2004年04月26日(月曜日)
941話 上海から世界へ
上海から帰ってきてから2日目、
今回の一週間の上海出張はさすがに応えたが、
昨日の日曜日を一日ゆっくりしていたら、今日はすっきりとして
溢れるほどの仕事を気持ちよくすることが出来た。
たった一日であっても休養を取ると驚くほど回復するものだ。
と言っても、一日中原稿を書いていたのだが
体を動かさないだけでも、休養にはなる。
それに、耳に中国語が入ってこないだけでも、世の中が静かに感じる。
平らな日本語に慣れている私たちの耳には
言葉に抑揚が激しく入る中国語は、それだけでうるさく感じるらしい。
今回の上海での展示会は大きな収穫があった。
今日も電話がかかってきて、
「サンプルのKeePreを使って見たらすごくいい、すぐに商談に入りたい」と
香港の業者が言ってきた。
これから何が起こるかわからない。
上海は今、世界の注目の的である。
街全体がエキサイティングであるし、
その煌びやかな未来的なビルたちが外皮だけの刹那的なものであったとしても
その中身を、人々の富を求める熱気で埋め尽くしている。
この国は世界中のほとんどの国がそうであるように
貧富の差が激しく、その所得は当たり前のように三桁は違う。
いまだに月給8,000円の人もいれば、月100万円以上稼いでいる人もいる。
しかし、それが貧しい人であっても、誰も諦めていないところが
この街の原動力なのであろう。
「俺だって、いつか一儲けして見返してやる。」
誰もがそう思っているように目をギラギラさせているのだ。
この街では、車を自分で洗う人はいない。
自分の車を持てる人は、すでに豊かであり、車は富の象徴である。
だから、富める人はその象徴である車を、富める自分が洗うことなどはせず、
“洗わせる”のが当たり前なのである。
日本のように
“洗う人”と、“洗ってもらう人”ではなくて、
中国では
“洗わされる人”と、“洗わせる人”なのである。
“洗わされる人”は貧しい人であり、“洗わせる人”は富める人。
そんな図式と言える。
洗わされる人は貧しい人なのだから、給料は安いに決まっている。
そんな安い人がやる作業=洗車に、たくさんのお金を払うことはない。
だから、上海での洗車は安い。
車を水で洗って拭き上げて、中まで少しきれいに掃除して、
1台10元(130円)が相場で、
物価が安い上海であったにしても上海の洗車料金はあまりにも安い。
中華料理の“青菜炒め”一杯の値段である。
私達、洗車に携わる者にとって、これは何とも悔しいことで
異国のこととはいえ黙ってはいられない。
答えは簡単である。
我々車を洗う者が“洗わされる人”から、
その腕に高い技術をつけることによって“車を美しくする技術者”になって、
車を洗う事が、“洗うという作業”ではなくて、
“すごく綺麗になる”という付加価値の高い商品としての“ブランド”にまで
してしまえば良い。
そうすれば、富める人達はその象徴である車の“すごく綺麗”が“欲しくて”、
高い金を払ってでも
“車を美しくする技術者”に車を洗ってもらったり、
磨いてもらいに来るようになるのだ。
技術者は、その腕に持っている技術の付加価値が高ければ、
当然、その技術の成果である商品を高く売ることが出来る。
給料の高さは、その人が持っている付加価値の高さに他ならない。
安い給料を高くしたければ、自分の付加価値を高くするほかない。
それがKeePreの役目だと思う。
その腕に高い技術をつけることによって“車を美しくする技術者”を造る事。
“すごく綺麗になる”という付加価値の高い商品としての“ブランド”を造る事。
それがKeePreの洗車技術であり、知識である。
車の塗装を、理論的な裏づけを持って正しく守り、向上させることをもって
真の意味でユーザーの喜びを実現させる、そんな理想を
真剣に考えて作られたKeePreが、
確かな技術者によって上海の車社会に貢献して、
私達、車を洗い磨くことによって糧を得ている者達が、あるべき社会的地位を
作り上げること。
それが
KeePreの上海での役割であると、
確信を持った。
10回以上の上海出張で、
上海の街を見て、歩いて、人々と会って、話をして、
上海の洗車を見て、
洗車をさせる人と、洗車をさせられる人と会って
いっぱい話をして、
そう確信した。
上海において、KeePreの役割をはっきりと確信した。
4日間の上海ショーに出て、
私達のブースに押し寄せる多くの人達と会い、話をすることによって、
ますますその確信に磨きをかけたと言える。
そして、それは上海にとどまらず、
中国全土に広がることは間違いない。
今月の下旬には、北京と大連に行く。
近いうちに、天津にも、香港にも、マニラにも行かなくてはならない。
その次は、絶対にアメリカに行くことになるだろう。
西海岸である。
いや、その前にハバロフスクからもお呼びがかかっている。
ワクワクもするが、考えただけでも疲れてくるのは歳のせいであろうか。
その前に、日本では「虫」のシーズンが始まっている。
とりあえず、インセクトリムーバーの季節である。
グリットが面白い「虫取り」のポスターを作ってくれた。