谷 好通コラム

2003年09月16日(火曜日)

797話 上海・風船バブル

上海の発展振りは、ただ事ではない
来る度に新しいビルが建っていて、その風景が刻々と変わっていく
そのビルのほとんどがホテルであり、ビジネスビルであり
おびただしい数のマンションである

 

中国の物価は、日本の約10分の一
しかし、新しく建った高層のホテルの宿泊代は決して安くない
1泊で1人1万円以上は当たり前で
名前を聞いたことのある有名な高級ホテルでは、2万円以上するところまである
中国の物価指数からすれば1泊20万円にもなるもので
とうてい一般の人が泊まるような物ではなく
外国からの観光客
それも、相当リッチな観光客用のホテルということになる
そんなものがドンドン建っていって
それでもなお、予約は早めでないと取れないほどタイトである
とにかく、派手なビルで
前面ガラス張りが高級ホテルの定番のようだ

 

 

ビジネスビルにいたっても
建設が終わってからゆっくりと、入居を検討するなどとんでもない話で
建設の計画が持ち上がって
それが世に知られる頃には
コネを使っての入居予約でいっぱいになってしまうと言う

 

国の政策で作られるビル達は
まるでデザイナー達の展覧会のように
奇抜であり、派手であり、とにかくカッコよく作ってある

 

 

マンションも同様で
建設開始⇒販売開始即完売
やはりコネがあってやっと買えるほどの大人気であるらしい
日本でいうところの3LDKクラスで二千数百万円
一年ほど前の2倍にもなっていると言っていた
マンションは入居が目的であるよりも
むしろ、“投資”が大きな目的である
だから
マンションが全部売れても
実際には、2/3ほどしか入居する人はいない
多くの人は買うだけ
買っておいて、値段が上がったら“売る”
売って、その利ざやを儲けるための投資
“売る”ために“買う”のである
だから
マンションに2/3ほど入居者にしても
そのほとんどは
買った人から借りて住んでいる賃借り人である場合が多く
実際に買った人が住んでいる場合は、むしろ少ないぐらいだという
まさに儲けるための投資
マンションは、金を産む不動産なのである

 

上海のある人が
不動産業を営んでいる義理のお兄さんのコネで、マンションを1つ買ったそうだ
1年ほど前に1,200万円で買ったそのマンションは
今、2,900万円の値段がついているという
1年で1,700万円設けたと、うれしそうに話していた

 

私は、彼に言った

 

みんな売るために買っている。
だからみんな、いつか必ず売りはじめる
売るために買うのだから、必ず売る
儲かることを見込んで、借金をして、みんな買っている
だから、“売って儲けなければならない”のだから
“売らなければならない”

 

今は、儲けるためにみんなが買う
マンションが出来ていくスピード、つまり物件が出てくる数よりも
そして、売る人よりも
たくさんの人が買っているから、どんどん値段が上がっていく
需要が、供給よりも大きいから値段は上がる
単純な経済の法則だ
ただそれだけの話だ

 

しかし、みんな売るために買っているのだら
いつか必ず“売りに出る”

 

日本でのバブルのことも
それが崩壊したときに、投資で不動産を買った人がどうなったのか
その悲惨さを
多くの人は知っている

 

だから
マンションなどの不動産の値段が上がるだけ上がって
“みんな”が、“売りに出る”ギリギリまで待って
売ろうと考えている

 

みんなが売りに出たら
当然、その値段は暴落する
売るという供給が、買うという需要よりも急激に大きくなるのだから当然で
みんなその直前で売ろうと思っている

 

だから
“その時”がいつ来るのか、みんな構えていて
下がりそうだと思ったら、売ろうと思っている
その瞬間を待っているのか

 

しかし、その時はもう遅い
その時がいつであるのか
そんなものは、誰にも分からない
「今が売り時だ」
自分がそう思ったとき、それはすなわち、みんながそう思ったときであって
その瞬間から、すでにもう暴落の真っ最中
絶対売れやしない

 

中国では、2008年の北京オリンピック
あるいは、2010年の上海万博まで
不動産は上がり続けると、みんな言っているが

 

