2003年03月14日(金曜日)
662話 何度も何度でも
東京ディズニーランド(略してTDL)がオープンして約20年、
来場者は約3億人だそうだ。
日本国中の人が一人残らず行ったとしても、
一人3回ずつ行ったことになり、そういう私も3回も行った。
これは驚異的なことである。
このTDLは、リピート客が非常に多く、
その人たちは何回も、何回もTDLに行って、それでも飽きないという。
出来るものならば毎日でも来たい、とすら言うのにはびっくりしてしまう。
TDLの大成功以降、
日本国中にアミューズメントパーク、テーマパークが出来たが、
どの施設もTDLのような成功には至っていない。
それどころか倒産に追い込まれているところすら続出している。
何年か前の「宮崎シーガイヤ」の倒産劇は衝撃的であったし、
つい最近では、比較的来場者が多かったはずの「ハウステンボス」とか
「レノマパーク」までが倒産し、
このような施設は、ことごとく苦しい経営内容であるという
一体いくつの生き残れる施設があるのだろうか。
その逆にTDLは、今では東京ディズニーシーまでを作り上げて
ますます来場者を増やしているという。
この差は一体どこにあるのだろうか、
現象的にははっきりしている。「リピート客の数と、その回数」
これに尽きる。
一度来場したゲスト(TDL風に言えば)が
「また来たい」と思うかどうか、そして実際にまた来て
「もっと来たい」と思うかどうか、そして何度でも本当に来るかどうか。
それに成功しているのが、東京ディズニーランドであって
消え去っていく他の施設は、その部分で負けている。
簡単に言えば、そう言い切ってしまっても過言ではないと思う。
商売、とりわけ小売業にとって
リピート客を実現できるかどうかが、成功の生命線であろう
繁盛店はリピート客が多い
リピートが多いか少ないかが
その店が繁盛するかどうかの決定要素である
これは小売業にとって疑いようのない真実である
その意味で、TDLの成功には学ぶ点が多い
リピート客が出来る要素とは一体何だろうか
「立地」
これも大切な要素だ。
TDLは、その立地が圧倒的な人口を持つ東京だからこそ成功したとも言える
いくら心底楽しい施設であっても
そこに行くまで大変な時間と費用がかかるのでは
数多くのリピート客を作り出すことには大きな障害になる
しかし、とはいうものの
TDLの来場客が東京近辺の人に大きく偏っているかといえば、そうでもない
SENSYA.COMの掲示板のたびたび登場してくれている
「ピット☆リン」「よし☆リン」さんご夫妻は山口県宇部の方で
2人とも熱狂的なTDLファンを自称し
TDLに遊びに行くことを、最も楽しみなことの一つにしているそうだ
そんな人が日本国中に膨大な数いるという
TDLを支えている大きな勢力になっている。
それを考えると、TDLの成功は「立地」にも恵まれてはいるが
決してそれだけではないことは明白だ
なぜ、人はTDLに行くのか
そこに「楽しい世界」があるから
これに尽きるであろう
楽しい世界とは、「商品」であるアミューズメント「夢の世界」と
キャストが作り出す「もてなしの世界」
では「夢の世界」とは何か
一つ一つのアミューズメント施設が作り出すのが「夢の世界」
TDLではそれが
どれも、実によく出来ている
どれひとつとっても、決して手抜きがしてない
アミューズメントとして、品質が圧倒的に高い!
