2004年03月17日(水曜日)
912話 プロショップ造り
全国の洗車を商品としている店舗、
たぶんガソリンスタンドが、その最も多くを占めている。
そのすべてにおいて、そして、洗車を売っているというその時点において、
その店舗は、本来的に「洗車のプロショップ」である
お客様から見れば、「売っている」以上、すでにプロショップでなければならない。
と前話に書いた。
そして、プロショップとは
プロの技術を持ったスタッフがその店舗にいて、
その店で洗車をしてもらえば、あるいはコーティングなどをしてもらえれば、
素人の技術を超えた“仕上がり”が得られるものと考えるのが当然である。
そして、プロの技術とは、
きちんとした論理的なマニュアルによって、
“教育され”、“訓練される”ことによって得られるものである。
加えて、プロの仕事とは、一般の素人が持たない洗練されたプロの道具と、
プロの仕事が出来る環境の下で、
プロの技術を持ってなされるべきものである。
それでこそ、プロの仕事による付加価値の高い洗車商品が実現するものだ。
すでに洗車とコーティングなどを販売している以上
少なくとも、プロの技術は身に付けたい。
プロの技術無しに
プロショップはあり得ないから。
プロの技術とは
きちんとした論理的なマニュアルによって、
“教育され”、“訓練される”ことによって得られるもの。
まず、今売っている洗車商品の作業マニュアルを見直そう。
洗車機での洗車。
手洗いでの洗車。
キーパーコーティング。
水垢取り+ホワイトロン(キーパー)コーティング。
室内清掃。などなど
今、自分の店で行われている作業を見直す意味でも、
今一度マニュアルを見直す必要がある。
持っていなければ、作ることから始める。
あるいは、キーパーのように専用の施工マニュアルが用意されているものならば、
それをもう一度読み返す。
無ければ取り寄せる。
アイ・タック技研では、注文さえいただければ
キーパーの施工マニュアルをいつでも施工店にお届けしている。
もちろん無料である。
ぜひ、「キーパー施工マニュアルを送って欲しい。」
とご連絡いただきたい。
キーパー施工店ならではの特権なのだから。
快洗ジュニアとか、快洗Boss、スーパー泡ジェットなどをご利用ならば
手洗い洗車のマニュアルも自由に取り寄せられる。
アラカルト商品についても同じだ。
あるいは、これらのマニュアルを参考に
ご自分自身で、独自のマニュアルをお作りになることも、意味のあること。
自分で作ったマニュアルは、作ることによって、その細部まで理解されることになり、
その意味で有効なことと考えている。
ただ、自分でマニュアルを作られる場合、
“効率よく”ということと
“楽をする”ということとはまったく別のことであり
マニュアルの目的が
「お客様のお車を、“誰が作業しても、高い品質”で綺麗さを作り上げるためのもの」
であることを、しっかりと認識の中に置いて作らなければならない。
つい、効率化の名目の元に
楽に走ってしまう傾向がある。
マニュアルの目的は
品質を上げるためのものであることを、よく自覚した上で作っていただきたい。
マニュアルは、その店舗で販売される洗車商品の
品質基準になるものだ。
品質基準のない商品では、お客様は安心して買うことがは来ない。
買うたびに、仕上がりが変わってしまったり、
作業をする人によって、仕上がりが変わってしまったり、
安心して買うことが出来ない。
商品には、必ず品質基準があるように
サービス商品である洗車には、施工マニュアルが不可欠なのだ。
特に、技術が独特である“キーパー”に関しては、
キーパーの施工マニュアルは必須のもの、
今、手元においていただきたい。
また、無いならば、ぜひ請求していただきたい。
ちなみに快洗隊の作業マニュアルは数十ページもある。
それほどマニュアルは大切なものだ。
マニュアルがきちんと用意されたならば、
いよいよ「訓練」。
施工マニュアルは、その内容にしたがって訓練が行われてこそ意味がある。
作業訓練は、4つの段階によって構成されている。
「やって見せて」
「言って聞かせて」
「やらせて見て」
「うまく行ったら、つまり合格したら一緒に喜ぶ。そしてその意味を確認する。」
