谷 好通コラム

2004年05月04日(火曜日)

949話 保証人になるよ

グァムに来てから、2日目
昼過ぎにインターネットをつないでメールの送受信をかけたら、
思わぬ知らせが入ってきた。

 

私のオヤジさんの故郷三重県菰野町の叔父さん、
つまり本家の叔父さんが亡くなったという知らせだ。
おじさんは6人兄弟中の長男、6人中の5人が男の兄弟だ。
私のオヤジさんは3番目でちょうど真ん中。

 

今日(4日)の午前5時ごろ亡くなって、
今日の夜にお通夜、明日昼からお葬式だそうだ。
・・・・・
どうしても帰れない。
昨日から帰国ラッシュが始まっていて、今日がピーク。
明日も日本に帰る飛行機はガチンガチンに詰まっていて、どうしても席が取れない。
とにかく一席も無いのだ。
数ヶ月以前からいつ亡くなってもおかしくない病状だったので
世界中どこにいても一日あれば帰ると構えはしていたが、
ゴールデンウィーク絡みのこのタイミングばかりは、最悪であった。
遊びに来ていて、それがどうしても帰れないのだ。

 

 

本家のおじさんの葬式にも出ず、グァムで休養なんて・・
とても落ち着いていられない。
だけど、どうしようもない。
オフクロ達に事情を国際電話して、詫びる。

 

本家のおじさんには、ありがたい思い出がある。

 

私が約20年前に独立し、?タニを設立してガソリンスタンドを始めた時、
三重県の本家に親父さんと一緒に挨拶に行った事がある。

 

いつものように歓待してくれて、仏壇に参ったあと
いっぱいの話で盛り上がっている時に、
やおら、叔父さんが真面目な顔をして言った。
「保証人になるよ。
商売を始めたなら保証人が要るだろう。
保証人になら俺がなるよ。」

 

私たちはびっくりした。
おじさんに保証人になってもらおうと思って来たのではない。
ただ単に、商売を始めたことを報告に来ただけだった。
しかし、おじさんは真剣であった。
一大決心をしたかのように、「保証人になるよ」と言ってくれたのだった。

 

実は、本家のおじさんは以前、“保証人して”苦い経験を持ったことがあった。

 

6人兄弟の内のある叔父さん、A叔父さんが、
商売をやっていて、
本家のおじさんに保証人になってもらい、
本家の土地などを担保に入れてもらっていた事があった。

 

A叔父さんの事業は長い間、
順風満帆であったが、
やがて、色々な事情で(その事情までは知らない)事業が行き詰って来て、
本家の叔父さんをはじめ、兄弟たちにも借金をし、
本家の叔父さん、私のオヤジさん、他の兄弟にも保証人になってもらって
色々なところに借金を重ねて
やがて倒産した。

 

その倒産で、A叔父さんの兄弟たち、とりわけ本家の叔父さんは
かなりの被害を被った。
本家はその保証で、田畑をかなり処分したらしい。

 

それでも本家の叔父さんは、
「Aもそれなりに一生懸命やったんだろうから仕方ない」と、凛としていたそうだ。
“一族の長”として凛としていたそうだ。

 

私が商売を始めたと聞いたときも、
頼んでもいないのに、
自ら当然のように「保証人になるよ」と言って、私たちをびっくりさせた。

 

本家の叔父さんは、
一族の長として、
一族の者の不始末は甘んじて受け止め、
また、一族の者が新しい事業を始めると聞けば、
その後ろ盾になることを、当然のように引き受けようとした。

 

血族の縁とは、そのようなものか
私は、本家の叔父さんを理屈抜きで尊敬していた。

 

結局、本家に保証人としてお願いすることはなかったが、
ひょっとして私が困って、本家に保証人をお願いしに行くようなことがあったとしたら、
本家の叔父さんは、こともなげに「いいよっ」と言ってくれたのであろう。
本当にありがたいことである。
感謝の気持でいっぱいだ。

 

はるかグァムの地から、
どうしても駆けつけられぬもどかしさを自らの内に押し込めながら
安らかなるご冥福をお祈りする。

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    代表取締役会長兼CEO

    谷 好通

    キーパーのルーツであり、父であり 男であり、少年でもある谷好通の大作、名作、迷作コラム。
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