谷 好通コラム

2001年09月04日(火曜日)

214話 give and take

ギブ・アンド・テイク give and take
ギブとは、give 与えるということ。
テイクとは、take 受けるということ

 

give and take とは「与える」という事と「受ける」という事が
いろいろな関係の上で、この両方が対等に揃った時
双方に不公平な損得がなく、公平であるということ
ビジネスとは、まったくこの関係の成立に立っている

 

商品(サービスも含む)があって
その商品の持っている付加価値が、一方の人にとって有益であり
その付加価値に見合う対価(金銭)を支払って、その商品を手に入れる
この行為を「買う」と言う

 

商品を作り、あるいは仕入れて
その商品の持っている付加価値を必要としている人を探して
その必要としている人が付加価値に見合うと思った対価(金銭)と
引き換えに商品を渡す
この行為を「売る」と言う

 

金を払わずに(与えずに)、物を手に入れる(受ける)ことを「盗る」と言う、泥棒
逆に、まったく価値が無い商品を渡し (価値を与えずに)
あるように見せて不当な金を得る(受ける)のを、「ぼったくる」と言う
あるいは、詐欺
give and take ではなく、一方的に
与えずに、受ける行為
その限度を超したものを犯罪という

 

「taker(テイカー)」と言う言葉がある、「take」を一方的に求める人
「受けること」は“トク”であり、「与えること」は“ソン”と考える

 

「givers(ギバー)」と言う言葉がある、「give」を一方的に進める人
「与えること」なしには、「受けること」はあり得ないと考える

 

ビジネス・商売で考えると、簡単である

 

消費者は、立場的にtakerである
使うことができる金銭の枠の中で、より大きな付加価値を求める
賢い消費者とは、良いものを安く買うこと

 

○同じ価格ならば、より大きな満足・必要性・付加価値を得ようとするし
(与えるものが一定ならば、より多く、より大きなものを受けようとする)
○同じ必要性・満足・付加価値ならば、できるだけ安く買おうとする
(受けるものが同じならば、与えるものをより少なく、小さくしようとする)

 

売る側・作る側はその逆であるgivers(ギバー)で無いと
現代においては生き残れない

 

☆同じ価格(コスト)ならば
ほかの商品より魅力的であり、大きな満足を作り上げれば、“売れる”
[商品開発力]
より気持ちよく、買ってもらうことによって、“売れる”
[CS戦略と、接客力]
(受けるものが同じならば、与える価値が大きなものを作り、売ろうとする)

 

☆同じ価値の商品ならば、より安く売れるようにする事によって、“売れる”
[コストダウン]
(与えるものが同じならば、できるだけ安く売らなければ売れない)

 

売買において消費者はtaker であり、売る側はgivers
この両者の折り合いがついた時、商品が売れる

 

以前はこの関係にかなり余裕があった
ところが所得が減少しつつある今
この関係が、非常にシビアになってきたようだ

 

takerである消費者は
買うための代償、使えるお金が減ってきた、又は増えないので
買うことに神経質になっている
無駄なものを買わない
できるだけ安く買うことに一生懸命である

 

でも
消費者のほとんどすべての人が持っている中流意識は
自らが“貧しい”ことには断固拒否する
“豊か”であることは、絶対に譲りたくない
takerの本領発揮である

 

giverである「売る側」に対し、非常にシビアになってきた
たくさんは買えないから
同じ金額でも“豊か”を表現するような、もっといいものを要求する
一番良いと思ったものしか買わない
「製品開発力」「接客力」を、「売る側」に求める
いいもの、新しいものしか売れない

 

その一方
物が同じなら、同じお金でたくさん買えることを要求する
つまり、安いことを要求する
「コストダウン」が実現できないと、売れない

 

企業は大変である
とにかくコストダウンを実現して、値下げを実現しつつ
製品開発に金を使って、良いもの、新しいものを作らないと、売れない
生き残れない
いずれにしても企業内でのコストダウンが必須となる

 

コストといえば、人件費
コストの中では、ずば抜けて人件費が大きい
コスト競争とは
人件費を以下に低減するかにかかっていると言っても
過言ではない

 

人件費の安い海外での生産も、一つの方法として、非常に有効である

 

国内では当然
残業カット
退職奨励
新規採用の取りやめ
まともに減給
首切り

 

しかし、考えてみると
giverである企業が必死で行うこの努力は
このコストダウンは
みんな、社員に向けて行われるもの
社員は、消費者takerでもある
giverは、社員であり同時に消費者であるtakerに対し
与えることgiveを減らさなければ、より力のあるgiverになれないという
自己矛盾を抱えることになる

 

消費を促すために、商品の値下げをすればするだけ
コストダウンに励むことになり
結果として社員・消費者の所得を減らさなければならない
消費者も所得が減るので、もっと安いものをと企業にコストダウンを求める
堂々巡り
出口はあるのか

 

ちょうどいいgive and takeは、なかなか難しいものだなぁ、と思う

 

昨日またJUSCOに行ってきた
そこの「メガマート」で見た、恐ろしく安い値札
takerにとっては、うれしいことだろうが
どちらかと言えば企業giver側である私には恐ろしい光景に見えた。

 

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    代表取締役会長兼CEO

    谷 好通

    キーパーのルーツであり、父であり 男であり、少年でもある谷好通の大作、名作、迷作コラム。
    読めば読むほど元気になること間違いなし。・・・の、はず。

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