どっかで聴いた言葉。
そう、山本五十六が教育の基本として残した言葉と似ている。
私は、山本五十六のことはまったく知らないし、その教育論を読んだこともない。
ただ、実際に訓練をやってきて、
この言葉が非常に有効であることを、身を持って体験しているので
借用している。
まず第一、「やって見せる。」
これは模範演技に当たるもの。
習う者が、これから自分が何をやるのか、それを知らせる。
模範演技者は真剣に作業しなければならない。
その姿でプロの仕事の真剣さを知らせる。
第二に、「言って聞かせる。」
作業をやって見せて、「さぁ、こんな風にやるんだ、やって見な」
これでは、ただの物まねを憶えるだけであって、
技術とは言えない。
技術とは、この動作の一つ一つに、きちんと訳があって
正しい動作が、どうしてそういう動作になっているかの理由があるものだ。
「何故」ということ。
何故、その作業はその動作でやるべきなのか
その理由が解かっていれば
1.その動作を覚えることが出来る。
2.何年経っても、その動作が崩れない。
3.色々パターンに遭遇したときに、そのパターンに合わせた対応が効く。
動作を形だけで覚えたのでは、
だんだん時間が経つにつれて、自己流が入ってくるし、
何故、そういう動作で作業をやっているのか分かっていなくては、
色々変化する場面に対して対応できない。
“やって見せながら”あるいは、“やって見せてから”
・何故、この作業は行われるのか。
・どんな目的があるのか。
・使う道具、ケミカルは何であって、どういう働きを持っているものなのか。
・どういう使い方をするのか。何故そうなのか。
・どうしてこのような動作でやるのか
などなどを
一つ一つ説明しなければならない。
研修生も、闇雲に作業の動作を覚えよ。と言われるよりも、
“何故”という部分をきちんと説明してもらった方が、
うんと憶え易いし、納得しながら憶える方がよく憶えることが出来る。
そして何より、自分のやっている事が単純な肉体労働ではなくて、
きちんと理にかなったことであり、
やっていることの意味を解かっているので
自分が技術を身に付けているという実感を得ることが出来る。
「言って聞かせる」とは、訓練の中でも最も重要な要素の1つと言える。
第三に、「やらせて見る。」
ここまでやって、今度はやらせる番になる。
“やらせる”と言っても、最初から全部の作業をやらせるわけではない。
たとえば、
1つの商品「室内清掃」ならば、その作業の中に“内窓拭き”があり、
その内窓拭きでも
「フロントウィンド」「サイドウィンド」「リアウィンド」と三種類の作業の仕方があって、
その一つ一つの作業を、
パートごとに1つずつやらせていく。
もちろん、そのつど何度も
「やって見せる」「言って聞かせる」が平行されることになる。
「室内清掃」というベーシックな作業だけでも、
たぶん、10以上のパートがあるはずだ。
その一つ一つの作業がきちんと出来るようになったら、
今度は、1つの洗車商品の作業の一通りを、連続してやらせる。
つまり、通常の作業のようにやらせるわけだ。
一度、練習
きちんと正確に連続して作業が行われているか、厳密にチェック。
正しくすべての作業が出来るようになったら、
今度は、時間を区切って作業をやらせる。
区切る時間は、「洗車メニュー」に提示してあるその作業の標準時間。
ここでいう「室内清掃」ならば20分だ。
私たちは、ここからを「タイムアタック」と、自然に言うようになった。
タイムアタックと言えば、時間を競うという意味で使うので、
私たちがやっている
「時間内に正確に作業を終えることを目標にする」こととは少し意味が違うが
自然にこう呼ぶようになって、もう直らない。
時間を区切って正確な作業をやらせることには意味がある。
「一生懸命」に作業をさせ、気を集中させることだ。
時間を制限せず正確な作業をされるだけなら、
ちょッと小器用な人なら、その場だけでも簡単にやってのける。
“器用者の浅憶え”というやつだ。
しかし、時間を制限して作業するとなるとそうは行かない。
かなり必死になって、
一生懸命やらないと、簡単には出来るものではないのだ。
この“一生懸命に”という部分が肝心であって、