実に細かいところまでよく考えられていて、客の心理をしっかりつかんでいる
アミューズメントを構成している材料も
質感のあるものが厳選されており、決して安っぽくない
ましてや、壊れているところが放置されているなどいい加減なことがない
これは大切なことだ
アミューズメント施設は
仮想に世界であり、人々はその仮想の世界の中で夢を見る
だから、いかにも偽物っぽい安手の材料で作られていたり
壊れていて、ボロが出ているところがあれば
文字通り、夢が壊れてしまうことになる
ぶち壊しになってしまうのだ
赤字のテーマパークなどで
経費節減のためか、メンテナンスが十分でなく
施設が壊れたままになっていて
せっかくの夢の世界を台無しにしている場合がある
あるいは、材料をケチって安っぽくチャチな物にしてしまっている場合がある
少しの経費節減のために、客の夢を壊してしまったのでは
一番肝心な
夢を見に来たゲストの目的が、ぶち壊しになるわけだから
リピートなどある訳がない
それから何と言っても
「もてなしの世界」=「極上の接客」
客をゲストという表現をするなら
ゲストを迎えるのは「キャスト」
このキャストがまた実にかっこいい
TDLファンには、この“キャストになるのが夢”だという人が多いそうだ
驚くべきことは
彼らも“夢の世界の一部分”になっていることのだ
「キャラクターのぬいぐるみに入る花形キャスト」から
「売店の販売員」「ウェイター・ウェイトレス」
「タバコの吸殻、ゴミを集めるキャスト」「トイレの清掃キャスト」
そのすべて
一人一人のキャスト、そのすべての人が
TDLという“夢の世界”の一部分であり
すべてのキャストが
一人残らず、エンターテイナーであるということ
夢の世界を支える「極上のもてなし」
これは全くすごいことだ
とても簡単に真似出来る事ではない
そのスキルは、他を圧倒している
ガソリンスタンドの世界でもそんな例を見たことがある
有名な熊本・アイビー石油さんの店でのスタッフ
彼らの動き、会話が本当にかっこいいのだ
お客様が、彼らの接客を
楽しんでいることが端から見ていてもよく分かる
高い値段にもかかわらず(周囲より20円高)この店に来店するお客様は
実は、彼らに会いに来ているのかもしれない
それを支える教育とは、単純なシステムではない
「な~んだ」と言われるかもしれないが
「心」だと思う
ひとつの目的に対して、全員の心をひとつにすることが
もっとも大切なことで
そのためには、経営者の高い志、理想が核となって
その理想に対する実現意欲がどれぐらい強いかどうか
それに尽きると言っても過言ではない
教育は技術ではなく
そこに理想があるかどうか
また、その理想に対して、その会社、店舗にどれぐらいの意欲があるか
それが、スタッフの意欲に直結するものであるし
本物の教育であり、本物の接客の唯一の原動力でもある
「立地」「夢の世界=最上級の商品」「もてなし=極上の接客」
そして、リピートをつかみ続けるには、その「質の維持」
素晴らしい極上の商品、接客が
いつ行っても変わらずそこにあるということは、絶対必要なことだ
行く度にその質が変わっていては
悪い時に当ったところでリピートは終わってしまう
いつも最高でなければならないのだ
質の維持は大変難しい
しかし、それが欠けたときに、今までやってきたことが霧散してしまうとき
お客様をつかむことは大変である
そして、つかみ続ける事はもっと大変である
しかし、それを“失うのは実に簡単だ”
一回手抜きをすれば、それでおしまい
たった一回だけ手抜きをすれば、そこでリピートは終わる
そこが難しいところである
最後に
リピート客が何度も何度でも来てくれる要素
「新鮮であること」
前記のリピートを呼ぶ要素が、いくら素晴らしくても
何度行っても全く同じては、リピートに限度が出てくる
商品、接客の質の維持は絶対に必要ではあるが
何度行っても、全く同じ事しかない、というのでは
さすがに飽きてくる
新鮮であることも必要だ
TDLでは、その時その時でいろいろなイベントを催している
「今度はクリスマスの時に来たい」とか
「今度はサマーフェスティバルをやっているときに来たい」とか
いろいろなイベントによって新鮮さを出している
また、いくつかある劇場では出し物を常に新しくしているという
その上、ディズニーシーまで作ってしまい
ディズニーランドを経験した人に、その新しい素晴らしさを期待させる
今のTDLに、スキはなさそうだ
TDLの一人勝ちはまだまだ続きそうである
「立地」「夢の世界=最上級の商品」
「もてなし=極上の接客」「質の維持」「新鮮さ」
TDLから学ぶこれらの要素から
洗車、キーパー、快洗隊のあり方を
明日は検証してみたい
今日また東京に行った
いろいろ悩みがあったが
新幹線から見えた
「モヤはかかっているが、かろうじて見えた富士山」のように
なんとか、視界が開けてきたような気がする