中国の物価指数を考えれば
すでに実質的な不動産の価値をはるかに通り越したバブリーな価格水準で
見方によればバブル末期と言えるかもしれない極端なレベルだ
いずれしても
あと5年、あるいはあと7年
バブルが膨らみ続けるだけの力は、中国には無いと、私は思う

 

だから、その前に、バブルは弾けると思えて仕方ないのだ
あるいは政府があまりバブルが大きくなり過ぎないように
一度、バブルの中の空気を抜きにかかるかもしれない
少し沈静化させようと
何らかの介入に入るかもしれない
しかしそれが、バブル崩壊のきっかけにも成りかねず
政府も手を出しあぐねているのか

 

ただ、中国の世界一の人口数が
日本よりもっとインフレーションしたバブルの状態にまで
支えることができるのかもしれない

 

日本のそれは
バブルが石鹸水の“泡”で出来たようなもろいものであったが
中国のそれは
その人口の多さ
つまりマーケットの“数”が、あまりにもでかいので
同じく中身は空っぽであっても
中国のバブルは
“泡”よりも、もっと大きくなれる“ゴム風船”なのかもしれない

 

どちらにしても
中身は空気である
空っぽであって
いずれは、大きくはじけて
不動産は、実質的な利用価値にまで戻る

 

そのバブルが
弱々しい泡ではなく、もっと強靭な風船であるとしたら
それが弾けたときは
日本のバブルの崩壊とは比べ物にならない大きな爆発になるかもしれない

 

みんなが売り時と思った時は
もう遅い

 

今売れば確実に儲かるなら
私は、今が売り時だと思う

 

バブルの時、不動産に投資するのは
これば博打だ
誰かが大きく儲けて、ほとんどの人が損をする

 

博打ならば
最大の勝ちは、「勝ち逃げ」である
それ以外にない
しかし、儲けがこれからもっと大きくなりそうに見える時
つまり、みんながまだ上がると思っている時しか
勝ち逃げは出来ない

 

バブルの最中はみんなが勝っている時
勝ち逃げとは
みんながまだ「自分も、もっと勝てる」と思っている時に
さっと、“勝ったまま博打をやめること”
それしかあり得ないのだ

 

みんながまだ上がると言っている時しか
売り抜けは絶対に出来ないのだ

 

私には、それがいつなのか
まったく分からないし
見極める能力を持てるとも思っていない
だから、日本のバブルの時も
まったく不動産にも、株にも投資することはなかったし
マネーゲーム自体に、まったく興味を持てなかった

 

より意味のある大きな利益は
博打より
商売の方が
絶対に確実で、大きくなるものを得る事が出来るものだと思っている

 

上海でのビジネス
バブルが弾けようが、何しようが
本物の商売を作り上げていれば、ビクともしない
バブル後に勝ち残れるビジネスが、本物の商売だと思う

 

いつか、上海・風船バブルが弾けるであろうことを前提とした発想で
上海での商売を真剣に考えたい
日本での私たちがそうであったように
バブルがはじけた時こそがチャンスである、とも考えられる

 

朝8時から、夜9時まで
ひと月1・2度の休みで、1500元(約20,000円)
(ただし寮・食事つき)
これは、中国の若い労働者としては、かなりの所得を取っている方だそうだ

 

 

この人達のような、安い人件費に支えられた経済
そして、その労力が世界一の数・量であり
向上してきた商品品質が、中国の経済を世界のひのき舞台に押し上げた
しかしその経済力は
安い人件費に裏付けられたものであって
消費の力も、その“数”に基づいている
物価と所得が十分の一で、数は十倍
掛けて見ればチャラ

 

※表からは、まるで未来都市のような上海だが
実際は、街にはまだこんな建物の方がまだ多いのです。

 

 

私には
中国経済の今の発展の始まりの象徴である
上海テレビタワー

 

 

丸い玉の部分の中身が、多分、空っぽであるように
中国経済のバブルがいつはじけるか
むしろ、興味津々で、見つめたい気持ちになっている
バブルがはじけたときが勝負!
で、今何をすべきなのか・・
そんなことを考えさせられた、今回の上海出張、プラス1日の観光でした。

 

 

明日は、たった1日でしたが
上海に行き始めてから、初めての観光の日のことを書きたいと思っています。

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    キーパーのルーツであり、父であり 男であり、少年でもある谷好通の大作、名作、迷作コラム。
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