2002年07月08日(月曜日)
463話 食うか食われるか
ある犬の家族
母親犬と、その子供が2匹、両方ともメス犬で
女3匹の家族である
数年前にその母親犬“ママ”が、7匹の子供を産んだ
全部で8匹を飼うのはとても無理で
だから、飼い主は、2匹の子供を残して、5匹の子供を外に出すことにした
里親に出したり、信頼できる犬屋さんに買って貰ったり
外に出す5匹をどの子にして、残す2匹をどの子にするのか
飼い主の一人は、体が大きく丈夫そうで、器量のいい子を
残す2匹として選んだ
すると、もう一人の飼い主が
「そうじゃない」と言い出した
「外に出す子は
どんな人が飼い主になるか分からない、だから
ぜひ可愛がってもらえるように、可愛い子でなきゃいけない
外に出す子は
どんなところで暮らすのか分からない、だから
体が大きくて、丈夫な子でなきゃ
ここで飼う子は、母親と一緒に暮らせるだから
それだけでも幸せ
一番器量が悪そうな子と、一番体が小さな弱そうな子を残さなきゃ」
なるほど、で
丈夫で可愛い子を残そうと言った飼い主は
自分にとって“得”になりそうな子を残そうとして
外に出て行く子の幸せを考えなかったことを恥じた
そして、残ったのは、体は大きく、顔だけ真っ黒で
あまり、血統が色濃く出ていない
その犬種にすれば器量が悪い子、“デカ”
そして、体が一番小さく、母親のおっぱい争奪戦にいつも負けて
飼い主の応援がないと
おっぱいにありつけない、ちょっと情けない奴“チビ”
でこぼこコンビである
2匹の子犬はすぐに大きくなって
母親と同じ成犬になってしまった
そうなると、もう親も子もない
対等に小競り合いもするし、お互いに嫉妬もする
ただ、子犬の時に体が小さかったチビは、成犬になっても体は小さく
体が大きかったデカの2/3の体重しかない
母親犬ママは、出産後、肥って立派な肥満犬である
体重はデカと同じぐらい
3匹とも、一番の楽しみは、もちろん食事
体の大きさに差はあるが、同じ量のエサを与える
最初に食べ終わるのがデカ
体の大きいデカは食欲の塊で、一気に食べてしまう
次に母親ママが、肥満の体でゼーゼー言いながら懸命に食べる
チビは、いつもあまり食欲が無い
まったく無いことはないのだが、他の2匹に比べると
お上品というか、ガツガツしたところがない
エサをもらっても
仕方なく食べている感じ、当然食べ終わるのも遅い
チビが食べ残してウロウロしていると
食欲のデカがちょっかいを出す
チビが食器の周りにこぼしたエサを、デカが拾い食いするのだ
あわよくば、食器の中の残りのエサも
それを見つけたチビが
猛然と怒る
「グァッグァッグァッ」と、怒りの声を上げながら
デカに食らいついていく
チビは、体は小さいが、気が強く
何についても自分が一番であると、いつも主張する
それに対して
体の大きなデカは、おっとりしていて
喧嘩を自分から仕掛けたりすることは滅多にない
チビに怒られたデカは、スゴスゴ引き下がる
デカを追っ払ったチビは
残ったエサを、“取られてなるものかと、また食べ始める”
そして、結局自分のエサを全部食べることになる
食欲はあまりないし
全部食べるのは大変だけど
デカに取られるのはイヤだ
デカに食べられてしまうぐらいなら
自分で、食べる
食べたくないけど、“取られるぐらいなら自分で食べる”
これぞ「食うか食われるか」
(ちょっと、違うか?)
こんなことをチビとデカは、毎日、食事のたびにやっているのだそうだ
畜生のなせる業と笑うなかれ
そのおかげで、食欲があまりないチビでも
エサを全部食べる気になるのだ
これも競争の原理のひとつかもしれない
もうひとつの「食うか食われるか」
馬鹿デカイ亀がいた
ケヅメリクガメといって、アフリカ大陸に住む陸ガメとしては最大の種
現在体重23kgだそうだ
最も成長した段階では、50kgにもなる者もいるという
まだ青少年クラス
この陸ガメは大量に、実に大量に食う
植物のほとんど
それに饅頭とかが大の好物とか
たとえば一日のエサの例
小松菜2束、キャベツ1玉、きゅうり2本、なすび1本
その他特売の野菜ひと山あるいは、ソーメンとかウドンひと玉、などなど
最後にアンパン
これ全部、一日で食べてしまうのだそうだ
結構好き嫌いの順番がはっきりしていて
好きなもの順に食べる
飼い主は、このカメの食費に悲鳴を上げ
パン屋でもらってきた食パンのミミを与えることもあるそうだ
だが、カメは、このショッパンのミミはあまり好きではない
たいてい最後まで残す
その食パンのミミを、スズメがつつきに来る
スズメの体重はたかが30gぐらいで
このカメに比べれば700分の1の微々たる存在
そのスズメが
自分があまり好きでもないので残した食パンのミミを
つつきに来ると
このカメは頭にくるらしい
すっ飛んできて
スズメを蹴散らし、さっさと、残したパンの耳を食べてしまうのだそうだ
これも「食うか、食われるか」か?
でかい図体で、ちょっと情けない亀ではある
最後の「食うか、食われるか」
ただいま東京へ向かう新幹線の中
これ以上マズイものはない、と思っていた新幹線のサンドウィッチ
誰に聞いても、「あれはマズイ」と言っていた
あのサンドウィッチ
きっと誰にも「食われなかった」のだろう
やっとマズイことに気が付いたか
モデルチェンジをしていた
試しに「食ってみるか」で、ひとつ食べてみた
マアマアであり、食ったことに後悔はしなかったが
また食べたいとは思えなかった
東海道新幹線の車内販売を、昔から独占している「日本食堂」
一度「食うか食われるか」の競争をしないと
本格的に美味いサンドウィッチには、なりそうにない
マッいいか? (#^.^#)