谷 好通コラム

2017年11月27日(月曜日)

11.27.私は昔、凹んだ大きなグロリアに乗っていたことがある。

結婚した当時、だから今から40年以上も前の事です。
それまで勤めていた派手な会社を辞めて、
小さなガソリンスタンドの店長に再就職して、地味な生活になった頃、
街の中古車屋で、とても古くて安い、でも大きな黒いグロリアを買って、
ふんぞり返って乗り回し
派手な生活から地味な生活になった欲求不満を、
誤魔化していたことがあります。

 

40年以上も前の事です。
恥ずかしながら大昔の事です。

 

大きな車に乗ってふんぞり返って運転していると、
自分が偉くなったような気がして、気分が良かったことを憶えています。
ある時、
田舎道に横着な停め方をして、
先輩の家で酒を飲んでいたら、
その横着な停め方をしたグロリアが、
右後ろの角を当てられべっこりと凹んでしまっていました。
当て逃げです。

 

それでもグロリアは平気で動いたので、
次の日の朝、右後ろが大きく凹んだグロリアに乗って帰りました。
その姿は異常だったでしょう。
しかし、中に乗ってしまえば、
その異常なグロリアの姿が自分には見える訳でなし、
またふんぞり返ってリッチな気分で運転していて、
そのうち、右後ろの大きな凹みを忘れて、気にならなくなっていました。
どうせ、安い値段で買ったポンコツです。
乗って前を見ていれば、凹む前と同じようにリッチな気分。

 

そんな状態で、半年以上乗っていたでしょうか。

 

そのうち車検が切れたら、
大きく凹んだままでは車検にも通らず、
凹みを直さざるを得なかったのですが、その板金代は、
その車の価値そのものよりもはるかに高いと予想され、
そんなお金は無かったのでグロリアを廃車して、
務めていたスタンドのお客さんが、
もう廃車すると言った古い10数万km以上走ったカローラをただでもらって、
しばらくの間、乗ってしました。

 

大きい車は、乗る人をリッチに勘違いさせて、
外から見れば明らかに異常に見えても、
大きな車に乗った自分は、リッチで、贅沢であり、立派な気分で、
あの頃の私にとって、
あのポンコツの黒い大きなグロリアは、
自分を勘違いさせてくれる乗り物のようでした。

 

でもポンコツのカローラは、
自分に嘘の気分を与えてくれはしなかったので、
すごく安堵の気持ちで、
家族を乗せ運転していられたことを憶えています。

 

身の丈に合ったのでしょう。

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    代表取締役会長兼CEO

    谷 好通

    キーパーのルーツであり、父であり 男であり、少年でもある谷好通の大作、名作、迷作コラム。
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