谷 好通コラム

2001年12月30日(日曜日)

318話 大晦日の思い出

今年もいよいよ、あと2日
2001年が終わろうとしている

 

私は18歳のときからSSで働いていた
SSの年末は昔から大変忙しく
大晦日の夜までテンヤワンヤであった
だから私は、SSに勤め始めてから、つい2.3年前までの約30年
「紅白歌合戦」を見たことがなかった
べつに見たいとは思わなかったし、今でも見てはいないが
とにかく、大晦日の夜まで忙しかった

 

お正月はみんな晴れやか、きれいな車に乗りたい
だから、できるだけ年末ギリギリに洗おうとする

 

快洗隊の今日は、朝、開店と同時に大混雑
待ち車が道路に5~6台はみ出ている
お天気は、小雨混じりの曇り
本来ならば洗車には全く適していない天気なのだが
ありがたい事だ

 

私は事務所で一人留守番
一生懸命原稿を書いている
硬い内容の原稿を5つ、正月明けまでにどうしても仕上げなければならない
チョッと行き詰って気分転換にこれを書き始めた

 

12月、特に年末は、いろいろな思い出がある
どちらかと言うと、「しんどかった~」の類のものが多い
30年近く、30回近い大晦日のドタバタを経験してきた
20歳台、30歳台は馬力で乗り切れたが
40歳を超えてからは、とにかく足の痛みとの戦いであった
でも、31日大晦日というはっきりしたゴールがあるので、頑張れたのだと思う
それに、お客様が次から次へと来てくれるのは
商売冥利に尽きてこんなに楽しい事はなかった

 

今は、スタッフのみんなが頑張ってくれていて
私は足を暖めながら事務所で原稿書き
本当にありがたいと思う
幸せだ

 

大晦日の思い出を一つ
10年近く前
現トレーニングセンターがまだ「クリーンベース」として営業をしていた頃
そして、刈谷快洗隊は「共同石油・高津波給油所」というガソリンスタンドであった

 

私は高津波給油所の方で、5人ぐらいで年末の大混乱をこなしていた
あの頃の高津波もすごかった
155坪の敷地にダブルの計量器2基と、灯油計量器1基で
H.Rガソリンを200KL、軽油50KL、灯油70KL、油外収益300万ほど
これを5人でこなしていた
今の快洗隊と同じように、年末は道路まで行列が出来ていた

 

「クリーンベース」は、その頃、高級研磨とタイヤ販売を主体とした店であった
スタッフは、現常務の谷清隆店長と若い男の子Nの2人
2人だけ
その年の12月は、すでに、かなりの台数の研磨とコーティングをこなし
タイヤも数百本販売して2人共、疲労の局地であった

 

大晦日の日の朝一番
Nから店に電話がかかってきた
「風邪を引いてしまって、熱が高いんです、仕事を休みます。」と
大晦日に休む!?
たった二人しかいないのに、その一人が大晦日に休む?!?!
店長はがっくりしながらも
「わかった・・・」
仕事は、山程たまっている
かといって、高津波に応援を頼むわけには行かない
向こうの大混乱もよく知っているから

 

店長は、黙って仕事をこなし始めた
肉体的にはすでに限界であったが、黙々とこなし始めた
当然精神的なダメージも大きかっただろうが
とにかくやるしかない

 

昼前に電話がかかってきた
5キロぐらい離れたところにある知り合いのガソリンスタンドからだ
そこの店長曰く
「N君が、今、自分の車のオイル交換をさせてくれ、と言って来て
それで勝手にリフトを使っているのですけど、大晦日はうちも忙しくて
リフトを使えないと困るんですよ!何とかしてもらえませんか。
お宅は、大晦日が暇なんですか?スタッフに休みを取らせるなんて」

 

世の中には信じられないような事があるものだ
店長はNに「とにかく店に来い」と呼んだ

 

店に来たNに、店長は一言しか言わなかった

 

「クビだ、出て行け」

 

夜、高津波の方の大混乱も落ち着いて、私はクリーンベースに電話をした
「どう?こっちはだいぶ落ち着いたよ。そっちは?」
店長
「まだ2台の磨きと、タイヤの交換が1台残っています。」
いやに声に元気がない。私は気になって、手伝いに行くことにした

 

行ってみてビックリ、店長一人で黙々と仕事をしている
それも残っている仕事は、電話で聞いたより多い
「Nはどうした?」
店長は
力なくニコッとして
「クビにしました。すいません」
「いつ?」
「お昼ごろ」
「いつから一人でやってたのか」
「朝からです」
私は言葉が出なかった
そして
高津波の方から応援を呼んで、とにかく残っている仕事を片付けることにした

 

「もういいから、お前はチョッと休んでろ」
店長は手を休めない
私がもう一度言う
「休んでろ、と言ってるだろうが」

 

店長は、顔を真っ赤にして、怒った口調で
「ここまでやったんだから、最後までやりますよ!」
目に涙が溜まっている

 

それからみんなで、黙々と残った仕事を片付けた
みんなでやれば、それほど時間もかからない
夜9時過ぎ、無事に両方の店の大晦日が終わった
クリーンベースはその月、粗利で500万円ぐらいを上げた
2人で、最後は一人で
これがクリーンベースのレコードとなった

 

そのあと、みんなとプレハブの事務所で打ち上げの酒を飲んだ
妙に店長がハシャイデいたのを憶えている

 

キーパーが出来る前
私たちが全国に出て行く前の、激しい日々の1日であった

 

今はたくさんのスタッフが、みんなで力を合わせて
大晦日を、疲れながらも、楽しんでいる
私達は幸せである

 

※昨日快洗隊を手伝う、今はすっかり体型が太くなってしまった元店長

 

 

※年末、いつもの賑わいも終わって
曇り空にひっそりと、元クリーンベース、現トレセン

 

 

※最近は静かな年末のスタンドも増えた。何かが変わったのかな?

 

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    代表取締役会長兼CEO

    谷 好通

    キーパーのルーツであり、父であり 男であり、少年でもある谷好通の大作、名作、迷作コラム。
    読めば読むほど元気になること間違いなし。・・・の、はず。

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