2021年12月24日(金曜日)
12.24.クリスマスイブと生もみじ饅頭
昔、ある所に、
歳をとったお父さんがいて、
日本全国を忙しく仕事で飛び回っていました。
そのお父さんには、複雑な縁があって、小学生の育ての娘がいたのです。
まだ幼い娘は、サンタクロースを信じていたので、
今日のクリスマスイブは、
サンタさんがプレゼントを持ってきてくれるのが楽しみで仕方ありません。
その日のそのお父さんは中国地方に出張で、
その日最後の地、広島で遅くまで仕事があって、
名古屋に帰る新幹線が、最終便にギリギリ間に合ったのですが、
娘にクリスマスプレゼントを買うのをすっかり忘れていて、
あわてて買おうと思ったのですが、開いているのは新幹線ホームのkioskだけ、
仕方ないので、kioskを覗いてみたのですが、
プレゼントになるような物は何もありません。
でもKioskに並んでいるおみやげ物には、
広島だけあって「生もみじ饅頭」が並んでいました。
お父さんは、自分がお腹が空いていたのも手伝って、
その「生もみじ饅頭」がものすごく美味しそうに見えたのと、
そういえば、以前、お土産に「生もみじ饅頭」を買って帰ったら、
娘は「おいしいっ」と喜んでいたことがあった。
というより、もう他にプレゼントになるようなものは何もない。
だから、お父さんは、
結局、今年のクリスマスプレゼントは「生もみじ饅頭」にしたのです。
日付が変わる頃に家に帰りついたお父さんは、
そっと、寝ている娘の枕元に「生もみじ饅頭」を置いて、
「これしか、どうしようもなかったんだ」と、言い訳を呟いて寝た。
翌朝、お父さんがまだ目が覚めていない時間、
娘の声で目が覚めた。
「違う。サンタさんは絶対”もみじ饅頭”なんて持ってこない。うそだ~」
その声に、お父さんは、
安易にホームのkioskでもみじ饅頭を買って、
「これでいいか。」と思ってしまった自分を、心から恥じたのでした。