2001年09月08日(土曜日)
217話 何でもあり
昨日、取引銀行の担当の人が訪問してくれた
会社がメインバンクとしているある都市銀行
その若い担当者といろいろな話をしたのだが
用件の話が終わってから
「ちょっとご覧頂きたい物があるのですが」
と、切り出してきた
出してきたもの
ドル建て定期預金の「企画物」
1口十万ドル(120円/1ドル換算で一千二百万円なり)
(私は、この時点で、雲の上の話だと思ってしまったのだが(^_^;))
それでもと、気を取り直して聞くことにした
一つ目の企画が、「特約付外貨定期預金(スポットバリア型)」
もう一つが、「通貨オプションを利用した運用利回り向上スキームの提案」
というもの
日本国内の預金利率が極端に低いので
外貨建ての預金は利率が比較的高く、その部分ではかなり大きなメリットがある
しかし、その外貨に対する円のレートの上下で
結果は大きく変わる
たとえば
120円/1ドルの時に100,000ドルの定期預金を組むには
12,000,000円必要だ
そして、たとえば金利が5%の場合
(金利には20%税金が源泉でかかるので、実質受け取り利息は“4%”となる)
1年経ったその日に、円/ドルレートが変わらない場合
元利合計で
104,000ドルになって、日本円では12,480,000円となる
480,000円の利息が手に入るわけだ
かなりいい利息である
ところが
1年後に円安で、130円/1ドルになっていたら
104,000ドルは、13,520,000円となって
1,520,000円の儲けになる
これを金利換算で考えれば12.66%となり
ぼろ儲けである
ところが逆に
円高となっていて、110円/1ドルだったとすると
104,000ドルは、11,440,000円となって
560,000円の損になる
外貨建ての預金は、金利がある程度高いので
うまみもあるが、レートがどちらに振れるかによって
大きく損が出る場合があるというものだ
ハイリスク、ハイリターンの形だ
そして今回持ってきてくれた「企画物」は
そのリスクを少なくして、その代わりリターンの可能性も減らし
ハイリスク、ハイリターンの傾向を緩和するというもの
いずれにしても、レートの変動により何十万円かの損得が発生する
ギャンブル性がそれなりにある
私は、学生時代にパチンコで惨めな思いをしたことがあるので(128話)
ギャンブルにはひどくアレルギーを持っている
だから、ちょっと実行する意欲がわかないが
面白い企画であった
もうひとつ、J-mottoというインターネット関連の企画
会社の中でのIT化を進めていくための
いろいろな支援を受けるシステム
これは、この会社にとって明確なメリットがあったので入会することにした
ほんの数年前まで
銀行といえば
預金者から、お金を預かって
それを企業に貸し出し
預金金利と貸出し金利の利ざやが主な利益源であった
当然種々の手数料とか、株などへの運用益も重要な収益源であったが
基本的には利ざやが商売の元であった
堅い商売の代表であり
商売をしているというイメージはなかった
「夏のボーナスは、ぜひ定期にしていただけませんか」
「積金定期をもう一口増やしてください」
とか
預金の確保
と、優良な貸出先の開拓が、仕事の主だったものだった
ところが
2.3年前に銀行が「投資信託」を商品化することが解禁されたり
いろいろな規制解除がされ
ビジネスそのものが多様化してきて
銀行マンが「パンフレット」を持って
さまざまな「金融商品」の「販売」を「売る」ようになってきたのである
ちょっと「銀行マン」のイメージが変わってきた
「お得意様係り」が「営業マン」に
銀行がやれることが、増えてきたので
銀行マンもやることが増えてきた
そして、能力として、やれることを増やさなくてはならなくなってきた
今までのままの能力だけでは、通用しなくなってきている
「何でもやれなくては、ならなくなってきている」
SSにも同じことが言えるのではないだろうか
今までは、そこそこ燃料が売れて
それに付随する商品を
「ガソリンスタンド」という燃料商のレベルで販売していれば
食っていけた
いろいろな規制があって、ある範囲の中で商売していれば
それでよかった
それが、規制緩和が進んで、やれることが多くなってくると
逆に、多くのことがやれないと
商売が通用しなくなってきている
たくさんのことがやれるところは、ある限られた商売の範囲の中での
利益が少なくても
増えた商売のバリエーションでの利益があるので
やっていける
だから
限られた部分での商売の利益を、減らしてでも勝負してくる
ガソリンスタンドで言えば
ガソリンの値段が、昔に比べるとずいぶん安くなってしまった
燃料での利益は、激減している
今では、燃料で食っていくなら圧倒的な数量が必要だし
徹底的なコストダウも必要だ
あるいは、車検も、保険も、洗車も、オイルも
なんでも本気で「やれる」ことが求められる
買っていただけるだけの「価値」を、生み出す能力が、必要となってきている
時代が変わって、可能性の幅が広くなったのに
限られた能力しか持とうとしないところは
結果的に「負ける」
規制緩和は、それぞれの可能性が大きくなることでもあるが
逆に、その「可能性を生かす能力」の開発に怠慢であるところが
「負ける」と言うことでもある
競争原理が、ストレートな形で実現する風土になってきた
優劣の差がつきやすい時代になってきた
「何でもあり」
自分自身によ~く言い聞かせる
頑張らねば!
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