谷 好通コラム

2001年09月23日(日曜日)

230話 繁盛店の落し穴

今日
長野の蓼科まで足を伸ばし
自然の空気をいっぱい吸ってきた

 

気分転換のつもりだったのだが
つい、仕事の頭になってしまったことが一つ

 

蓼科湖の近くで昼飯を食べた
長野と言えば“そぱ”、蕎麦
特に、蓼科界隈は、“蕎麦”が、うまいところとして有名だ

 

車を運転していて、行列が出来ている蕎麦屋を見つけた
午後2時ぐらいのこと
「いい店、見つけた!」と思って
早速、はいって見た
行列の出来る店の定石で、順番を書くボードが用意してあり
客は、そこに自分の名前を書いて
お店の人から順番に呼ばれるのを、外で待つのだ

 

私の前に8組の名前が書いてあった
「さすが!」
それでも、ちょうど客が入れ替わるころだったのか
5分も待たずに、店内に案内された

 

それからすぐに注文をして
待つこと30分以上
「てんぷら・ざる蕎麦の2枚(1250円)」は、 (ダイエットは、どうした!)
なかなか運ばれて来なかった

 

周りを見ると
明らかに、“私よりあとから”入ってきた人たちが
もう食べ終わって、ツマヨウジをくわえている
これは何かおかしい、ひょっとして忘れられてしまったのか?
そう思って、近くを通りかかったお店のおネエさんに、聞いてみた

 


「すいません。後からの人が、もう食べ終わっちゃっているですけど」

 

おネエさん
「テンプラですよね。テンプラは揚げるのに時間かかりますから」

 


「いや、あの人もテンプラでしたよ」

 

おネエさん
「今すぐ、出ますから」

 

それからホントに、2分ほどで出てきた
蕎麦はうまかった
ホントにうまかった
テンプラはマアマアか

 

 

食べ終わったのは3時過ぎ
あれだけ並んでいた客も
ぎっしり混んでいた店内も、みんな食べ終わって
あと2・3組残っていただけであった

 

食い物の恨みは恐ろしいと言うが
私はここで、腹ペコを我慢させられたことへの、鬱憤晴らしを
しようというのではない
ここに、商売の大きなヒントがあると思ったのだ

 

ここで行われたことは、明らかに「間違い」である
自分たちが、注文の順番を間違えたことは明白であった
自分たちにミスがあった

 

でも“あやまらなかった”
何が、彼女たちを、そうさせたのだろうか
「繁盛していること」
その事が、ひょっとしたら、その店をダメにし始めている
蝕み始めている

 

そのお店も、最初から繁盛していた訳では、なかっただろう
何とか繁盛店になりたいと思って
・うまい蕎麦を打とう
・うまいツユを作ろう
・感じのいい客扱いをしよう
・喜んでもらえるメニューを作ろう
・目立つ店作りをしよう
・ファンをたくさん作ろう
・ファンを大事にしよう
・初めて来てくれた人を大切にしよう

 

いっぱい努力したはずだ
そして、その努力の甲斐あって、繁盛店が作り上げられたはずだ
「ありがたい!」とつくづく思ったはずだ
ところが
店が繁盛すると
毎日毎日が忙しい
猛烈に忙しい、みんなクタクタだ
忙しい時に、客が入ってきても「また来た」と思うようになってしまう
感謝の気持ちではなくなってきて、「勘弁してよ」になってくる

 

たった一人の客の順番を間違えたぐらいで
そんなにオーバーなこと言わなくても
と言われるかもしれないが
私は、こんなことが実は一番大事なのだと思っている

 

こういうパターンは、大変多い
私も随分たくさんの例を知っている
このパターンに入り込んでしまうと、なかなか脱出することが出来ない

 

その上で
最悪のパターンになってしまうと
「味」まで、落とすようになってしまう
(この店はうまかった)

 

店のキャパシティは決まっているので
客をさばく量には限界がある
当然、売り上げにも限界がある
しかし、その中で利益をもっと増やしたいと考えて
材料をケチるようになると、その店はもう終わりである
(この蕎麦屋はうまかったが、初めて入った私には、その前がどうであったのかは分からない)

 

たとえばある例で

 

海辺の、とある店
魚とか海老、貝、蟹などを、大変おいしく
しかも、安く食べさせてくれる店があった
大繁盛で有名だった
当然行列である

 

私も何度か行ったことがある
私は特に、そこの特大のエビフライが一番好きであった

 

ところが、ある時気がついた
そのエビフライのえびが随分小さくなったのだ
そのことを友達に言ったら
みんなそう思っていたそうだ
それぐらい、その店のエビフライは大きいことで有名だったのだ
それが小さくなったと、みんなが知っている

 

蟹が、冷凍物を使うようになって味が落ちたとか
次から次へと不満が出てくる

 

だから私は、今は別の店に行くようになった
場所は少し不便だが、明らかにそちらの店の方が「ウマイ」
もちろんエビフライもでかい

 

そんなしょうもないことで、あの大繁盛店は少し
少しだけ陰りがあるように見える
行列がなくなった

 

繁盛店は、みな同じような「落とし穴」を持っている
自分の店でも
ホントに気をつけねばと思ったのでした

 

それはさておき本日の絶品の風景
自然は人を癒してくれる

 

※蓼科のロープウェーから見た穂高連峰
右のほうに槍ヶ岳の尖がった山頂が見える

 

 

※蓼科の天然記念物“縞枯れ”現象

 

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    代表取締役会長兼CEO

    谷 好通

    キーパーのルーツであり、父であり 男であり、少年でもある谷好通の大作、名作、迷作コラム。
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