車をキレイにするということは、
つまり、その車の汚れが残っていないかどうか、きちんとキレイにするためには、
それなりの“神経の集中”が必要となってくる。
神経の集中は、のんびりやっていては出来るものではない。
一生懸命やるということで初めて神経の集中が起きてくる。
それが欲しいために時間を区切るのだ。
その他にも、
お客様に約束した時間内に作業を終えなければならないのだから、
当然、時間内で作業が出来るようにならなくてはならない。とか
“うまい作業”は、イコール“速い作業”でもあるという技術の公理に従っている。とか、
色々なスポーツの練習にも言えるように、
訓練は集中してやらないと、頭で憶えるだけで、体で覚える事にならない。
技術は、頭で憶えるのと同時に、体に技術を染み込ませ憶えることも必要なのだ。
時間を区切って、作業をやらせることには上記のように大きな意味がある。
ただ、勘違いしてはならないのは、「速ければいい」では“ないということで、
ややもすると
タイムアタックは面白いので
ついつい、タイムの方だけに気が行きがちになってしまうのだが、
あくまでも
「正確な」しかも、「いつも正確な」作業をする事が、大前提であることを
決して忘れてはならない。
第四に、
「うまく行ったら、つまり合格したら一緒に喜ぶ。そしてその意味を確認する。」
決められたタイム内に、しかも正確に作業が出来たら、合格!である。
研修生は、ここまでかなり一生懸命やってきているので
この合格は、大変うれしいものであるようだ。
(「ようだ」とは人ごとのようだが、私はこれを作った方なので、合格したことがない。)
ぜひ、一緒に喜んで上げたい。
と、同時に合格した意味、つまりプロとしての技術が
とりあえず、出来るようになった事
そして、これは何度も何度も実際のお客様の車に対して作業させて頂くことによって、
はじめて、本当の意味で身に着くことを確認し、
普段の作業においても、訓練の時の気持ちを忘れず
正しい作業を行うことが、高い品質を維持することであることを確認する。
これで、この研修生は1つの洗車商品をプロとして作ることが出来るようになった。
お客様の車を実際に作業する。
ただしこの商品についてのみである。
作業をさせると言っても、最初はベテランの社員を付けて
新人君の作業をよく確認しながら、作業をやらせる。
何台か経験して、ベテランが許可を出したら
今度は一人でやらせて、最後にベテランが確認する。
この段階で、その人のクセを修正することも大切だ。
1つの商品の作業を教えるのに、丸半日。
ここはインストラクター役のベテランが付きっ切り。
何台かのお客様の車を作業させることによって、技術を身に染みさせるのに
長くて1週間。
これは、実質的に仕事をさせているので、
教える手間と相殺されて、ほとんど負担にはならない。
「室内清掃」
「(手洗い)洗車」
「キーパー」
「アラカルト」
「接客」
この順で、一通りの作業が一人前に出来るようになるまでに、大体一ヶ月かかる。
随分かかるように思えるが、実際には二人いっぺんに教えたりして
大した負担にはならない。
これで、お金の取れるプロフェッショナルが出来上がることを考えると、
ほとんど何も教えられていない素人同然のスタッフを、雇い続けることと比べると、
はるかに効率のいい方法だと思うのです。
きちんと教えてしまえば、
あとはこっちのもの
お客様に喜んでいただける洗車商品を、みんなが作れるようになるのです。
これぞプロショップではないでしょうか。
あとは、メニュー作り。
これもまた面白いのだ。
一度スクールに来て見ませんか?
技術のご披露と共に
訓練のやり方の実際を、少しですが、やってお見せしています。
けっこう面白いですよ。
昨日、名古屋から東京に向かえ新幹線からは
富士山は見えなかった。
よく晴れていたのに、富士山の近くに来ると雲がいっぱいあって、
やっぱり見られなかった。
こんな事がよくある。富士山は、そう簡単には見られないのです。
ところが、今日の午前中
今度は、東京から名古屋への新幹線
最初は見えなかったが、富士山の西側に回ったら突然見えた。
万歳である。
富士山が見えると、なぜかホッとする。