2002年02月05日(火曜日)
350話 スピードも限界
随分以前の話になるが
インストラクター日記に書いてあったこと
小林製薬のホームページに
消費者からの商品提案を受けるコンテンツがあって
そこにOGINOが投稿したそうだ
彼は「さか剥け」がよく出来るそうで、ウットウしいと思っていた
そこで、その小林製薬のHPに投稿した
「さか剥けに“接着剤タイプの絆創膏”があったら便利と思う」
という提案
チョッとだけの“さか剥け”に
バンドエイド(これは見事にブランディングに成功した名前)は大げさ過ぎる
かと言って、何もしなければバイ菌が入ったら怖いし
何かに触れば痛い
ちょうど接着剤を塗るような感覚で、簡単に処置が出来るものがあったら便利だ
そんな提案だったらしい
投稿して何日かしたら
小林製薬から返信が来て「採用させていただきます」と、あったそうだ
それから、わずか1ケ月後
「さかむけ君」とか、「さかむけーる」とか、チョッと憶えていない
あまりセンスのいい名前ではなかったが、製品化された店頭に並んだという
提案から1ケ月で
商品化されて、店頭に商品が並ぶという事は
驚異的である
とんでもないスピードである
私たちもたくさんの商品を開発してきた
全くの新しい種類のケミカルなら、商品化までに6ヶ月~1年かかる
商品は中身が一番肝心なので
その開発には、並々ならぬ苦労をするが
たとえ中身が出来上がっても
商品として出荷するまでには、最低3ヶ月はかかる
1.それをどんな容器に詰めたら便利か
・ボトルか、エアゾールか、あるいは特殊な容器か
2.特殊な容器に詰めるならば、容器の開発から始まる
3.容量はどうするのか
・1回の使用量を、何台かの色々なタイプの車での作業で確認、確定する
・使用目的と、使いやすさを考えて、何台分の容量にするかを決定する
4.エアゾール缶の場合
・噴射圧はどれぐらいが一番使いやすいか
・充填ガスは何が最適か、DME、LPG、CO2、窒素などでテスト、決定する
・噴射パターンは、どのタイプが一番使いやすいか、すべて実車で確認
・錆の発生などの問題は出ないかどうかの経時テスト
・錆の発生が予想される場合は、内面コート缶、アルミ缶の採用などでテスト
5.デザイン
・ネーミング、出来るだけ分かり易い、しかも好感の持てるような名前を考える
・商品デザインは、大変重要な要素であり、GRITの腕の見せ所
・エアゾール缶は、缶に印刷した時に艶が出る。紙に書いたものとイメージが全く違うので、けっこう苦労する
6.PLと、安全データシートの作成
・缶あるいはボトルの裏面に書いてある取り扱い注意の文章も1品1品違う
・これは研究室で作るが、書き方がだんだん変わってきて難しい
7.デザインとPLが出来たら、缶印刷用の製版づくり
・これは時間がかかる1週間~2週間
・ペーパー上のデザインが、缶印刷では無理な場合があって、
デザインのやり直しの場合もある
8.その間に、梱包用のダンボール製作
・1箱何本入りにするか、運賃と製品価格とのバランスを考えて決める
・ダンボールのデザイン
・ダンボール箱の強度の確認。それからやっと製作
9.取扱マニュアルの製作
・試作段階から、快洗隊で実際に使って技術マニュアルも確定していく
・マニュアルの1回目の原稿が手書きで作られる
・GRITから第1稿→修正第2稿→3稿→最終稿→最終校正→印刷
アイ・タック技研は技術が一つの売り物なので、マニュアルには凝る
10.告知チラシ、ポスターなどの製作
随分、細かく書いたように見えるが
実は、もっともっと手間のかかる事をして、やっと一つの商品が出来上がる
商品開発には、たくさんの経験を積んで来て
かなり、手早くやれるようになったつもりだが
それでも3ヶ月は、どうしてもかかる
特に今回のように
「180コート」「SONAX商品14種類」「快洗Boss」
山程の商品を、一度に同時進行で開発して行こうと思うと
並大抵の苦労ではなかった
開発の中心になっている“開発部”の責任者は
立派な「胃潰瘍」になった
これだけの手間がかかる事を
小林製薬は、提案採用から1ヶ月で、商品化し店頭に並べてしまった
その力量はすさまじいものがある
実際に、自分たちも商品開発をやっているので
そのすさまじさが、余計に分かる
現代はスピードの時代
すべての行動にスピードが求められる
すばやいレスポンスが絶対条件になってくる
私たちも必死でやっている
私たちの場合はいつも、現場での実際の商売を視点に置いているので
製品開発は
実際の店頭での商売からのフィードバックから始まる
だから
大変だし、だから強いとも思っている
今、長崎
朝5時半に起きて、7時過ぎの飛行機に乗った
長崎から諫早まで、路線バスで約1時間
パスは平和であった
のんびりと流れる時間の中で
自分が“スピード、スピード”と叫んでいるのは
「チョッと焦っているのかなぁ」
なんて、思ったのでした
もっとのんびりした生活もいいなぁ、などと思ったりもしたのでした
バスに揺られて
ウトウトっとしながらの、平和な1時間
※飛行機に中からのショット、モヤから頭を出した雲仙普賢岳
※ひょっとしたら人類のもっとも愚かな構築物の一つ、諫早湾の汐止め堤防
※県営路線バスのプロフェッショナル運転手さん(見事な運転だった!)