2004年06月16日(水曜日)
976話 張さんの大成功
錦州の空港に着いたのは、午後2時過ぎ
訪問先の会社の社長など幹部の方たちが、
BMWの“X5”を2代連ねて出迎えてくれた。
この“X5”、4.4リットルのV8エンジンの一番高いやつである。
それが2台。
錦州は中国では田舎の部類に入る市である。(それでも人口は300万人)
その街に、このX5はこの2台だけであると同時に
最高のステータスであるのだろう。
X5が2台と、なぜかテレビカメラマンまでいる。
びっくりした。
飛行場から工場までは20分ほどのところにある。
道は広い。
片側ゆったり3車線+自転車車線って感じだ。
道路が立派な割には車の量は少ない。
前に行くのが、張社長が乗ったX5、それに先導されて私達が乗ったX5が行くのだ。
工場に着いたら、またびっくり
今度はビルの入り口にずらっとスタッフの人達が整列して待っていたのだ。
歓迎のセレモニーらしい。
こんなの初めてで、ものすごく照れる。
(本当にメチャクチャ照れた(^_^;))
今度は、この会社の案内ということでAVルームのような部屋に案内される。
パワーポイントで会社の歴史から、考え方、将来の計画など
映像を使って大変分かりやすく説明していただいた。
なかなかの設備である。
この会社、正式名「錦州奥星越秀汽車服務有限責任公司」は、
(とても長いので奥星越秀さんと書く)
8年前に
社長の張さんと奥さんの二人で
ちっぽけな「洗車屋」を始めたのが最初であったという。
その洗車屋さんは張さんの努力で大繁盛店になった。
そして儲けて、何年か前に鈑金塗装の大きな工場を建て、これまた大繁盛。
今では、十数台分の鈑金塗装ブースと、修理工場を持ち
保険業も忙しいらしい。
加えて、今、中国で大流行の“自動車倶楽部”を作り
レッカー車を揃えてロードサービスまで繰り広げている。
GPSの仕事もしているようだ(私はGPSのことはよく分からない。)
いずれにしても、
夫婦二人で、裸一貫で始めた洗車屋をここまで大きくしたのは立派である。
この社長の立身出世伝は、錦州のみならず
遼寧省、吉林省、黒龍江省など中国東北部では広く有名なのだそうだ。
そして今回、そんな功績もあって
奥星越秀さんが、政府から自動車のメンテナンスの学校を作るようにと
投資を受けたのだそうだ。
・車の鈑金塗装
・車の修理整備
そして、
・車の美容、つまり洗車とかコーティングとかの類である。
そのようなことを教える総合学校を作ることになっているとおっしゃる。
鈑金をスウェーデンの何とかという会社。
塗装をデュポン社
修理を中国国内の修理に長ける大手会社
そして、洗車からコーティング、
その他色々な車の美容をアイ・タック技研が担当するというのだ。
何ともすごい話。
しかも、この学校の単位を全部とって無事卒業すると、
4年制大学を卒業したのと同じ資格を得られるという。
何とも何ともすごい話。
その学校の建物は、パースを見ると
とんでもなくでっかく立派なものであるが、
中国の「・・・・を作るつもり」「・・・・・を建てるつもり」は、アテにならないことを、
私は今まで何度も経験している。
しかし、
「2ヵ月後の8月に着工する。その時の着工式にはぜひ来て欲しい。」とか、
具体的な話がいっぱいあって、
建設用地を前回李さんと鴨居君が訪問した時に見せてもらっている。
これは本物のようだ。
何ともすごい話ではないか。
私は率直に聞いた。
「汽車美容の会社とかケミカルメーカーはたくさんあるのに、
なぜ、我々アイ・タック技研を選ばれたのですか?」
私は、うまい儲け話とかの類が嫌いだ。
そういう話に乗ってろくなことはないと信じている。
この学校の話は、別に儲け話でもなんでもないが、大きい話ではある。
だから、何故アイ・タックなのか、この点について納得行く話でなければ
この話は辞退しようと思っていた。
張社長、曰く
「最初はやっぱり、上海のショーです。
会場で話をいっぱい聞きましたが、
アイ・タックさんは、ケミカルなどの商品の売り込みなどではなく、
洗車とかコーティングの実際の話を熱心にしてくれて、うれしかった。
この会社は、車の美容のことを本等に知っている本物だと思った。
だから、ぜひ合作したいと思いました。
そして、いよいよアイ・タックさんに決めたのは、
前回、李さんと鴨井さんが錦州を訪問してくれた時、
鴨井さんの作業を見て、
これこそ、車を本当に大切にしている本物のプロだと思った。
あの熱心さも感心しましたが、
私も洗車から身を起こした人間です。
作業を見れば、それが本物であるかどうか、
その会社がどんな会社であるのか分かるつもりです。」
私にとってこれ以上の殺し文句はない。
「分かりました。ぜひ協力させていただきたいと思います。」
返事はこれ以外になかった。
錦州の学校の話がどのような形で、
どんなレベルで実現し、私達がそこで何が出来るのか
まだほとんど見えていない。
そして、それがどのようにビジネスにつながっていくのかも、勿論はっきりしていない。
ただ、精一杯協力して、
汽車美容(洗車・コーティングなど)の学科が設けられるという
夢のような学校の実現に力になりたいと思ったのです。
将来、
人口300万人の田舎“錦州”に
立身出世伝の張さん有り。
奥星越秀さん有り。
そして、KeePre有りとなるかもしれない。
また、中国に楽しみが増えてしまったのだ。
工場からの帰り、飛行場からずっとビデオを回し続けてくれていたカメラマン。
デジカメを向けたら、照れくさそうにポーズを取ってくれた。
工場の表の壁に張り出されていた、優秀社員の人達
現場をよく知っている社長の会社。りっばな会社である。