谷 好通コラム

2003年10月24日(金曜日)

824話 情報遮断の狂気

昨日、テレビのニュースステーションを見ていたら
韓国に亡命した元・北朝鮮の最高幹部のインタビューをやっていた

 

その中で印象的だったこと
「北朝鮮は、もうとっくに崩壊していておかしくないのに
市民が街に出て、お互いに話しをすることがないので
誰も行動に出る事をしない。
だから、綿々と独裁が続いてしまっている
しかし、崩壊は必ず来る。
もう、限界を通り越しているだから。」

 

北朝鮮は、想像を絶する飢餓状態で
毎年、何十万人、何百万人単位で餓死者が出ていると言う

 

餓死はつらいと思う
病死も、事故死も、戦死もつらいとは思うが
その中でも特に餓死はつらいと思う

 

私は、お腹が減ってくると
「あ~ッ、腹減った、腹減った、飯食おうよ」とすぐに言う
空腹が本当につらい
朝ごはんを食べない人が多いが、私には絶対理解できない

 

朝食を朝7時、昼食を12時、晩飯を夜7時に食べるとすると
朝食から昼食までが約5時間
昼食から晩飯までが約7時間
晩飯から翌朝の朝食までが約12時間

 

朝飯時が一番腹が減っているに決まっているのだ

 

なのに、「朝ご飯が食べられない」なんて言うのは
絶対おかしい
一番お腹が減っているのは、朝っ!
と、私は思うのだ

 

空腹がつらいと思う分、ご飯を食べた後の満腹感は他に代えがたい幸せを感じる
「あ~幸せ・・」
とつぶやいてしまうのだ
(空腹感は生存欲の危機であり根源的な苦痛の一つなのだ)

だから、餓死だけは絶対いやだ
餓死するくらいなら、食べ過ぎて腸捻転でも起して死んでしまう方がマシだと思う

 

(話が大幅にそれた。反省)

 

自分の肉親が餓死していくのを見て
北朝鮮の人たちは、身を裂かれんばかりのつらさであろう
これ以上ない悲劇の一つ
それが、何十万、何百万人レベルで起こっていて
自分の番が来るのもいつか分からない

 

そんな状態でも
独裁者は自分の親の遺体の永久保存のための馬鹿げた施設作りに
何百万人もの飢餓を救うことが出来るであろう莫大な費用を
浪費している
あるいは、自分の保身のためだけのために
ミサイル作りに狂奔している

 

そんな極限状態で
北朝鮮の人々は、なぜ何もしないのであろうか

「知らないから」である

 

厳しい言論統制と
コミュニケーションの遮断
つまり、情報すべての遮断によって
飢え死にしているのは、自分の肉親だけでなく
あるいは自分の村の人間だけでなく
隣の村の人々も
隣の県の人々も
国すべての地域において、すべての人が飢え
数え切れない多くの人々が餓死していることを
知・ら・な・い

 

うわさ話などで、何か大変なことが起こっていることは
ウスウス気が着いてはいるが
確信が持てない

 

村の外部からの最も有力な情報源、つまりラジオでは
悲劇的な数の餓死者が出ているなどとは一言も言わない
偉大な独裁者の賛美であり
国民全体は誇り高く、幸せに暮らしていると、常に報じている

 

・・・・・・
自分が飢えていてこんなにつらいのも
愛する肉親が、生き物にとってたぶん一番つらい死に方“餓死”をしていることも
ひょっとしたら、自分たちの周りのことだけであって
その外はみんな幸せなのかもしれない
分からない

 

少なくとも、ラジオはそう言っている

 

しかし
政府に抵抗しても
殺されるだけであることも知っている

 

事実に確信を持てないまま
つまり、本当のことを知らないまま
負ければ殺されることが分かっている“行動”を、起こす事が
誰が出来ようか

 

行動を起さず
ただ、ジッとしているしかない
やがて自分にもやって来るだろう餓死を待ちながら
ただ、時間が過ぎる

 

知らないこととは、悲劇である

 

独裁者にとって、独裁体制維持の一番の手は“事実を知らせない”であり
彼にとって一番怖いことは、人々が事実を知ることである

 

 

極端な例であるが
たとえば“豚”
豚は、そのわが身の肉を、人間が食べるために飼育されている
というより
豚そのものが
気性の荒いイノシシを人間が飼育するのに便利なように
豚という形に改良し肉を取るために作られた種である

 

自分を食べるために、人間に育てられている存在だ
餌は自分を食べる為に与えられる
豚はそれを知っているか
知るわけがない

 

