2004年03月28日(日曜日)
918話 上海は品質勝負
中国における高度成長を支えているのは、
安い人件費による製造コストの低さ。
しかし、世界の製造工場と呼ばれる中国に、ある種の製品について生産が集中し、
原料代が高騰し、製造コストにおいて圧倒的な優位性が揺らぎ始めている。
また、末端の労働者の人件費はいまだ圧倒的に低いが
それを使う企業の経営者たちは、日本人と変わらない所得を得るようになって、
総体的な人件費は上がり、相対的にコストは、
以前に比べて、
やはり高くなりつつある。
これは、かつての日本と同じことである。
また、日本においては、
中国のコスト安に負けた業種もあれば、
逆に安いコストを求めて、
生産拠点を中国あるいは、同じく人件費の安い東南アジアに移し、
コスト競争に対抗している企業もいる。
また、日本で今、元気なのは、
独自の生産管理手法と、徹底したマーケットリサーチのよって
顧客の好みに合わせた少量多品種の製造に成功している企業や、
他に真似できない独自の製品を生み出す開発能力と企画力
そして、それを作り出す高い技術力を持った企業が勝っている。
これらの要素を考えていって、
これからの私たちの上海における活動が、いかにあるべきかを考えた。
まず第一に、
コスト競争に対して対等以上の力を持つという意味では、
中国などの国での生産は、避けて通ることは出来ない。
しかし、ケミカル商品などはノウハウの塊であり、コピー品の発生も考えると
安易に生産を移すわけには行かない。
たぶん、ファイナル1などのノウハウ商品は国内製造を変えることはない。
中国などで製造するのは、それ以外の商品。
特に価格的な要素が強い商品が、その候補となる。
しかし、中国で生産した普通の物をただ単に日本に輸入しても、
その安さだけで勝負することは、先を考えると勝つ見込みはない。
独自性を持った物で、
きちんとユーザーからの評価をもらえる製品を開発する事が前提であり、
その企画力、開発能力が勝つための大前提である。
そのような有益な商品を、
たとえ価格競争に巻き込まれても、耐えうるだけの
製造コストで生産する術を持つことも、これは必要なことであり、
だから、中国など生産コストが安い要素を持っている国での製造ルートの開発も
これは当然、必要なことなのだ。
しかし、単に中国などで造ればいいというものでもない、
発注主と製造者の間に、利益を取るだけの存在がいては、元も子もない。
出来れば製造者と発注者は、直接の関係がいいし、
たとえ、間に商社などが入ったとしても、
商品の開発が非常にスムーズに行くとか、時間が大幅に短縮するとか、
何らかの大きなメリットを持った存在でなければ、その意味はない。
よくあるように
ただ単なる紹介者が、永続的に中間マージンをむさぼるような状態では、
中国での製造が持つメリット、コストが安いという意味が半減してしまう。
独自性を持った良い物を、より低コストで提供する。
これがビジネスに勝っていく大前提なのだろう。
中国で生産し、それを輸入する意味は大きい。
では逆に、
中国に“輸出”するのはどうなのであろうか。
日本の物価と、中国の物価では、恐ろしいぐらいの差がある。
日本と中国の所得の差であり、それが結果的にコストの差となっている。
だから、
日本で高いコストをかけて造った製品を、
物価の安い中国に持っていって、果たして売れるものなのであろうか。
私は無理だと思っていた。
今回の2泊3日上海出張で私が使った人民元は、
わずかに280元ほど、
日本円にして3,600円ほどだった。
食事は相手先が食べさせてくれた場合もあるが、
(中国では、ご飯を一緒に食べる事が、商売の常識になってしまっている。)
朝と昼のご飯は自分たちで食べた。
それでも、普通の所で1食1人300円もあれば、
十分にビールを飲んで、おいしく、たっぷり食べられる。
移動にはタクシーを使うが、
ほとんどの移動が、かなり長い1メーターの10元(140円)で済んでしまう。
長距離に乗っても、たとえば上海市内から浦東空港まで約50km以上
それがわすが1500元(1900円ぐらい)で乗れる。
この出張、考えられる限りびっしりスケジュールを詰め込んであったので
金を使ったのは、ご飯代とタクシー代ぐらいだが
それにしても、あまりにも安い。
日本で同じだけご飯を食べて
同じ長けの距離をタクシーに乗ったら、5万円は楽に越してしまうだろう。
そんな上海で、
1回の施工で約5,000円もするキーパーが売れるものなのだろうか?
1本4,500円もする“ファイナル1”が売れるものなのだろうか?
非常に難しいと思っていた。
無理かもしれないと思っていた。
しかし、何回か上海に行くうちに、十分に勝負できると感じてきている。
問題は、“価値”を、どれだけ作り出せるかということ。
キーパーのような、中国の物価から考えればとんでもなく高い商品を
買うことが出来る購買層はもう出来ている。
高度成長の中で企業の経営者は、
猛烈なエネルギーを持って経済を引っ張ると同時に、旺盛な購買意欲を持っている。
そして、
彼らは“良いもの”を求めている。
そして、
“良いもの”が何なのか、まだ、その価値観を自分のものとして持つまで
成熟していないので、“ブランド”に頼る傾向が強い。
私達日本人でも、自分の価値観が成熟していない時
ブランドに頼る傾向がある。
問題は、中国において
如何に、間違いなく良いものであって、それを支えるだけのブランド力を作り得るか。
ブランド力を作る上で、何より必要なのは、“品質”であろう。
ブランドと言えば宣伝広告も重要であろう、確かにそうだ。
しかし、その創世記において、何より必要なのは“品質”である、と確信している。
一時的であるにせよ、所得格差が著しく開いている上海において、
日本の平均的な所得層のちょっとした贅沢を買うだけの購買層はすでにある。
絶対的な数において膨大な人口を有している中国においては、
その購買層の数はすでに大きく十分なマーケットを形成している。
しかし、いずれにしても、その購買層が買うものは、
絶対的に低い物価の中では、
それは、やはり贅沢なものであり、
絶対的に良いものでなければ支持されるものでない。
この購買層が、
高い品質を誇る日本製品を競って買い、
「中国の日本特需」を作り出しているのだそうだ。
逆に、
それが、本当に顧客にとって“良いもの”であれば、
それが物価指数に対して高価なものであっても、選択され、支持されるものとして
大きく成長し、本来のプランドに成長する可能性もあるのだ。
しかし、絶対的に低い物価の中で
その過程において、コスト競争にも耐えうるだけの体質を持っていなければならない。
そのためには、
製造過程においてのコスト競争に耐える体制も持っていなければならない。
その両方が中国の中にあるならば、
我がキーパー、我が快洗隊にも勝機がある。
今回、一緒に上海に行ってくれた某大会社の商品開発の方の
品質に対する執拗な姿勢を見るにつけ
そんなことを思ったのです。
上海で勝ち抜くためには“品質”。
これ以外にありません。
逆を言えば、“品質”を絶対的に確保できれば、
私たちのような小さな存在でも、勝ち、一つのブランドを創り上げる事が
可能であるということでもあるのです。
陶さんの工場で3時間余、あくなき品質を求めて
昨日(日付が変わったので27日のこと)
4時間半の激論! 楽しかったが、ヘトヘトになった
おもちゃ箱のような上海の新しいビル街
上海から帰ってくるとき
いつもは、一緒に空港の入国管理の中に入るのに
今日は、その外で李さんが手を振っている。
今回から、李さんの帰るところは上海。
日本ではないのだ。
もう上海の人なのだ。
ちょっとジンと来てしまった。
皆さんも、上海で一人でがんばる李さんを、
応援してあげてください。