2002年02月27日(水曜日)
364話 JALとJAS
福岡から名古屋に帰る飛行機
全日空の便に乗るつもりであったが
用件が早めに終わったため
予定より2時間早い日本航空の飛行機に乗った
日本航空は日本最大の航空会社
十数年前まで、国際便は独占的に日本航空が運航していた
半官半民のような会社であった
今でも国際便のシェアは、日本航空が圧倒的に大きいものを持っている
だから、航空運賃全体の売上は、日本航空が未だに日本一である
しかし、規制緩和が進む中で、国際便の路線開放があり
全日空も、日本エアーシステムも国際便に進出し
日本航空の天下は崩れた
そして、世界的な航空運賃の価格競争の中
国際便の運賃は猛烈なディスカウントの嵐に巻き込まれ
東京-ニューヨーク往復5万円とか
東京-ヨーロッパ往復8万円とかの激安チケットが当たり前になった
去年の暮れ、ドイツに行った時も
名古屋-フランクフルトのエコノミー往復運賃が「8万円」であった
それでも、ニューヨークの連続多発テロの影響もあって
ガラガラの状態であった
名古屋-フランクフルトは、片道11時間
その往復がなんと8万円とは、すさまじいディスカウントぶりである
その価格競争の中
パンアメリカン航空など名門の航空会社が次々と倒産していった
そんな中
日本はバブルで、世界一高い人件費となり
コストの面での競争力が低くなり、
日本の航空会社の国際便での採算性はよくなかった
決して良くなかった
そんな中でも
国内線は、名古屋-福岡の片道普通運賃21,000円、往復36,400円
予約変更無効の特割りで13,000円、往復で26,000円
日本で一番旅客数が多い東京―札幌で
通常期普通運賃、片道28,000円、往復48,400円
特割りで、片道18,000~20,000円、往復36,000~40,000円
たかが1時間あまりの飛行での運賃である
世界一高いといわれた日本の国内便運賃は
価格競争の自由化の中でも、激安の国際便の運賃に比べれば
まだまだ高い水準である
その中で、国内便で一番のシェアを持っていた全日空は
航空不況の中でもそれなりの採算を保っていた
加えて「マイレージカード」とかの企画も
トップシェアの全日空に圧倒的に有利に働いた
それに比べ国内便が弱かった日本航空、JALが
経営的に苦しいのは分かっていたが、なんと、第3位の日本エアーシステムJASと
合併すると聞いたときは
さすがに寂しかった
JALは花形である
JALのスチュワーデスといえば、女性の就職先の最高峰であった
花嫁道具として、最高級であった
そしてそのスチュワーデスさんの頭上に君臨するのが「パーサー」であった
「パーサー」とは、国際便の機内をコントロールする花形中の花形
その「パーサー」という名前を
こともあろうに
新幹線の車内販売のオネェちゃんが、名乗るようになってしまったのだ
パーサーの悲劇である
国際便のパーサーとは、3ヶ国語ぐらいがペラペラで
外交官を彷彿とさせる存在感すらあった
その名誉な職業の名称が
新幹線の物売りのオネェちゃんに与えられてしまったのだ
私は、その事があったころから
日本航空、JALの悲劇が始まったような気がしてならない
天下りの溜まり場のようなJASと合併して
あの誇り高きJALはどうなっていくのであろうか
何でもありの現代
ツライ一面である
何年か前
ボーイング767-300で札幌から名古屋に帰ってきたとき
乗客の一人が
客室乗務員(CA=キャビンアテンダント)、早い話がスチュワーデスに話しかけた
「大きい飛行機ですね~、なんという飛行機なんですか?」
CA曰く
「そうですか、これは日航では一番小さな飛行機なんですよ」
767-300は、280人乗りの、国内便ではかなり大きな方の機体
でも、このCAは
国際便中心の日航の中では一番小さい機体であることを
誇らしげに言いたかったらしい
しかし今、日航はボーイング737という、かなり小型の機体をドンドン増やしている
それどころか
「ポンバルディアCR-J」という日本の定期路線では一番小さい機体を
ついこの間採用した
世の中が変わりつつある
激しく変わりつつある
かつての栄誉は、何の意味も持たなくなってきている
そんな事を
今乗っているボーイング737-400の小さな機体で
たった1時間あまりの短い路線に
品のいい、中年のCAがいた
きっと何年か前まで
一番華やかであったヨーロッパ路線で
パーサーを張っていた人かもしれない
そんな品のあるおばさんが
ウーロン茶とコーヒーを配っていた
すばらしく洗練された笑顔で
何でもありの現代
頑張らなくてはと、気を引き締める