だから、エサの時間になれば
人間がエサを持ってやって来るのをワクワクして待っているし
頭を撫でられれば喜ぶ

 

豚は、自分が、自分を育てている人間に食べられるために
生きていることを知らない

 

ひょっとして知っていたら
豚は、どうせ殺されるぐらいならと、必死になって逃げようとするだろう
あるいは、果敢に人間に闘いを挑んでくるかもしれない

 

 

北朝鮮の人々でも、かなり知っている人もいて
必死で“脱北”するものが後を絶たない
本当のことを知ったら
みんな必死なのである

 

 

「知らない」ことは、残酷である
自分だけでなく、自分の周りまで引きずりこんで不幸になる

 

本人の意思に関わらず
「知らない」ことで
不幸にまっしぐらに突き進んでしまうこともあれば
不幸からの脱出のための行動を起さないこともある
そして
「知らない」ことで、多くの人を不幸にしてしまうことがある

 

「知らない」ことは、ほとんど罪であることすらある

 

独裁者など
人の不幸の上に立脚している存在は
共通の行為として「出来るだけ知らせない」ことを必ずする
加えて、自分に都合のいい情報だけを選択して、あるいは捏造して「知らせる」
いわゆる事実をゆがめたプロパガンダを実行する
いずれにしても
「事実を知らせない」

 

そんな国の人々は不幸だ
知らないまま、不幸になっているのだから
ある意味では、家畜に似た状況に置かれてしまっているのだから

 

私たちの、日本の中での状況はどうなのだろうか
情報はある
溢れるほどある
こちらが選択しなければならないほど情報があふれ返っている
まさに“情報の洪水”

 

では、みんな事実を知っているのだろうか
あるいは、あふれ返る情報の中でみんな幸せなのだろうか
幸せであろう
少なくとも、幸せと感じてはいるだろう

 

しかし、テレビCMなどにしても
何にしても
与えられる情報は、目的を持っているものだ

 

たとえば、その目的とは買ってもらうこと
もちろん、買ってもらうことが目的であっても
その情報が正しいものであって、買ってくれる人のことを考えて発信されたものならば
それは有益であり、そのような情報が多いことは“便利”なことである
情報とはそういうものがほとんどだ

 

しかし、稀には“騙すこと”を目的に発信されている情報もある

 

先日ある大臣が演説で言っていた
「騙す方と、騙される方とどっちが悪いんですか」

 

法律的には騙す方が悪い
しかし、その人が騙されることによって
その人を信じてついてきた人も一緒に被害をこうむるならば
その騙された人は、一緒に被害をこうむった人に責任がある
その意味で、騙された人も罪があると思う

 

与えられた情報だけしか持つことが出来ないのならば
その情報の真偽を見極めることは出来ない

 

情報とは
与えられるだけでは無くて、自らも求めていくもの

 

情報、あるいは知識を
自ら求めることを“学ぶこと”あるいは“勉強”という
あるいは“経験”という

 

与えられる情報を
正しく判断する為には
自ら求めた情報、知識が必要であるということ

 

自ら学ぶことをしないと
いつの間にか、
食べられるために餌を食っている“豚”になってしまう

 

あるいは、豊富な情報によって独裁者が出現しにくい現代なのに
誰もが与えられる情報の中で
自ら学ぶことをせず
与えられることに怠惰していると
独裁者の台頭を許してしまうことになりかねない

 

昨日テレビを見ていて
そんなことを思った

 

第二次大戦後のソ連・アメリカ両超大国のエゴの中で
必然として生まれてしまった
今の北朝鮮の悲劇を見て
私達は、情報の大切さと
正しく情報を判断する力を持つには、自ら学ぶことを忘れてはならない

 

与えられる情報だけの中で生きていてはいけない
自らの意思で、勉強せねばならない
食われるために食っている豚になりたくないのなら
そんなことを思った

 

今日は2ヶ月ぶりにMINEサーキットでレースの練習をしてきた
ここしばらく予定を詰め込んで
無理やりにこじ開けた今日一日
いっぱい走った
楽しかった
またいっぱいのことを感じた
学ぶこともあった
その話は、またいずれ

 

そして
疲れた・・・・・・・・
心地よい疲れだ

 

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    代表取締役会長兼CEO

    谷 好通

    キーパーのルーツであり、父であり 男であり、少年でもある谷好通の大作、名作、迷作コラム。
    読めば読むほど元気になること間違いなし。・・・の、はず。

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