谷 好通コラム

2004年05月28日(金曜日)

963話 平和の軍隊その2

北京での軍隊そのままのようなスタンドに、ある意味、私は感動した。

 

 

世界はグローバル化が進み
情報が新ターネットに乗って自由に行きかう。
そんな時代において中国も、
?小平の「豊かになれる者から豊かになりなさい」の号令の元
一斉に自由化が進んだ。

 

経済的な次元での開放と活発な人の行き来がはじまり
中国が孤高の国から、未来、中国が世界一の経済国になるであろうとことが
国際経済の世界では常識になりつつある。

 

それは軍事的な緊張緩和を生み出し、
もはや、中国を軍事的に敵対視する国は無きに等しい
と言っても過言ではない。

 

世界一の兵員数を誇る中国人民軍は、
世界の人口の数十パーセントを占める13億人(公称)の平和を守るために、
あるいは中国の理想を実現するために存在している。
しかし、その膨大な数の兵員を養い続けることは、
計り知れないほどの経済的な負担にもなっていた。

 

そこで
(あくまでも個人的な想像だが)、
その世界一の軍隊を、
その統率力と組織力を活かし、
ほとんどそのままの姿で経済社会の舞台にデビューさせた。

 

この会社の賀社長は、私より2・3歳上であるだけのバリバリの現役である。
その現役の師団長がその精鋭を引き連れ、
ガソリンスタンドの経営など18の子会社を率いる会社の経営者として、
経済の社会にその手腕を生かそうとしている。

 

師団長が、会社の(総経理・社長)。
それを補佐する副師団長(副総経理)、参謀(補佐)
その師団本部の下に連隊長が、各セクションの部長さんたち。

 

 

大隊長・中隊長が、各子会社の総経理など経営陣で、
本体の店舗の規模、あるいは子会社の規模によって
同じ役職名でも、その役割りには上下があるのだろうが、
店舗の店長さんたちが中隊長・小隊長というところか(あくまでも個人的な想像だが)
そして、中隊長・小隊長である店長さんたちは、
部隊である店舗に、その部下と共に寝食を共にしている。

 

 

組織としては、整然とした立派な会社である。

 

中国において軍隊のエリート達とは、エリート中のエリートであり
人材的には申し分ない。
その団結力、指揮統率力も強力なものであろう。

 

では、そのスタッフ
軍隊でいえば“兵隊さん”たちはどうなのであろう。
私には、幸せそうに見えた。

 

規律の厳しい軍隊式の管理の中、
軍隊を見慣れない私たちには、若いスタッフたちの勤務振りは
異様とも思える面もあるが
彼らは彼らなりに活き活きとしている様に、私には見えた。

 

 

中国は、
北京、上海、広州、大連、青島、天津、など急速な発展を遂げつつある沿岸都市部と、
いまだに経済的な発展から取り残されている山間部があって、
その格差はますます広がる一方である。
そして、山間部から都市部に出てきている若い人達の賃金は極端に安く、
その住居環境も劣悪である場合が多い。
そんな社会の底辺にいる人々の一部が、大都会において犯罪に走る場合もあって
中国の社会問題の一つになっている。

 

そんな状況に比べて、
この会社の若いスタッフたちは、
あくまでも清潔で、明るい宿舎の中で生活し、

 

 

管理された美味しい食事が100%保障されている。
宿舎内には厨房があって、若い担当スタッフがみんなの食事を作っている。
多分、店長さんたちも、みんなと同じ食事を取っているのだろう。
いつか一度、是非、私もこの宿舎での食事を食べたいと本気で思った。

 

 

そして、何より人間としてのプライドだ。
ここの若いスタッフたちはプライドを持って働いているように見えた。

 

店内のセールスルームに面白いものを見た。
この店舗(部隊)の行動マニュアル(戦術)の略図が貼り出されていて
その横には各スタッフの能力評価が紹介されている。
よく見ると、なんと店長自らの評価まで載っている。

 

 

これをお客様を含めてみんなに公表しているということは、
その評価にかなりの公平さを持たなければ出来ないことだ。
すべての人が公平に評価され、待遇される環境の中で、
人は、正当なプライドを持って、一生懸命に働けるものと考えている。
その意味で、これはずいぶん思い切ったことであり、有効であり、
評価する側が、自らの評価能力によほどの自信を持っているということにもなる。

 

もうひとつ、
違う店では、「○○の星」という表現で、
スタッフたちが、どんな優れた能力を持っているか紹介した表があった。
これは見たとおりの表であって、思わず真似をしたくなるぐらいだ。

 

 

しかも、スタッフの写真が全員“戦闘服”であるのがすごい。

 

彼の勤務態度は、規律第一。
ビシッとしているのだ。
洗車の拭き上げ担当の待機も直立不動。
我ら誇り高き人民軍のプライドが全身から感じられる。

 

 

しかし、やっぱり迷彩服。それもファッションとしてのニセ迷彩服ではなくて、
本物の戦闘服である迷彩服なのである。
(見慣れない私たちにはちょっと怖い感じもするが)

 

 

私は戦争は絶対にあるべき事ではないと思う。
人と人が殺しあうことに、それが許されるべき正当なる理由など
絶対にあり得ないと信じている。
しかし、現実には戦争は世界各地で日常的に起きており、
この瞬間にも、常に誰かが殺されている。
人間として持っている悪しき習性として“奪う人”がいるならば、
それを護る事も必要であろう。
その延長線上に軍隊がある。

 

軍隊は無い方がいい。
そんな事は誰だって百も承知であるが、存在せざるを得ない状況もある。
しかし、その軍隊の中にある独特な文化は、
都会の中での奪い合う文化に比べて、
案外、人間を、人間として、しかも公平さをもって扱っている軍隊の一面は、
それが商売の中で生かされた時、
つまり平和の中で、あるいは平和な目的を持って活かされた時、
案外、思ったよりも人間っぽくっていいなぁと思った。

 

平和の中での軍隊。

 

私は軍隊のことについて、あるいは中国のことについて
ほとんど無知な存在なので
安易な気持で肯定的に書いてはいけないのかもしれないが、
それを承知の上で、私が北京のガソリンスタンドの姿を見たまま、感じたままを
ここに報告する。

 

軍縮は世界的なテーマである。
そんな中で、兵員削減の名の下に、解雇のように兵隊を放り出すのではなくて、
こんな形で、社会の経済的な一翼を担って行く形で
平和の方向性を持った変換もあるのだと、
あらためて感心したのでした。

 

「みんなの幸せ」に対する実践の姿の一つが
そこにあったように思えたのでした。

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    代表取締役会長兼CEO

    谷 好通

    キーパーのルーツであり、父であり 男であり、少年でもある谷好通の大作、名作、迷作コラム。
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