谷 好通コラム

2002年07月15日(月曜日)

469話 真夏のまぼろし

今日は、MINEジュニア耐久レース、本番の日
毎度のごとく、早起きしてホテルを出かける

 

今日の降水確率は
昨日の情報の時点では70%であった
ところが朝の時点では、青空が広がり、雨が降る様子はまったくない
だけど、と、疑いつつMINEに
(MINEは他が晴れているときでも、雨が降ることが多い変なところ)

 

車に乗るのは
私と、へな?ことグリット!吉田 (彼は今回、出場を断念した)
そして
モータースポーツジャーナリストの大串さんの、3人
(去年の最終戦を一緒に走ってくれた方)
H.オサムは、別の車でもっと早くに出かけた

 

その大串さんは
今回、清水さん、植村さんと37号車で出場する

 

MINEに到着したときには
もうすでに、サポートスタッフの人たちが来ていた
特に、耐久レースの時は、沢山の人たちが応援に駆けつけてくれる
いつもの事ながら
感謝の気持ちでいっぱいだ

 

色々なスケジュールをこなしていく
最初に、大事な予選

 

私は、まずまずの結果、クラス4位の成績
意外とうまく行って、チョッとうれしい
それよりも、H.オサムがクラストップのタイムを出したのは、びっくりした
まるっきり練習もしていないのに、こいつは本当に速い

 

今回出場の3人
スタートが私で
2番手にH.オサム、ラストを山本
だから、H.オサムが予選でクラストップのタイムを出してしまったので
スタートの私は
クラス先頭ポジションからのスタートになってしまったのだ

 

まいったなぁ~
と思いつつも、やるしかないので
腹くくって、本番のレースに臨むことにした

 

耐久レースは、いつもローリングスタート
緊張はしたが、暑い方がこたえる

 

H.オサムが予選で、クラス1位なんかになっちまうので
私より早い車が、私の後ろのグリッドにいる
レースでは、スタート直後に
左右からごぼう抜きにされるかと思っていたら
意外とそうでもない
なんと、スタートしてから1周経っても
私は、誰にも抜かれなかった

 

それでも、何周か走るうちに
順番に抜かれ、予選時の私のタイム通り4位にまで下がった
しかし、それからが不思議で
あまり差が開いて行かない
ジワジワとは開いていくが、それでも視界から消えてしまうほどではない

 

と、こう書いていくと
ひょうひょうと走っているように聞こえるかもしれないが
実は、本人は思いっきり必死であった

 

それも半端な必死ではなかった
暑い!
7月の半ば
気温はたぶん
いや、間違いなく30゜Cはかなり越していた
そんな中でのレースは
経験したことのないほどの暑さであった

 

特に背中が暑い!
腕も暑い!
ヘルメットの中も暑い!
足も暑い!
暑い! あつい! 熱い!

 

私のノルマは20周

 

1周、1分50秒ぐらいなので、全部で2200秒
37分ぐらい
信じられないぐらい暑い状態で
この時間、激しく手足を動かし、Gに耐えながら、神経を集中し続けるのは
想像以上に大変なのだ

 

それでも、私の体力を考えてくれて
他のチームのスタートドライバーに比べると
2/3ぐらいの周回にしてくれている
それが20周なのだ

 

15周を超えたぐらいから
頭がモウロウとして来た
そういう状態を、私は今まであまり経験をしたことがなかった
頭が、勝手に違うことを考え始めたりして
コースにまったく集中できない

 

シフトを間違えたり
サインを見落としたり
耐久用にヘルメットに付けてもらった給水パイプを
うまく口に持っていけなくなったり

 

いろいろ失敗をし始め
ただボーっと走っているだけ
時間が、ものすごく長く感じる
それでも
手と足が勝手に動いて
アクセル全開と、ブレーキングと
シフトダウン、ヒールアンドトウ、そしてコーナリングを
かろうじて繰り返していく

 

それでも不思議に
前の車と間隔があまり開いて行かない
しかも
クラストップを行く上村さん、37番の姿がまだ見える

 

ノルマを走りきって20周
自らピットインをするサインを出したときは
安堵感で
あぶなく気を失いそうになった
結局、21周を走ってピット帰ってきたときには
クラストップと18秒遅れの4番手であった

 

車から転げるように降りた
体温が上がってしまっているのか、体が燃えているように熱い
声も出なかった

 

使用前

 

 

使用後

 

 

みんなが、私に期待?していた結果よりも10倍の出来であった
20周で、トップと18秒の差は、私には出来すぎである

 

ドライバー交代した2番手H.オサムは
戦闘力がまるっきり違う
1分48~9秒台
走り始めてすぐ、1周ごとに2秒ずつぐらいのペースで
トップに迫っていく

 

10周もしないうちに、実質的にトップに出た

 

「ホンとに、これは優勝するかもしれない」
耐久レースは
ピットインして、燃料補給とか、ドライバー交代の要素が絡むので
簡単には勝てないが
それでも、順調に行けば優勝できる

 

私は、モニターを見ながら
そのことが自分達のことではないような
夢を見ているような
非現実のことのように思われて、不思議であった

 

 

結果的には4位
クラス4位であった

 

H.オサムが
ノルマの40周!を走り終わる数周前
突然、ドライブシャフトのブーツが破れ、グリスが飛び出してしまい
走るのがやっとの状態になってしまった

 

ラストの山本君に渡したときには、ブレイク寸前
ゴールまであとわずか15周のところで
とうとう壊れた
それでも、やっとのことでピットイン

 

わがスーパーメカ小林君と、川上さん、それからいつもレースに来てくれる
メカに強いレーサーたちが
必死の、神業とも言える修理

 

その姿に、私は、胸深くからこみ上げてくるものがあった
感動した

 

わずか10分足らずの時間で
また、25号、わがKeePreレビンはコースに出て行った

 

山本は、H.オサムに負けるとも劣らぬ走りっぷりで
見事4位をキープしてくれた

 

 

今回は、途中まで本気で優勝のペースであった
ひとつのアクシデントで
結局4位になった

 

H.オサムも山本君も、そしてメカを担当してくれた小林君も
その悔しがりようは
言い尽くせないものがあった

 

でも、私は幸せであった
心の隅々まで幸せであった

 

たくさんの人に応援されて
想像以上に頑張れて
チームとして、一つのことに燃えるカタマリとなって
闘い抜いて
すべての運命の基に
その結果が4位であった、ということ

 

それは
夢のような出来事であった

 

思い出すと、一つ一つのことに涙が出てきそうになるぐらい
すてきな
夢のような出来事であった

 

雨が降るであろうとの天気予報は見事にはずれ
暑く晴れた夏の日であった

 

真夏の熱いまぼろしか

 

 

家に帰り着いたのは、夜11時半
これを書いているうちに日付が変わってしまいました。

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    代表取締役会長兼CEO

    谷 好通

    キーパーのルーツであり、父であり 男であり、少年でもある谷好通の大作、名作、迷作コラム。
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