谷好通コラム

2003年06月11日(水曜日)

731話「快洗Taoる!」

やっと洗車専用のオリジナルタオルが出来上がった
約1年がかりの開発であった
去年の夏
一回目の上海出張でお会いした「陶さん」
そのときに私たちの求めている特別仕様のタオルの開発を依頼した

要求項目は3つ

1.おろしたての新品タオルの状態から、すぐに良い吸水性を発揮すること

※タオルは、織り機で織る時に、その木綿糸に綿花油がついている
そのことによって、織り機のすべりが良くなり、スピードを上げて織る事が出来る
しかし、その油によってタオルが新品の時は吸水性が悪く
何度も洗っているうちに、だんだんその油が落ちてきて
吸水性が出て、使いやすくなってくるのだ
だから、下ろしたての新品のタオルは、すごく使いにくい
この対策として、木綿糸の状態で前もって綿花油を十分に洗い落とし
最初から油のついていない状態のタオルを作ることを要求した

しかし、強力な脱脂剤を使うと、繊維が傷んでしまい
タオルとしての耐久性が落ちてしまうので
時間をかけて、繊維をいためない洗剤で油を落とすこととなった

そして、去年の年末には
二回目の上海出張で、陶さんの工場を訪問
やはり直接会って話すと、お互いに親近感が強くなるのか
上海の陶さんは、何度も何度も試作して
そのやり取りだけで10回以上のサンプル提出に応えてくれた

そして、やっと
最初から吸水性が抜群で、しかも耐久性のあるものを作り上げてくれた

耐久テストでは、洗濯機で3日間洗いッぱなし
乾燥後、今度は洗濯機の中に異物を入れて一緒にタオルをまた何日が洗って
同時にテストした、市中品はかなりくたびれてしまったが
それでも、陶さんのタオルは、びくともしないタオルとなった

2.拭き上げ時に、一度で拭き上がる切れの良さがあること

第一の要求についての目処は立ったが
もう一つ、どうしても欲しい要素があった
「切れの良い吸水性」

吸水性が良いといっても、洗車用で欲しい吸水性とは
吸い上げる水の絶対量ではなく、「切れの良さ」
つまり、微小な水滴の筋を引きずらない
一発で拭き上げ切ることが出来る「切れの良さ」を要求した

これは、言葉ではなかなか理解してもらえず
メール、FAXなどで何度もやり取りしたが、なかなか良い物が出てこなかった
「無理かなぁ」
と思ったのはそのころであった
しかし、「百聞は一見にしかず」と言うこともある
上海に実際に行って、作業を実際に見てもらうことした
しかし、ちょうどSARS騒ぎが始まったころで、みんな上海に行くのを嫌がる
そこで、「同胞のために」と勇躍、上海に行ってくれたのは
日本に住んでいる「李えぃさん」
女性であるが、家族ぐるみで付き合っている人
彼女の里の西安に、家族で遊びに行ったこともある

上海に行ってもらう前に
李さんに特訓
洗車後の車を拭き上げる作業を、しっかりと憶えてもらった

どういうのがダメで、どういう風になればいいのか
実験をやって見せるたびに
「おぅ、分かった、分かった、すっごい～」
はしゃぎながら、夢中になってタオルを使っていた

そして、上海に
やはり、実際に見せると一発である
李さんが上海に行って、陶さんに手取り足取り?教えた甲斐があって
要求通りのものを持って帰ってきた

そこからはトントン拍子
2.3回の手直しがあって
とうとう発注にまでこぎつけることが出来た

3.塗装に対してソフトであること

この要求自体には、すぐ応えるものが出来たが
この要求を満たしつつ、1.2.の要求に応えることには苦労したらしいが

いずれにしても
陶さんのタオルは出来上がった
1年がかりで、3回の上海訪問を経て、やっと出来上がった

その間には、他の中国のタオル工場にも試作を依頼したことがあったが
いずれも
要求を伝え、サンプルが出来上がってきても
なかなか良い物は出来ず
そのことを伝え、欠点を指摘、改善を要求すると
「そんなもの出来っこないよ。素人が考えるほど簡単じゃないんだ」
というようなことを言ってきて
早々にテストを打ち切らざるを得なかった

その中で陶さんだけが
「何でも言ってくれ、どんどん言ってくれ
言ってもらわなくては分からないので、くわしく言って欲しい
必ず良い物作って見せるから、何でも言って欲しい。がんばるよ!」
中国語でFAXを打って来た
李さんに翻訳してもらって
彼の言葉を見るたびに
「いい人と出会えたものだ」と感謝した

中国、上海の田舎に工場を持つ“陶さん”