2004年05月05日(水曜日)
950話 釣堀に行けば?
叔父さんの葬儀の日に
リゾート地から脱出できずに、式にも出席しないでいる自分に、
ずいぶん後ろめたさを持った休暇となってしまった。
しかし、出来ないものは出来ないのだから、
ウジウジしていたって仕方ないと思って、
スッパリ割り切って、しっかりと休暇しようと思うが、
やっぱり、気持の中の引っ掛かりが取れない。
そんな気持でいたら、昔のことを思い出した。
約20年前、ガソリンスタンドを経営する者として独立をした。
最初から快調に燃料は売れるし
油外収益もまあまああって、経営は順調であった。
しかし、やはり暇な日というものはあって、
おまけに雨など降っていると、手持ち無沙汰であったこともある。
さらに、卸しの会社との話がうまく行かなくて、イライラしている時などと重なると
気持がトゲトゲして、私はハリセンボンのようになっていた。
雨が降ったある日、たまたまその日はムシャクシャすることがあって、
そんな時は、さわらぬ神にたたり無しで、誰も私に近づいてこない。
私は余計にイライラして
仕事を放り出して一人で“釣り堀”に行ってしまった事がある。
出かけた近所の釣り堀は、
暇で、私以外には一人だけ。
たぶん年中暇であろうお年寄りが、まるでその釣堀の主のように、
次から次へと鯉を釣り上げていた。
雨の中、私は釣り堀に備え付けの竹で出来た一本竿で、
糸にはぶっとい“浮き”がつき、その浮きがときたま鈍く動くだけ。
どこでどう合わせて釣れば良いのかさっぱり分からない。
気持が重~くなって来た。
ちっとも面白くない。
しかし、ビギナーズラックというものもあるのだろう、
でたらめに竿を上げていたら、何匹か続けざまに鯉が釣れた。
そうなると面白くなる。
今度は本気で釣ろうと思って、一生懸命に工夫までしてみる。
しかし、たまたまアホな鯉がいて、
あれは、たまたま釣れただけに決まっている。
また、ぱったりと釣れなくなってしまった。
こうして雨の中の釣り堀で、情けなく釣り糸を下ろしていると、
だんだん自分が惨めに思えてきた。
「俺はなんて情けないんだ。
店が暇であることは誰だってツライ。
みんなだって暇であることを耐えているのに、
俺は、こんなところで惨めったらしく釣りなんぞをしている。
俺の持っていた理想とはこんなことだったのか。
情けない・・・・」
そして、後ろめたさを引きずりながら、すごすごと店に帰って行ったのだった。
こんなことを何回繰り返した。
ある時は山の方にドライブに行ったり、またある時は海のほうに行ったり、
あるいはまた釣り堀に行ったり。
その度に、ちっとも面白くなく、情けない気持を引きずって帰ってきた。
しかし、そんな馬鹿なことを何回か繰り返すごとに、
「店をもっと忙しくしたい」
こんな馬鹿なことをしなくてもいいように「暇な日を無くしたい」と強く思った。
自分でペンキと板を買ってきて看板をいっぱい書いたし、
宣伝もいっぱいした。
結果的にそれが良かったかどうか分からないが、
何とかしなくてはと、あがいたことは確かだ。
今の商売「洗車屋」は、天候によって店の忙しさが極端に変わる。
刈谷店だって、最初の頃は雨が降ると一台も来ない時もあった。
そんな時、
みんな一生懸命に掃除をしたり、ポスティングをしたり、
あるいは洗車とかKeePreの練習をするのだが、
そんな日が続くこともあって、どうしようもなくテンションが下がってしまう時もある。
そんな時はジタバタしたってしょうがない。
「雨が降ったら、この状態ではしょうがないんだから、釣堀にでも行ってきたら?
かまやしないから、釣堀にでも行っておいてよ。」と言うが、
誰も行こうとはしない。
みんな、私よりも強いのかもしれない。
あるいは私よりも暇であることに耐えられるのかもしれない。
釣堀に行けば、
きっとみんなも、あの惨めったらしい気分を味わえるのに・・
誰もあの情けない気分を味わわないとは、妙に寂しい気分である。
と、自分勝手な今日の話でした。
グァムの最後の日ももうすぐ暮れる。