谷 好通コラム

2002年12月23日(月曜日)

600話 痛恨の3速ギヤ

いよいよ600話
また一つの区切りが来た

 

その記念すべき区切りの日に
痛恨の出来事があったことを報告せねばならない

 

今日は私の今年最後の休日
MINEサーキットで今年最後のレーシング走行することを選んだ

 

ところが、手違いがあって
いつものキーパーレビン25番を乗ることが出来ない
しょうがないので
前回の耐久レースで優勝の37番シビックに乗ることにした

 

シビックはレビンとは、かなり違う走り方になる
シビックのギヤ比は
レビンに比べてかなりクロスしている

 

レビンの場合は
コーナーで2速に落とし
コーナーを抜けたら加速、3速まで上げて
また、コーナー手前で2速に落とす
2速→3速→2速→3速
その繰り返しのコーナーが多いのだが

 

シビックの場合、ギヤ比が低く設定され、クロスしているため
ほとんどの直線部分で4速まで入り
ブレーキングしながら
4速→3速→2速
と、ヒールアンドトウをしながら2回シフトダウンをしなければならない
そして、コーナーをつなぐ短い直線で
2速→3速→4速と上げ
コーナーでまた2速まで順番に落とす

 

レビンの場合は2コーナー手前だけで、そういうことをするが
シビックの場合は、
そういうことを、4箇所のコーナーでやらなければならない

 

かなり忙しいのだ

 

クラッチフットが少し不自由な私にとって
これはけっこうな負担になる

 

加えて
メインストレートでは
レビンが4速のままで行けるのに
シビックの場合は、5速まで上げなければならない

 

最終コーナーを立ち上がってから
2速→3速→4速→5速と
3回シフトアップしていくのだ
特にメインスタンド前のあたりで、4速→5速に上げる時は
かっこいいが
とっても危険なことをはらんでいる

 

4速→5速に上げるつもりが
4速→3速へ、ギヤを下げてしまうことがあるのだ

 

4速から5速へは
シフトをニュートラルの位置で、一度右に持っていって
上に入れるのだが
右にシフトを持っていくのがいい加減だと
真っ直ぐ上の3速に入ってしまう
ということ

 

そうするとどうなるか
グランドスタンド手前のシフトアップ時には
4速で9000回転ぐらいまで回っている
速度は170~180kmぐらい
シフトを誤って
そのまま3速に入ってしまえば、一瞬のうちに13000回転ぐらいまで
エンジン回転が跳ね上がってしまう

 

シビックのV-TECエンジン
強度の限界は、9600回転ぐらい

 

それを強制的に13000回転ぐらいまで回してしまうと
カッキーーンッという金属的な叫びを上げて
瞬間的に壊れてしまう

 

こうなると、このエンジンはブロックまでダメージが達し
使い物にならなくなってしまう
エンジンブロー!

 

チューニングエンジン1基、パア~である

 

早い話が、私は、今日、それをやってしまったのだ・・・

 

 

シビックには以前にも2度ほど乗ったことがあるが
経験、という意味で乗ったに過ぎず
タイム的にも話にならない程度であった

 

しかし、今日は3本ぐらい乗って
タイム的にも攻めて見て
シビックが自分のものになるかどうか、試して見ようと思った
来年のレース活動をどの方向で行くか
という意味もあって

 

1本目、スタートしてすぐ
レビンの倍ほどあるように感じるシフトチェンジ
しかし、それがそれほど苦にならないことにホッとした
もちろんストレートでの、4速→5速の時は
絶対にミスをしないように、十分に注意をしながら

 

タイム的にも
お話にならないレベルではなかった
周を重ねるごとに少しずつタイムアップし
6周目に、1分47秒台
なかなかのものである

 

しかし、次の周には48秒台に落ちてしまったのだ
これはイカンと
一生懸命、タイムアップしようと夢中になる
だが、次の周もやはり48秒台
チョッとムキになった

 

運命の8周目
ストレートにやってきて
2速→3速→4速と、正確に9000回転でギヤをつないで行った
そして回転に注意しながら
4速→5速
しかし、シフトミスに対する注意を一瞬忘れて
すばやいシフトに気を取られてしまった

 

シフトアップ(のつもり)と同時に、クラッチをつなぐ
ギャ~~ンと
回転が異常に跳ね上がったと思った瞬間
キーーンと金属音
3速に入れてしまったのだ!
やってしまった!

 

「アチャーッ」と思って
バックミラーを見たら、巨大な真っ白い煙が爆発的に出ていた
エンジンオイルが燃焼室の中になだれ込み
一瞬のうちに燃えた証拠だ

 

ボンネットの隙間からも
白い煙が立ち上がる

 

前も後ろも真っ白
頭の中も真っ白

 

完璧なエンジンブローであった

 

惰性で1コーナー手前まで行き、路側にストップ
一巻の終わりである

 

しばらく車の中で、宙を見上げているしかなかった

 

口惜しい・・
自分に腹が立つ・・・
恥ずかしい・・
情けない・・・

 

色々な思いが巡り
目をつむる

 

これで、今年のレース活動が完全に終わった
こんな終わり方ってあるんだろうか

 

この間の耐久レースで感動の3位入賞
あそこでやめておけば、ハッピーエンドであった
こんなことになるのだったら、「来るんじゃなかった」なのか
いや、そんなことは思わない
断じて思わない

 

これが、私が選択した
今年の終わり方だったのだ
それが好むか好まざるかに関わらずだ

 

受け入れるしかない

 

きっと、この事があったからこそ恵まれる幸運もあるはずで
この事がどう生きるかは
自分次第だと思う

 

妙に納得した今年最後の休暇であり、レース活動だったのでした

 

“中”が壊れたので、外から見ても何も変わった様子はない
完璧に壊れたエンジンと、壊した犯人

 

 

自走できないので、軽トラックに引かれてガレージに戻る可哀相な37番

 

 

今年最後のMINEサーキットは、快晴であった。また来年も来るからな

 

 

それにしても
バックミラーに写ったあの真っ白で巨大な煙
脳裏にしっかりと焼きついた
何十年か先、私がボケても、きっと憶えている様な気がする

 

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    代表取締役会長兼CEO

    谷 好通

    キーパーのルーツであり、父であり 男であり、少年でもある谷好通の大作、名作、迷作コラム。
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