谷 好通コラム

2003年07月24日(木曜日)

762話制限時間いっぱい

子供のころは相撲が大好きだった
大相撲が始まると、2時間ぐらいテレビ中継にかじりついた
しかし、今はまったく大相撲を見なくなっている

 

18歳のときからスタンド勤めを始めて
テレビ中継の4時から6時にテレビを見ることが出来なくなってからは
夜11時からの「大相撲ダイジェスト」で
大相撲を見るようになった

 

テレビ“中継”では
何回も繰り返される仕切りを全部見なければならないので
相撲の一番について3分~4分?くらい掛かっていたのが
“大相撲ダイジェスト”では
仕切りの場面がほとんどカットされて
次から次へと、勝負を見ることが出来た
中継ならば
幕内の勝負を全部見るのに2時間は掛かったものが
ダイジェストならばたった30分
テンポが速くて、気持ちがいい

 

ダイジェストを見るようになってからは、たまに中継を見ることが出来ても
長い仕切りの時間がまどろっこしくて
「かったるいな~~~」と
思うようになってしまった

 

それから何年かして、仕事が忙しくなってきたこともあって
大相撲の中継もダイジェストも
何も見なくなってしまった
そのうち大相撲にはまったく興味がなくなってしまい、今に至っている

 

大相撲のいいところは
高い土俵の上に、2人の力士があがって
お互いに挨拶をして
正々堂々の勝負と、安全を祈念する儀式を一通り行って
何度かの仕切りを重ねるうちに
体をほぐし、お互いに気合をみなぎらして行く
テンションが上がり切ったころ
「制限時間いっぱいです」と、“呼び出し”が力士に告げる
一気に、気合が盛り上がり
行事の「見合って!」の最後の仕切りで
ぶつかり合い
勝負に突入する

 

この一連のプロセスが相撲の醍醐味であり
一見無駄に見える「仕切り」があってこそ
一つ一つの勝負が、一つ一つのドラマに仕立て上げられていたわけだ

 

そのドラマのクライマックス、“いいとこ”だけを集めてしまったのが
「大相撲ダイジェスト」であったわけで
ある意味では、ダイジェストを見るようになってから
本来の大相撲の良さを見失ってしまい
私は、大相撲から離れていったのかもしれない

 

映画でも
最近の映画は
はじめっから終わりまでクライマックスの連続で
息もつかせぬ展開のものが成功している
「ターミネーター」「マトリックス」などは
激しいアクションシーンの切れ目の無い連続であって
一分たりとものんびりしたり
ホッとしたりはさせてくれない
2時間以上ドキドキのしっぱなしなのである

 

一切のプロローグなしで
いきなりクライマックスが来て、テンション上がりっぱなしで
興奮のボルテージがクングン上がり
最後に、ばっさりと結論が来る
まるで、「大相撲ダイジェスト」のように

 

こんな映画ばかり見ていると
叙情感あふれ、しっとりとした映画を見ても
刺激が足りなくて
だんだん、つまらなく感じてくるようになって
より過激な刺激を求め、やがて、映画そのものに飽きてしまうのではないか
そんな風に感じることがある

 

でも、やっぱり「ターミネーター?」は見たいと思っている (^・^)

 

大相撲は、勝負と勝負の間に、たっぷりの「間」があり
その間に、解説者の相撲の話をワクワクしながら聞いたり
おやつを食べたり
やがて、力士の気合が盛り上がってくるころ
「制限時間いっぱいです!」と、大きな声でテレビのアナウンサーが言う
何かで気が逸れていても大丈夫
この声を聞いたら、テレビに集中すればいい

 

昔のように
たっぷりとした
ゆっくりとした
2時間のドラマ「大相撲の中継」を楽しむのは
あのころの豊かな時間であった

 

「制限時間いっぱいです!」
この声を聞いて
気合が入るのは大相撲の力士だけではない
グリット!吉田君も、絶対にそうだ
「そろそろ納期ぎりぎりいっぱいです。」の声を聞くと
がぜん張り切りだす
アイデアも湧いてくる
そして
徹夜をしようが、何であろうが、かんであろうが
とりあえず間に合わせてしまう

 

(たまには“待った”をかけることもあるが)

 

もっと早くから手をつけておけばいいのにと
いつも思うのだが

 

「制限時間いっぱいです!」の声が掛からないと
テンションが上がってこないのか
毎度、毎度
“緊張感あふれる仕事”をしてくれる
おかげで、こちらも結構ハラハラさせられるのだが
本人は
「ちゃんと間に合った」と満足げである

 

たいてい納期ギリギリになるグリットの仕事
決してダラシないからではないのだ
「制限時間いっぱいです。」の掛け声が掛かったときに
いっきょにテンションが上がって
そんなときにこそ、いい仕事が出来る!
きっと大相撲のような、国技にも似た純日本的な会社なのであろう

 

これは、決していやみで言っているのではない
先日、たまたま大相撲の親方(元・玉の富士)が
少しはなれて所で寿司を食いながら「仕切りの大切さ」を、話しているのを
横耳で聞いてしまい
その話でグリットのことを思い出してしまったのだ
そして
本気で、「あ~そういうことなのか」と、改めて感心してしまった次第なのだ

 

グリットはやっぱり、これからも「制限時間いっぱいです」で
がんばってくれるのだろう
私もグリットに、大相撲ダイジェストのようなものを
決して期待してはいけないのだ
そう納得してしまった自分が、おかしいような気もするのだが
とりあえず、それでいいのだ

 

今日は朝一番の飛行機で「札幌」に行った
今は、札幌から最終の便で帰る飛行機の中

 

札幌の相手先で機械の納期のことを話しているうちに
「制限時間いっぱいです」の話を、また思い出してしまったのだ

 

札幌は思いっきり涼しかった
朝到着した時は、16゜C
先々週の石垣島が38゜C、先週の上海が35゜C、大変暑かった
そしてその間に名古屋が27゜Cぐらいで蒸し暑く
この涼しさは、気持ちいいというより
自分の体の体温調整機能が狂ってしまいそうで、
ちょっと不安であった

 

今日の同行は
開発部のM部長と、新入社員で開発部に配属された増田君
増田君は来なければならない理由は特になかったのだが
M部長の何か考えが有って連れてきたのだろう

 

はじめての北海道主張を
増田君は嬉しそう
それを見て、M部長も嬉しそうであった

 

 

何を勘違いしたのか
増田君は、千歳空港の土産物屋で「明太子」を買っていた
「おいしそうだったから」と彼は言う
こいつは大物かもしれない

 

 

梅雨も、やっと明けそうだ
名古屋を発つ時は、曇っていたが

 

 

あっという間に、晴れ間が見えてきて

 

 

10.000m上空には、夏の太陽が輝いていた

 

 

これから暑くなるぞ~~~。

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    代表取締役会長兼CEO

    谷 好通

    キーパーのルーツであり、父であり 男であり、少年でもある谷好通の大作、名作、迷作コラム。
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