鉄道関係、
バブルの時代には不動産であり金融関連。
今はIT。
Information technologyに関わる企業が、まさに時代の花形。
恐るべき利益を上げている。
しかも「楽天」なんかの場合、
年商百数十億円なのに資本金が三百数十億円と、
何かに書いてあった。
実際の商売の規模よりも、
投資する人の方が多いということなのだろうか。
これは自己資本率が数百パーセントもあるということなのだろうか?
私はよく知らないのだが、
時代の花形であるIT関連企業に、
凄まじく大きな投資が振り向けられているらしいことは分ります。
多くの投資家が、
楽天が現在大きな収益を上げており、
これから将来に向けて、もっともっと大きな収益を上げていくだろうと予測して、
現在の年商の何倍もの投資がされてくるのだろう。
楽天の商売とは、
ネット上で商品を売りたい人や企業がいっぱい集まっているサイトであり、
そのことをたくさんの人が知っていて、
最も多くの人が、ネット上で商品を買っている市場であること。
だから、
このサイト自体は、別に珍しい仕掛けがあったり、
独特のノウハウがあるわけではないと思うのだが、
一番先にたくさんの売り手が集まって、だから、一番大きな市場になって、
一番有名になってしまったので、
一番たくさんの買い手が集まるようになって、
だから、売り手ももっともっと集まって、それぞれが工夫をして、
より魅力的な市場になる。
最も多くの売り手が集まっているので、
魅力的な商品、買いたい物が豊富に集まっている。
そこに
よりたくさんの買い手が集まり。
だから、より一層たくさんの売り手が集まってくる。
これは一つの自己膨張の好循環にはまっている典型なのだろう。
自己膨張の中で、
一番多くの売り手の数が集まり、
一番多くの商品数が売買されている。
“数”は一番である。
市場としての場所代とか、
販売手数料などの市場の場を提供している者、つまりこの場合「楽天」の収入は、
その単価が他よりも多少なりとも高い。
売り手側からしても、一番たくさんの買い手が来るので良く売れる市場なので、
高くても十分にペイできるのだ。
“単価”も高い。
自己膨張の循環と、
市場としての付加価値が上がることによって、
利益単価が高く×数も最も多い=粗利益は二乗計算で高い。
二乗効果は強い。
この市場から得られる利益は、天井知らずに上がっていくものに見える。
しかも、重要なのは、
この市場には、広大な土地も、巨大な建物も要らず、
ハードとして、ほとんどコストがかかっていないこと。
そして
もっと重要なのは、
いくら来店客が増え、売り上げが上がっても、
市場を主催する側のコストはほとんど増えないということだ。
商品の仕入れも、陳列も、販促も、発送も、集金も、
すべて市場に参加している売り手がやることであって、
市場を主催している楽天としては、
コンピューターの容量を上げて行ったり、色々なシステムを更新したりしていれば、
売り手も、買い手も、自己膨張の循環で増える。
粗利益は二乗効果を持って増加し、
実際の店舗を持っていれば、売り上げが増えれば比例して上がる販売コストも、
ネット上の架空市場の場合は、コンピューターが激しく動くだけであり、
傍観者として眺めていれば良い。
利益は、二乗という恐ろしい勢いで自己膨張し、
しかしコストは、利益に比例しては増えない。
こんなうまい商売はなかろう。
圧倒的な収益構造だ。
この商売のポイントは、“仕組み”を商売としているところ。
商品開発とか、広告活動とか、ベーシックな商売の基本になるものはほとんどない。
他人が商売をする“場”であり、消費者が集まってくる“場”を作って、
他人同士が商品を売買いする仕組みを提供して、
“場”の提供料と、“仕組み”の利用料を稼ぐ仕組みだ。
柳の下の何匹目かのドジョウを狙って、
Web上には、ドンドン新しい市場が開かれ、戦いを挑んでくる。
しかし、最初に有名になって、最初に自己膨張を実現した市場が、
圧倒的に有利。
一番早くからあって、一番大きな市場が、一番知名度も高く、圧倒的に有利なのだ。
インターネット界最大の仕組みを持っているYahooの
Yahoo shoppingですら、なかなか追いつけない。
楽天の独走はしばらく続く。
しかし、
一つの商品に集中して独自性を出した市場があった。
たとえば、ホテル・宿などの予約に特化した「旅の窓」
私たちのような出張族には大変便利なツールとして、みんなが愛用していた。
すべての業種にわたって広く市場を形成していた楽天は、
基本的に“物”の売買であって、
商品の輸送、代金の決済などが必要な物販の仕組みが中心であった。
「旅の窓」は、ホテルの予約に特化したことによって、
物販に必要な仕組みが要らず、予約という独自のノウハウを蓄積して、
この商売についての圧倒的なシェアをつかんでいた。
一極集中で圧倒的なシェアを持った「旅の窓」には、
楽天は、M&A(企業買収)で対抗した。
楽天は、
一つの商売に特化した「旅の窓」に対して、
楽天の市場の中で、同様な市場を開いて対抗しても、
それは二番煎じであり、
二番煎じが、一番に勝とうと思ったら、
割に合わないほどの投資と労力と時間がかかることを知っている。
あるいは、結局勝てないであろう事も知っている。
楽天自体がネット販売では一番であり、
その一番であることの強さを一番よく知っているのだから。
だから、選んだ方法がM&A。
対抗することが難しいのなら、いっそのこと丸ごと買っちまえということ。
とんでもないお金が動いたようで、
よく覚えていないのだが、何十億か、何百億か、
とにかく、「旅の窓」の商売で実際に上がってくる売り上げよりも、
一桁も、二桁も大きな金額でM&Aされたと思った。
物を買ったわけではない。
「旅の窓」という、
インターネット上での、
しかも、一つのジャンルだけで一番になっている“仕組み”を買っただけ。
もちろん、その仕組みを利用している“消費者”と、
その仕組みを使っている“登録業者”、その“知名度”。
加えて、その仕組みを動かしているスタッフの能力。
それらをすべて含んでの“仕組み”を買ったわけだが、
買ったとしても、
どの要素についても、そのまま残るという形のあるものではない。
この先、プイっと横を向いてしまわれれば、
何も残らないものばかりだ。
仕組みの強さと価値をよく知っていて、
市場の強さもよく知っているからこそ出来た
形のない、しかも残るかどうかも分らない“仕組み”への投資である。
商売の成功に付いての一つの鉄則がある。
「買う者が気持ちよく、しかも得をし、」
「売る者が正当な利益を得続けること」
この二つのことが両立する商売であること。
これが成功ビジネスの基本である。
インターネットでの商売も、このことがきちんと成立していれば、
そう簡単に衰退することはない。
これからは
形のない仕組みとしての商売が、
世の中の中心になっていくかもしれない。
どんな風になっていくか私にはさっぱり分らないが、
いずれにしても、業者間で栄枯衰勢があったにしても、
インターネットを媒体とした
仕組みとしての商売が大きくなっていくことは間違いなさそうだ。
そんなこととは別世界のように
私は猫と遊んでいるのが楽しい。