2023年10月21日(土曜日)
10.21.「素人には分かんないだろうな。」のバカバカしさ。
昔々、ガソリンスタンドからコーティングの世界に足を踏み入れた頃、
コーティングは世の中に出たばかりの頃で、
コーティングと言っても、実際はポリッシャーによる塗装の研磨であって、
コーティングそのものは研磨に付随する作業であり、ほとんど何でも良かった。
そして、その技術屋は自らを「磨きの職人」として、
「コーティングは下地作りの出来次第=磨きの腕次第であり、すべてだ。」と、
自らの磨きの腕を競い、自慢した。
経年車の薄い傷がいっぱい着いた塗装でも、
上手い磨きの職人技の鏡面仕上げにかかったら新車同様、
いや、新車以上の艶がよみがえり、
お客様は喜んで磨きの職人の腕を褒め、
私もそうだったように
職人はますます自分の腕に自信を持ち、磨きに生きがいすら持った。
その磨きの作業は、非常に大きな労力を要する作業だったのです。
しかし稀には、職人技の「鏡面仕上げ」の素晴らしさに気が着かずに
大喜びをしないお客様もいました。
そんな時、大変な目をして磨き上げた職人さんは報われず、
「まぁ、素人には分かんないだろうな~」と、嘆いたものです。
私もこんなことがありました。
約30年前、磨きの技を習ったのち、新しい店舗を開いた時、
高価な鏡面仕上げ付きのコーティング「ハードシールド」を、
チラシを打ったり、雑誌に広告を出して一生懸命売っていたのですが、
何しろ値段が高いので、なかなか売れませんでした。
そんな時、近所の町工場の社長の娘さんが、
中古の「ソアラ!」を親御さんから買ってもらって、
お金持ちなので、「ハードシールド」を注文してくれたのです。
ご近所のお金持ちの娘さんの高級車ソアラを磨けるのですから、
私は張り切って、一晩中かけ、こだわりにこだわって極上の鏡面磨きを施し、
翌朝、車を取りに来た娘さんに「どうですか、キレイになったでしょ。」と、
自信満々でビカビカに生まれ変わったソアラをお渡ししました。
そして、
「どうぞ、鏡の様にまっ平になった塗装の肌を見てやってください。」と、
ボンネットの途層をよく見ていただくように手まねきして案内した。
しかし、その娘さんは、
「ほ~んと、すっごくキレイになって嬉しいわ。」と言って、
車全体を見渡すように、車から後ずさりして離れて見るのです。
私は、その様子を見て、
「そんなに離れたら、塗装がツルンツルンになったのが解りませんよ」
と、近づいて見ることを促したのですが、
娘さんは、
「嬉しそうに、車全体を見渡してキレイになった」と喜んでいます。
と、磨き上げた塗装の肌を近くから見ようとしません。
私はふと言いました。「まっ、素人には分からないだろうな。」
そうつぶやいて、
ふと、気が着いたのです。
俺は何を言っているんだ。
お客様は誰だって素人であるに決まっているのに、
素人には分からないだろうと、バカにしたようなことを言っている。
俺は趣味で仕事をしている訳じゃないのに、
自分の技術にうぬぼれて、お客様をバカにしたようなことを言っている。
バカなのは、俺の方だ。
そんなことがあって、アホな自惚れの勘違いから脱することが出来て、
新車ではない使用中の荒れた肌の車でも、
研磨をせずに、簡単にどこまでキレイに出来るかを考え、工夫して、
今の「KeePer」の技術を、複数の特許を取りながら作り上げて行ったのです。
研磨無しでお客様が驚くようなキレイさを作り出すKeePer 独自の技術は、
つまり、世の中の素人の人達に広く受け入れられているKeePerは、
最初、自分が吐いた「素人には分かんないだろうな」の言葉の
そのバカバカしさに、
ハタと気が着いたところから始まったものです。
新しいKeePerビジュアルを
今、作ろうとしています。
その数ある写真の中の一枚。
写真のプロから見ると、どうか分かりませんが、
プロの為の写真ではありませんから、そんなことは気になりません。