谷 好通コラム

2002年11月19日(火曜日)

576話 パイロットも掃除

久しぶりに「中日本エアーライン」に乗っている
米子に行くのだ

 

この航空会社は、名古屋鉄道、通称“名鉄(メイテツ)”の関連会社である
運行を初めてまだ10年ほどの、若い会社である

 

航空会社は、自由化による価格競争に加えて
去年9月のニューヨーク連続テロ事件以後
旅客の低迷によって
非常に苦しい経営を強いられている

 

吸収合併を繰り返し巨大化した
世界第2位の「ユナイテッド航空」ですら
経営危機が報じられ
「このままでは、今年年末の資金繰りが行き詰まり
倒産確実なので
9000人!の人員削減を約束することによって
連邦政府の保証を取り付け、融資を受けることによって
この危機を切り抜けようとしている」
昨日の新聞にそう書いてあった

 

日本でも、日本航空と日本エアシステムが一緒になる
何年か前までは、絶対考えられなかったことで
航空不況は深刻なのである

 

ANA.JAL.JASの子会社で
近距離を比較的小さな機体で運行しているコミューター便会社
ANK.Jエアー.JACなども例外ではなく
その経営は苦しい

 

そんな中で、一人気を吐いているのが
この「中日本エアーライン(NAL)」
黒字会社なのである
航空会社としては、これは非常にめずらしいこと

 

この会社は、3大航空会社の支配下に入っていないので
独自の路線を取っている

 

保有する機体は、「フォッカー50」
その名のとおり50人乗りの小さな機体で
高翼、2発のターボプロップ、プロペラ機である
「フォッカー」は、オランダのメーカーで、何年か前に倒産している
これを4機持っている

 

ニックネームは「赤鼻のポチ」

 

 

ついこの間まで3機だったはずだが
今は4機持っているそうだ
今時、機体を増やす航空会社があること自体が驚きである

 

10年ほど前、この会社が運行を始めたころは
2機のフォッカー50で
名古屋⇔富山
名古屋⇔米子
名古屋⇔高松
この3路線を運行していた
このころから
私たちは好んでこの飛行機に乗った

 

それから機体を3機に増やしたりして
名古屋⇔米子⇔福岡
名古屋⇔福島⇔函館
名古屋⇔徳島
と、路線を増やしたり、延ばしたりしてきた

 

いずれも
既存の大手航空会社が路線を持っていない、“スキマ”路線である

 

スキマ路線を、小さな機体で
ジェットエンジンに比べて1.5倍燃費が良いターボプロップエンジンを利して
日本国中を飛び回っている

 

機体も小回りが効く飛行機ならば
会社自体小回りの効き、フットワークの軽さを身上としている
今現在
NALの路線は、四国に偏っている
名古屋⇔富山 1便/日
名古屋⇔米子 1便
名古屋⇔福島 1便
名古屋⇔高松 1便
名古屋⇔徳島 2便
名古屋⇔松山 4便!

 

注目すべきは、突然現れた名古屋⇔松山の4便であろう
この路線は、従来、全日空が運行していた
170人乗りのA320を、朝夕2往復飛ばしていたのだが
キャパシティ※170人*4(2往復)=720人
乗機率は低かった
30%を切るほどか
720人*30%弱≒200人/日
採算が合わず
NALに路線を譲渡してしまったらしいのだ

 

この路線を手に入れたNALは
50人乗りのフォッカー50を、4往復させることにした
キャパシティ※50人*8(4往復)=400人

 

利用客にとっては
今まで2往復で不便だった路線が
4往復になって便利になった
そこで利用客が増えた、乗機率70%を超える好成績
400人*70%強≒300人/日

 

この高い実績に
調子に乗ったNALは
12月から、この路線を5往復に
年末年始は、6往復に増便すると宣伝している

 

小さな会社、少ない路線数だから
飛行ダイヤも、実に小回りが効く
儲かる路線にダイヤを集中してくる
ゲリラのような会社である

 

この会社のスタッフも面白い
何でもやるのである

 

つまり
スチュワーデスさんでも
(普通は客室乗務員=キャビンアテンダント・CAと呼ぶが、
NALは正式にスチュワーデスと呼んでいる)
カウンターに立って、チケットの販売
チェックアウト
手荷物の預かり
ボーディングインのチケットのもぎり
飛行機までの案内
飛行が終わってからの、機内の清掃まで
何でもやる

 

 

機内の清掃といえば
操縦が終わった“パイロット”まで、当たり前のように機内清掃をやるという
他の航空会社で
一昔前までは
スチュワーデスが機内清掃をやることすらなかった

 

ましてや
パイロットまでが機内清掃をやる航空会社は
日本では、このNALだけであるらしい

 

そのほかにも、スチュワーデス、パイロット共に
いろんな仕事を
手分けしてやっているのであろう

 

何でもあり、である
会社がきちんと収支が取れて、自分の職場が安定する
自分の仕事が何であろうと
やれることはやる

 

パイロットなんだから、「掃除なんかやれるか」
そんな人は、この会社では通用しないらしい
パイロットだって
会社が赤字で、職場を失えば
地面に降りた鳥と同じ、ただのオヤジ
そうならないためにも
なんでもやる

 

NALのホームページがある
このホームページは、社員スタッフが自主的に作り
自主的に管理しているものらしい
アットホームな感じが
この会社のあり方を示しているようだ

 

会社は皆のもの
職場は皆のもの
職場を守っていくのも、盛り上げていくのも
皆でやる

 

勉強させられることが多い会社
NAL、黒字の会社である

 

この路線では、遠くに白山が見える
雪を被った山と、見事に赤く染まった紅葉がすばらしかった

 

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    代表取締役会長兼CEO

    谷 好通

    キーパーのルーツであり、父であり 男であり、少年でもある谷好通の大作、名作、迷作コラム。
    読めば読むほど元気になること間違いなし。・・・の、はず。

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